【完全攻略】国際機関でのキャリアを目指す方へ 〜JPO合格に向けてどのように準備すべきか?〜
はじめに
国際機関での勤務に関心のある方は少なからずいるかと思いますが、どのように準備をすればよいか、どのようなキャリアを積めばよいか、何を勉強をすれば良いか等、よくわからない方も少なくないかと思います。
私自身も、学生時代から国際機関での勤務に関心がありましたが、どのような経験を積めば国連職員になれるかわからず、色々と悩みながらキャリアを歩んできました。このため、少し回り道をしてしまったかもしれません。
もう少し情報があれば、身近に相談できる人がいれば、もっと早い段階で国際機関に転職して、キャリアを構築できたかもしれないと思うこともあります。
今回は、自分が国際機関でのキャリアに関心のある学生時代に戻ったら、どのような情報を知りたいかという観点から、記事を執筆してみました。
色々と記載した結果、文字数は全部で1万6千字近くとかなり長文となってしまいました。。。
国際機関でのキャリアに関心のある方にとって、少しでも参考になると嬉しいです。
目次
1 国際機関で働くためには?
2 JPO試験とは?
3 JPO試験に合格するための準備
(1)何をしたいか?どの国際機関で勤務をしたいか?
(2)大学では何をすべきか?
(3)社会人としての職務経験とおススメの業界
(4)おススメの大学院と専攻分野
4 JPO試験の書類準備方法
(1)カバーレター
(2)語学の証明書
(3)CV・履歴書
(4)P11
(5)面接対策
1 国際機関で働くためには?
一般的に、国連などの国際機関で勤務するには、以下のような条件を満たす必要があり、新卒で国際機関での職を獲得することは容易ではありません。
(1)修士号を取得(業務に関連する分野)
(2)英語又はフランス語での勤務が可能(ポジションによってはその他の国連公用語がワーキングレベルだと尚良し)
(3)(特に勤務する機関又はポジションに関係する)数年間の職務経験
そして、以上の条件を全て満たした上で、主に以下のような形で国際機関でのポジションを獲得することとなります。
①空席応募
②国連事務局YPP(ヤング・プロフェッショナル・プログラム)
③JPO
④コンサルタント、UNV、インターン
①空席応募
各機関のHPや外務省国際機関人事センターのHPなどで見ることができる様々な空席に応募して、数多くの応募者の中からポジションを獲得する方法です。
国際機関人事センターのHPに詳細な情報が記載されていますが、主に以下のような流れになります。
空席の確認⇒応募資料の作成⇒応募⇒書類選考⇒筆記試験⇒面接⇒合格
https://www.mofa-irc.go.jp/boshu/open-recruitment.html
空席応募の場合は、募集されているポジションと自分の経歴やスキルが完全に一致していることに加えて、面接等で他の応募者よりも良いパフォーマンスをしないと採用されません。
また、出身国や性別などの要素も勘案されることがあり、先進国の男性は採用されにくい機関もあると聞きます。
空席は世界各地から応募があり、ポジションによっては数百もの応募があるため、倍率は数百倍の場合もあります(知り合いのUNICEFの方のポストには300名もの応募があったと聞きました・・・)。英語がネイティブではない日本人にとって、難易度は更に高いと言えます。
②国連YPP
YPPは国連事務局が直接実施するもので、若手職員を採用するための試験です。32歳までの年齢制限があります。年に一回試験が行われ、書類審査、筆記試験、面接を経て、合格した方はロスター(合格者名簿)に掲載されます。
そして、合格後は、ポストの空き状況に応じて、ロスター掲載者の中から選考が行われ、ポストに採用されます。YPPを通じて国連に入った人は、より安定的に国連で勤務ができることになりますので、職の安定性は高くなるといった利点があります。
ただし、YPPは毎年、対象となった国々から多くの応募があるため倍率が非常に高く(数百倍)、合格するのは至難の業です。語学面でのハンデもあり、日本人でYPPに合格される人は数年に1名いる程度のようです。
③JPO
JPOとは「Junior Professional Officer」の略で、日本政府が費用負担して、35歳以下の若手日本人を様々な国際機関に原則2年間派遣し、国際機関での勤務経験を積む機会を提供するプログラムです。
※参考:国際機関人事センター
https://www.mofa-irc.go.jp/jpo/
毎年50~60名の35歳までの日本人がJPOとして国際機関に派遣されています。国際機関人事センターの資料によると、倍率は6~7倍程度となっており、空席応募やYPPと比べると圧倒的に倍率は低くなっています。また、国際機関の日本人職員の半数以上がJPOを通じて国際機関に入職したと言われています。私自身もJPOを通じて国際機関に入りました。
国際機関にもよりますが、一度JPOを通じて国際機関の内部に入ることで、その機関での勤務経験や知見が得られるとともに、人的ネットワークが拡大するため、内部の候補者は外部から入る場合と比べて、新たなポジションを獲得する上で、圧倒的に優位な立場に立つことができます。
