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#5 平泉で猫バス

コロナ前2019年の7月、私は岩手の平泉に一人旅に出た。
宿は平泉から離れた川沿いの民宿で非常に家族的な感じでとても心地よい。
朝、その小さな川沿いを散歩する。
ふと対岸の木々を見やると、
シラサギがたくさん木々に止まっていることに気づく。

シラサギの巣だろうか?

高校の同級生のLINEグループに、写真と共に送る。

サギグループのアジト発見しました!

早く逮捕して!

ノリの良い仲間は時に必要である。

平泉の観光地を巡るのに、公共バスがたよりで、
バスの停留所にやわら向かう。
バスは、平泉行は朝10時ごろで、えらい時間もあるし、

待っているのは私だけ。
そう私だけ。
さえぎるものは何もない。

バス停の前は渓谷で川下りのような観光いかだがある。

餌ちょうだーい!

軒先には燕の巣があって、幼い燕が親から餌をねだっており
一眼レフ片手に写真のネタには事欠かない。

そうこう時間をつぶしていると平泉行のバスがきて乗り込む。

乗客は私一人
そう私一人

乗り込むとわりと年輩の女性の運転手さんが、

毛通寺行きます?

ハイ

毛通寺以外にも観光地まわります?

ハイ

巡回チケットもってます?

イイエ

買った方がいいですよ。

買った方がいいって
ちなみにバスは出発している。バス内で販売してくれると思いきや

バスは止まる。
私一人のために

今来たバス停の前の建物の中にバス巡回チケット売っているからそこで買ってきて!ここで待っているから。

え?

私はバスから降りてバス停へダッシュで逆戻り。
何せ公共のバスが私の個人的事情に配慮して待つと言っているのだ。

息切らして薄暗い店の窓口にたどりついた。
巡回チケットが欲しいと伝えると
窓口の初老の担当は、後ろに振り返って、それは何か?と聞いている。

その間バスは私のために待っている。

そして、机から取り出し、チケットを渡そうとして、チケットを床に落として散らばっている。

ドリフな感じに笑うしかない。その間もバスは私を待っているがもはやどうでもよくなってきた。

バスに戻ると何事もなかったようにワンマンバスは走り出す。
客は私だけ。そう私だけ。
特にチャーターしているわけではない。

田舎の田園風景の中をゆるやかにカーブしながらのぼりくだり。
きっと私は猫バスに乗っている。

小雨の曇り空

旅2日目
思いがけない暖かい出会いが転がり込んできた。

毛通寺で出会えた蓮

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