伝染病を殲滅する、怒れる仏
今からお話しする内容は、おそらく日本で初でしょう。
チベット特有の仏様、怒りの相で魔を調伏する「ドルジェイ・コタプ」(Dorjei Kotrab / rDo rJe'i Go Khrab)についてです。
この本尊は、まさに今日のような世界において必要とされる、究極の仏様です。9つの頭を持つ恐ろしい鉄の豚に乗った、怒りの相(忿怒相)をしています。
ドルジェイ・コタプは、漢訳では「忿怒蓮師 金剛鎧甲」などと訳されます。英語では「Vajra Armor」(金剛の鎧)。
ここでは原語のチベット語の発音で統一します。
さてチベットでは、忿怒蓮師ドルジェイ・コタプのマントラ(真言)には強い加持力があり、主に「治癒」と「守護」の両方においてパワーを発揮するとされます:
伝染病や感染症の拡大阻止
事故、奇病、あらゆる妨害を取り除く
土地の浄化
解毒
不眠症の予防
雨や雷を防ぐ
悪霊や亡霊を制圧する
病魔・疫神・悪龍を降伏させる
長寿
財を増やす
悪い星宿や凶日を吉に転じる
死後、浄土に往生できる
など、広範囲にわたり強い効力があるとされます。
近代チベットの突出した学者でチベット仏教において「三文殊」の1人に数えられるジュ・ミパム(1846-1912)も、「このマントラ1つで百の病を治癒する」と述べているくらいです。
ドルジェイ・コタプは、インド密教には登場しません。日本や中国にも存在しません。チベット特有の忿怒尊(ふんぬそん)なのは、インドからチベットに密教を伝えたグル・パドマサンバヴァ(グルリンポチェ;蓮華生大師)ご自身の8種類の忿怒相(グルダクポ)の1つだからです。
グル・パドマサンバヴァは奈良~平安時代にかけて活躍された密教の先生ですが、チベットにおいて、ご自身の秘密の教えを六大元素(地・水・火・風・空・意識)の中に封じ込めました。これが「テルマ」(埋蔵経)と呼ばれる所以です。
テルマは、来るべき時がやって来たら、資格のある者が教えの封印を解きます。グル・パドマサンバヴァによって預言された、封印を解く者を「テルトン」(埋蔵経発掘者)とチベットでは呼んでいます。
テルマは山の岩の中、湖の中、人間の意識の中、空中(!)にまで埋蔵・秘匿され、聖なるダーキニーたちによって厳重に管理されます。そして適合者が現れると、極めて神秘的な方法によって、封印が解かれます。
ドルジェイ・コタプもテルマに属し、過去に何人もの聖なる「発掘者」(テルトン)によって教えが開示されてきました。
この本尊を感得したチベットの聖者は、ガダク・ニャン・レルパ(1124-1192)、サンギェー・リンパ(1340-1396)、ドルジェ・リンパ(1346-1405)、ミンギュル・ドルジェ(1585-1607)などです。それぞれテルマの内容が異なるため、マントラも若干異なります。
ここに掲載した「守護輪」は、ドルジェイ・コタプのマントラから形成されています。御守として身に着ける場合は、この「守護輪」を青い紙に黄金の文字で記すとよい、とされます。
キャプジェ・ペノル・リンポチェは、ドルジェゴタプを世界各地でよく修法されていました。私も海外で、ドルジェコタプの「守護輪」をペノル・リンポチェからいただいたものです(下の写真)。
この画像を印刷して所持するだけでも、大きな力があり、守ってくださります。
ドルジェイ・コタプのマントラ:
(ドルジェ・リンパの体系より)
オン・パドマ・シャワリ・パット
ナンパラ・シク
ナーガ・ナン
サルヴァ・ブリタ・ハナ・ハナ・ヴァジレーナ・
ラクシャ・ラクシャ・スヴァーハー。
(ミンギュル・ドルジェの体系より)
オン・パドマ・シャワリ・パット
ナンパラ・シク
ナーガ・ナン タディヤター
サルヴァ・ヴィリタ・ハナ・ハナ・ヴァジレーナ・
ラクシャ・ラクシャ・スヴァーハー。
※このマントラ(真言)をきちんと働かせるには、正統な師からの伝授(口傳)が不可欠になります。有徳の師と法縁がありましたら、個別に伝授を受けることを強くお薦めします。
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