JPO制度を通じて一度国際機関に入ることで、国際機関で継続的に勤務できる可能性が飛躍的に高まるため、日本人にとってJPOは国際機関への入るための王道といえます。
④コンサルタント、UNV、インターン
最後に、コンサルタントやUNV(国連ボランティア)、インターンとして国際機関で勤務する方法です。
コンサルタントやUNVは、正規職員としての待遇を受けることができる1~3の方法とは異なるため、正規職員と比べると待遇面で少し劣りますが、機関での勤務経験や知見が得られ、人的ネットワークを広げられるという点で、とても良い制度だと思います。
インターンについては、お給料をもらえないことが多いかと思いますが、インターンとして勤務をした後にコンサルタントしてのポジションをゲットするといったケースもあります。また、コンサルタントやUNVとしての仕事のパフォーマンスが評価されれば、その後正規職員としてポジションを獲得できる可能性が大いにあるようです。
仕事面でも、普通のスタッフと同じように業務を任され、やりがいもあるようですし、JPOで必要とされる職務経験を積む上で貴重な機会だと思います。JPOの選考過程でも国際機関でインターン、UNVやコンサルタントとして勤務したことがあるか見られており、このような経験があるとプラスに評価されます。
実際に、JPOで国際機関に入る方でコンサルタントやUNVとして勤務経験がある人は少なからずいますし、私の同期も数名がコンサルタント又はUNVの経験者でした。
UNVとして国際機関で勤務する方法については、青年海外協力隊(JOCV)枠のUNV制度や、広島平和構築人材センター(HPC)のプライマリーコースに参加してUNVとして1年間派遣される形が、多いかと思います。
https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/career_support/unv/index.html
https://peacebuilderscenter.jp/
2 JPO試験とは?
上記方法の中で、日本人にとって最もおススメなのが、外務省国際機関人事センターが若手の日本人を国際機関に2年間派遣するJPO制度です。
詳細は国際機関人事センターのHPをご覧いただけたらと思いますが、JPO試験には一次審査(書類審査)と二次審査(英語面接と英語論文)があります。
JPO試験|外務省 国際機関人事センター (mofa-irc.go.jp)
書類審査で提出が求められる資料は以下のとおりです。
(1)カバーレター
(2)CV・履歴書
(3)英文応募用紙(国際機関でポジションに応募する際に提出するP11)
(4)英語力の証明書(TOEFL又はIELTS)
(5)(もしあれば)その他語学の証明書(国連公用語)
上記に加えて、①35歳以下、②修士号を取得、③2年以上の職務経験、④日本国籍を有すること、⑤将来的に国際機関で勤務する意思を有していることが必要となります。
書類審査をどのように用意すべきかについては後述いたします。
無事に書類審査を突破すると英語での面接と英語論文による最終選考が実施されます。
3 JPO試験に合格するための準備
国際機関で勤務するためには、修士号の取得や勤務経験など、数年以上にわたって着実に準備を進めていくことが重要です。
私もJPO試験に関心を抱いてから実際に合格するまでに、約10年間かかりました。その間、子供の出産やコロナウイルスの蔓延など、当初予期していなかった出来事もありました。
このため、学生時代から中長期間の計画を立てて準備を進めることが重要です。
ここでは、大学生、大学院、若手社会人時代に何に心掛けた方が良いかについて、個人的な考えを共有させていただきます。
(1)何をしたいか?どの国際機関で勤務をしたいか?について熟考する。
まず初めに大事なことは、どの国際機関で勤務したいか、国際機関で何を成し遂げたいか、どのような分野を専門としたいかについて、しっかりと考えることです。
国際機関といっても、ユニセフで子供の権利保護や栄養、国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)で難民の保護、国際原子力機関(IAEA)で原子力協力、世界貿易機関(WTO)で国際貿易など、多岐に渡る機関と業務があります。
このため、自分は何をしたいのか、何が得意なのかについて自問自答して、自分が進みたい道についてしっかりと考えることが必要不可欠です。具体的な機関やポジションが決まれば、求められるスキルや経験等がある程度狭まるので、準備を進めやすくなります。
例えば、大学で農学を勉強して、開発途上国で農業支援に携わりたいのであれば、国連食糧農業機関(FAO)を目指すなど、自分の関心と強みがわかれば自ずと目指すべき機関が見えてきます。
このため、自分がやりたい分野・機関についてしっかりと考えることをおススメしたいと思います。
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