#11 期待は犬ぞりに乗って
オプショナルツアーで最後のチャンスを逃すまいとオーロラを探しに山中深くに連れられて行った。
車でどれくらいかかっただろうか。
着いたロッジは丸太で組み上げられた立派な建物だった。
ツアー主催の夫婦は、街に住んでいたが、何もないところに開墾から始めたらしい。
そして、歯医者をしていたとかいう旦那さんは、土日にロッジの建て方を学んで、山の中にロッジを建てたと言っている。
なんというかその行動力に圧倒される。
ロッジに住みたければ建てればいい。
そして、さあオーロラを見に行こうと犬ぞりが待っている。
林の中の雪道をスターウォーズのジェダイの復讐の1シーンさながらにすり抜けていく。
元気な犬たちにされるがまま、自分たちはただ乗っているだけである。
風を切って疾走感を味わいながら日もどっぷりくれたところ。
これからはそりを降りて歩くという。
1kmは歩いただろうか、
林を抜けたそこには開けた凍った湖が広がっている。
そしてとうとう空にはシルクのカーテンがゆらめいている!
オーロラだ。
フェアバンクス到着時に聞いたカラフルな色の蛇が空を縦横無尽に駆け巡ることを想像していた自分は多少物足りなくもあったが、それでもすっかり脳裏に焼き付いた。まだ25年たった今でもそのオーロラは脳みその底から取り出すことができる。
そして、どうやら湖の端に氷に穴をあけて魚を捕るための仕掛がなされていたらしい。
仕掛けを引き上げると大きなナマズ?がかかっていた。
今晩の夕食というわけだ。
もと来た道を戻る。
そしてロッジの前に到着する。
ロッジに入ると思っていた。
ゴールは目前だった。
私にとって思いがけない地獄が始まった。
好事魔多し
最後まで気を抜いてはいけない。
おもむろに主人の挨拶がロッジの前で始まった。
そして、犬一頭一頭の紹介が始まった。
頭に入ろうはずもない。
寒いのだ。
関西の脅し文句で、
口の中にげんこつ入れて歯がたがたいわしたろうか?
というのがあるが、
生まれて初めて歯ががたがた言っていた。
あー何であのとき、北極行くと言われようが、防寒具を借りなかったのか?
一通り紹介を終えてロッジの中にたどり着いたが、自分でもよく生きて帰ってこれたと思う。
しかし、アラスカに来て犬の紹介中に死ぬわけにはいかんのだ。