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日本・デザイナーズ家具探訪:ジョージ・ナカシマ


デザイナーズ家具についてのあれこれをまとめていく連載。何気なく目にしている家具、座ったり触れたりしている家具だって、きちんとデザインされたもの。ちょっと知ると、ちょっと嬉しくなる。『あ!これ知ってる!』を一緒に探してみませんか? ※全ての情報がまとまるまでに時間がかかるので、wikipediaに倣い、少しずつ更新をかけて行こうかと思います。情報あれば教えて頂けたら嬉しいです。

まだ『バー』という大人の空間に足を踏み入れたことがなかった若かりし頃、先輩に連れて行ってもらった銀座にあるバーには、ジョージ・ナカシマの椅子がずらりと円形のカウンターを囲むように配置されていた。あの『木』の厳かで、温かくて、なんとも言えない空気。目の前に広がる光景を見て、大人にはこんな贅沢があるのか、と思った記憶が蘇る。

数年前に小豆島に旅行に行った時には、香川県に『ジョージ・ナカシマ記念館』があることを知り立ち寄った。これまで制作されてきた約60点の家具やドローイングを見ながら、『木』にひたすら向き合い、自然をこよなく愛したデザイナーだったんだということを知る。

そしてこれから、『木』の美しさに魅了されるジョージ・ナカシマの名作家具を探訪します。


コノイドチェア

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二本の後ろ脚だけで自立する椅子。建築技法の片持ち梁構造を採用したデザイン。キャンティレバーなどとも称し、ミース・ファン・デル・ローエのダイニングチェアなどにも同じ構造のものがある。発表当初は安定性など不安視されていたが問題なく、今ではジョージ・ナカシマの代表作となっている。


ラウンジチェア

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座面がウォールナット無垢材のラウンジチェア。おそらく、銀座にあるlittle smithというバーに並んでいたのはこのラウンジチェア。座面が木なのに痛くなく、ゆったりと長時間快適に過ごすことができる。因みに、アームがついた『ラウンジアーム』は、左右どちらにも無垢材のアームをつけることができるそう。


コノイドデスク

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これは、晩年どこか別荘などを持つことができたら書斎に置いてみたいデスクです。一枚の無垢板を天板として、クロスレッグの華奢な脚でバランスを取る。これも建築技法である『トラス構造』を応用したもので、三角形を基本単位として構成される骨組みである。


ミングレンⅡローテーブル

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同じ丸太からとった板で、本の見開きの様に合わせたローテーブル。ブックマッチという手法で、ジョージナカシマが好んで多用している。左右対称の木目が美しく、それぞれをつなぎ合わせる為に、日本の伝統建築(木造建築)技術である『契り:ちぎり』を用いている。

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この『契り』というネーミング。とっても粋。一度離れたものをくっつける、という役割の蝶々型のくさびのこと。板の割れを防いだり、板同士をつなぎ合わせる際に使う。実際の使い方は、割れている板に契りの形を彫り込み、そこに接着剤をつけた契りをはめ込むそう。契りは固い板が好ましく、強度補完の役割もある。

『契り』を家具に初めて施したのがジョージ・ナカシマ。今ではたびたび見かけるデザインだが、木に向き合い、木の美しさに魅了されたジョージ・ナカシマだからこそ、このデザイン、技法を見出すことができたのだろう。


こう見てみると、建築技法を多く用いているが、その目的は、構造的な機能を持たせることだけではなく、『木を美しく見せる』というデザインとしての役割も大きい。今もなお色褪せることなく私たちを惹きつけるのは、とことん木と向き合い、木の美しさを知っているからこそ見いだせた、木のありのままを活かした普遍的な美しさだからかもしれない。『木に第二の人生を与える』という哲学を持って木に向き合っていたジョージ・ナカシマ。木を心から愛し、敬う気持ちが溢れた家具の数々に、時空を超えた探訪をすることができました。

参照元:桜製作所


ではまた。





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