矢沢あい展に行ったら、私の人生のバイブルがあの作品だとわかった
『天使なんかじゃない』『ご近所物語』
『Paradise Kiss』『NANA』
数々の名作漫画を生み出している矢沢あい先生の展覧会《ALL TIME BEST 矢沢あい展》が、昨年より全国各地で開催されています。
福岡会場では、いちファンである私も、矢沢あいワールドにどっぷりと心酔しました。そして、自分の人生が、彼女の作品たちに、強く強く支えられ続けていたことを痛感しました。
出逢いは学生時代
矢沢あい先生の作品に私が出逢ったのは、中学生のころ。
すでに集英社の少女まんが誌『Cookie』に『NANA』の連載がはじまり、単行本が出ていたころ。どの作品を最初に読んだのかは少し曖昧だけど、おそらく『NANA』だろうか。
主人公・奈々(ハチ)の彼氏・章司(しょうじ)を好きになった幸子(さちこ)が、終電間際なのに、ヒールを履いて上手く走れない状況で発する超あざと名ゼリフ「わざとだよ?」という物語序盤の衝撃展開について、友達とワーワーギャーギャー言っていた記憶があります。
漫画は小学生のころから好きだったけど、私は『ちゃお』派。
でも、小〜中学生のころに、藤井みほな先生の『GALS!』が流行り、『りぼん』派の友達も周りには多く、次第に『りぼん』連載の漫画も読むように、『ミントな僕ら』とか(同世代はとても懐かしいはず)。当時、『ご近所物語』はアニメもあっていたので、タイトル自体は知っていたものの、私が『りぼん』系漫画家さんである矢沢あい先生の作品を読み始めるのは、もう少しあとの話。
それから、私も高校生になり、友達同士で漫画を貸し借りするように。(いま考えると、ただでさえ荷物が多かっただろうに、重たい漫画をわざわざ学校まで持ってきてくれてありがたい限り。)クラスに、矢沢あい先生の作品を揃えている友達がいて、『ご近所物語』『Paradise Kiss』『NANA』を借りては読み、そして、私は、ご多分に洩れず矢沢あい先生の沼にしっかりとハマっていくのです。
『ご近所物語』には、
夢と恋と人生に全力で向き合おうとする登場人物全員に心底惹かれ、
『Paradise Kiss』(以下パラキス)には、
高校生ながら、家庭や恋愛において
"依存"や"自立"ってなんだろうと深く考えさせられ、
『NANA』には、
常に展開され続ける人間模様に、"大人"の人間関係の複雑さと苦しさを思い知らされました。
どの作品も大好きだけれど、いま全巻揃って家にあるのは『ご近所物語』のみで、『NANA』と『パラキス』については、コロナ禍中にダウンロードした漫画アプリで全て読み直した。ずっとずっと前の作品『天使なんかじゃない』もその流れで初めて読んで、これもまた好きな作品に仲間入り。
高校生のころと、いま読むとでは感じ方が全く違う作品もあって(特に『NANA』)、自分も大人になったことを自覚することも。
分かる人だけが分かる『NANA』の話を少し…
高校生のころは、やっぱりハチとノブのコンビが可愛っくて好きで、優しいノブにどうにか頑張ってほしくて、タクミがただのいやな奴だと思っていたけど、いま読むと、ノブの優しさは頼りなく感じ、いやな奴だと思っていたタクミは、強引ながらも、彼なりの優しさでハチをしっかり守っていたことに気がつきました。ごめんね、ノブとタクミ。歳を重ねると視野も広がるようだ……
いざ、《ALL TIME BEST 矢沢あい展》福岡会場へ
会場には、『天使なんかじゃない』『ご近所物語』
『パラキス』『NANA』、それから私は読めていませんが『下弦の月』のブースがあり、それぞれの直筆原画やイラストが大量に展示されていました。※撮影許可のコーナーのみ撮影しています。
大好きなシーンの原画たちを見つけるたび、どきどき心が動くことが分かって、その絵に、言葉に、今まで何度も何度もときめいては、勇気づけられていたことに気づき、胸がいっぱいになりました。
矢沢あい先生の絵の特徴として、表情、洋服、ヘアスタイルやアクセサリーなども細部まで表現されているので、大きな原画で見られることも展覧会ならでは。見応えがありました。
