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「あ、冬の匂いがする」


朝はまだ

秋の終わりを感じさせる

空気だったのに

夜はもう

冬の始まりを感じさせる

空気だった。

冬の始まりを感じると思い出す

親友の言葉。



「あ、冬の匂いがする」



 7年前。冬の始まり。

先輩の卒業論文のお手伝いをした帰り道。

外に出た瞬間。

そこにいたみんなが 「寒い 」と言い合った。

そんな中、ひとり友だちが

"冬の匂いがする"

と言うのだ。


正直、私は驚いた。

私の知らない感情だった。

初めてそんなことを口にする人に出会った。

私は知らなかった

"冬の匂い" を。



私は気になってしまって

どんなものか尋ねてしまった気がする。

そしてそれは

言葉じゃ表せないようなもの

であることを知った。



あれから7年。

冬が来るたびに

その言葉を思い出す。

そして

冬が来るたびに

まだ

その匂いと出会えていないと

実感する。



いつか私は

まだ知らない "冬の匂い" を

感じることができるだろうか。



この先も

冬に出会うたび

きっとこの言葉を思い出す。



冬の始まりに。

おわり









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みはな
最後まで読んでいただきありがとうございました。私の心に寄り添ってくださりありがとうございます。生きます。