【文字迷宮】「旅涯ての地」坂東眞砂子
「人生は旅である」とはよく言われることですが、その舵を切ることはなんと難しいことでしょうか。
船を操縦しているつもりが、気づけば木の葉のように流され、大きなうねりを前に呆然と佇む。
そういうことが度々起こり得るように感じます。
東から西の果てへ、さらに彼方へ<あらすじと感想>
時は13世紀。
主人公、夏桂は東の果てで裕福な商人の子として生まれました。けれど父親が罪を犯し、彼を除く家族は処刑されます。命からがら逃げ延びたあと、大陸へ渡り所帯を持つも妻がお産の中で死亡、放浪のうちに捕らえられ奴隷となり、西の果て、イタリアへと連れて来られます。
しかし果てだと思っていたその地もまた果てではなく、貧富の対立、宗教の対立の渦に巻き込まれながら、さらに「彼方」へと運ばれていきます。
彼は運命に弄ばれるという言葉からイメージされるような弱い男性ではありません。むしろ強い。その場その場で知恵を働かせ窮地を切り抜けます。数々の苦難の中でも彼の「情」も「熱」も枯れることはありません。
ただ行き先を自分自身で決められるほど、この世の波は小さくはありませんでした。
誰もが安らぎを、安らげる地を求めているけれども、それを得ることは本当に難しい。本書の登場人物の多くも、得られぬままに消えていきます。
最後に夏桂が得たものは・・・
荒々しい大波で人生を困難にする海。けれど穏やかな波で幸福感を運んでくれるのもまた、海でした。
<心に残った言葉たち>
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