私が、矢沢あい作品を好きな理由
まず大前提として、先生の描く絵がとてもタイプであることと(純粋に可愛くてかっこいい!!!)、漫画とは思えないほど、抜群にお洒落なところ。『ご近所物語』以降の漫画は特に、再現度の高い描写が特徴的です。
また、主人公はもちろんのこと、様々な登場人物の内情や心の動きが丁寧に描かれているところや、ときには、誰もが言われたくないような、グサグサと核心をつく厳しい台詞を言うところも、とても好きです(一緒に、苦しい気持ちにはなりますが)。
そして、登場人物のみんなが、どんな形であれ、自分の人生を精一杯生きようとしているところに、とても惹かれるのです。大好きです。
『ご近所物語』から受け取っていた指針
私が、人生において大きな選択に迫られたときに、
いつも心に留めている言葉があります。
『大切なものを大切に』
選択に悩むことは未だにありますが、そのときの自分が、心から大切にしたいと思うものを大切にする選択ができれば、きっと後悔はないと思っています。
今回、矢沢あい先生のことを書くにあたり、自宅にある『ご近所物語』を久しぶりに読み返しました。
最終巻の1つ前となる第6巻では、ファッションデザイナーを目指す主人公の実果子が、ヤザガク(主人公たちが通う服飾系の高校)の学園祭のファッションショーにおいて目標としていたグランプリを獲り、夢だったロンドン留学の資格を得ます。しかし、幼なじみであり恋人であるツトムと離れることも選びきれず、近しい人たちに相談しては厳しいことを言われ、ひたすらに悩み続けます。
実果子にとって、人生史上最大の選択です。
そんなとき、ヤザガクの先輩であり、メイクアップアーティストとして同じくロンドン留学をすることが決まっている、”キラキラ星人”こと如月星次(きさらぎせいじ)くんが、悩んでいる実果子に真っ直ぐに言うのです。
この、星次くんと実果子のシーンが私はとても好きで、特に20代前半、選択に迷うときは、この6〜7巻(最終巻)を何度も読んでは決断する勇気をもらっていました。そして、何度も救われてきました。
いつの間にか自分の人生の指針にさせてもらっていたとは。それを今回読み返して気づき、思わず笑っちゃいました。
悩み生きることを肯定される物語
実果子だけではなく、『NANA』も『パラキス』も、あらゆる登場人物が、人生の数々の選択を大いに悩むのですが、繊細な表情の描写や、綴られる言葉や台詞の豊かさに、まるで自分の周りの出来事のように感じ、胸の奥がギュッと締め付けられながら、いつの間にか、みんなに感情移入してしまうのです。
矢沢あい先生が描く物語は、
”人生は悩んでもいいのだ”と思わせてくれる作品たちです。
悩みながらも自分自身を信じて生きていくことの大切さも、難しさも、尊さも、個性派だらけの登場人物たちが身をもって教えてくれます。
辛いことも、悲しいことも、もちろん、幸せで、うれしいこともあってこそ、いい人生なのだと。
こう書きながら、ただ気づけばですが、
そんな感覚が、今では私自身にも染み付いているように思います(やったー!)
矢沢あい先生へ
『ご近所物語』は、これからも永遠に私のバイブルです。
そして、ほかの作品においても、この人生でまだまだたくさんの勇気をもらうことと思います。
長らく休止をされている『NANA』の連載復活は、一読者としては望んでいることではありますが、登場人物たちのように、矢沢あい先生の人生が素晴らしいものであることを、何よりも願っています。
そして、これからも愛読させていただきます。
『ALL TIME BEST 矢沢あい展』開催情報
全国を巡回していたこの展覧会も
現在開催中の名古屋会場が最終会場のようです。
日数も残り少ないですが、矢沢あい先生の作品がお好きな方は、絶対に行かれることをおすすめします!
《名古屋会場》
2023年7月26日(水)〜8月14日(月)
ジェイアール名古屋タカシマヤ 10F特設会場
公式HP:https://yazawaai-ten.com/
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