『彡』って凄い!!
形ないものを象(かたど)った記号「彡(さんづくり)」
ここ数年の私の漢字をモチーフとしたアート書の作品にの中に、頻繁に現れる文字(記号)があります。
それは「彡」。
「彡」はそれ単体でれっきとした一つの漢字であり、「サン・あや」と読みます。
また、「さんづくり」と呼ばれる部首の一つでもあります。
「彡」は彩色や模様、時には匂いや音などをも表してしまうんです!
そして、その美しさや「キラキラ」した感じを表現している、なんとも興味深い記号であり、文字なのです。
かの有名な古代漢字研究者白川静氏は、ぶ厚〜い漢字字典『字統』の中の「彡」の箇所で、形あるものの姿を絵に表すことから成立した「象形文字」というより、概念を形に表した「象意文字」というべきものであろう、とそう記しています。
あらゆる形態の粒子として変幻する万能記号!
それは「影」という漢字の成り立ちを調べていた時、旁部の「彡」ってなんだ?というところから始まりました。
「彡」とは、光・色・匂・音、など形のないものを、そしてそれの美しさを表したもの。
それも、たった三本の短い斜めの線という極めてシンプルな記号に抽象化したものだと知った時、な、な、なんとカッコいい!それってまるで粒子のようじゃないの〜!
と、ぐぐぐ〜っと惹きつけられたのです!
昔から素人ながらに宇宙の成り立ちや、量子の存在の不思議さに心惹かれてきた私にとって、いろんな部品にくっついてはその漢字の粒子形態?を変幻させる「彡」という記号は、とても神秘的で魅力的なものに感じたんですね。
人間の目には、見えない量子や粒子などのミクロサイズではあるけれど、その存在や様子をかたどったなんてホント凄い!
なので、白川先生が「彡は象意文字である」と仰ってはいるのですが、私にはある意味「象形文字」でもあるように思えちゃうのです。(生意気でスミマセン)
いやー、本当に万能記号です!
と、まあまあの惚れ込みようなのです。
「彡」が使われている漢字いろいろ
では、「彡」が使われている漢字に、どんなものがあるのか、いくつか例を挙げてみますね。
「影」エイ かげ・ひかり
「景」は光をあらわし、「彡」を添えることで、光によって映し出された模様のこと、またその美しさを意味する。
ここで「影」は「ひかり」とも読むのが面白い!
月影、星影というように、影はひかりそのものとみなされることもあり、光と影は本来一体だということを言っているようで、深い文字だなぁ、って思います。
■「彩」サイ あや・いろどり
「采」はもともと木の実などを採るという意味て、そこから多くの花木がもつ色々な自然色のことも表すように。
そして、そこに「彡」を添えて、その色彩の美しさを表すのだとか。
■「彰」ショウ あきらか
「章」は入れ墨の針を表す「辛」の先に墨だまりのある形を表しているのだとか!
そこに「彡」を添えて、その入れ墨の模様とそれが美しい様を意味するらしいのです。
■「彭」ホウ ふくれる
「鼓(つづみ)」から出る音色の美しさ、震動を「彡」で表しています!
し、し、震動ーー‼︎‼︎
■「鬱」ウツ しげる・うれえる
元々、左下部にある「鬯(ちょう)」は、香りのついた草とお酒を合醸したものを入れる器のことであり、その鬯から醸し出される香りの芳しい様子を「彡」で表しています。
そう、ここでは香りなのです!
どこにでも偏在するものとしての「彡」
この万能記号「彡」は、現代社会やそこに生きる人間のあり様を漢字をモチーフに創作している私の現代アート書の作品に頻繁に登場します。
「彡」をその中で部首として使用していない漢字をモチーフにする時にも、「彡(サン・あや)」を単体の文字として書き込んでいます。
音や光のように、目には見えないけれど、常に私たちの周りに存在するものとして。
例えば、
◇「we are surrounded ー回」(2021年)
この作品では、我々を取り囲むものたち、例えば化学物質、放射能、菌、ウィルスのようなものから、自然の恵みでもあり脅威ともなる雨や海などを「彡」で表し、「回」という漢字の周りに書いています。
この時、簡潔に凝縮された「彡」の三本線は分身の術を使ったかのように、今一度無数の線に拡がっています。
そして、
◇「be projected ー影」(2022年)
ここでは、まさしく光(景の部分が光の意味)によって映し出される模様として、さんづくり「彡」を書いています。
ここでの「彡」は映し出された模様(像)でありながら、まるで意志をもっているかのように自由にその線を触手のように伸ばしていってます。
次は
◇「divide ー分」(2022年)
分けられたくないし、分けたくもない。
それなのに常に分けられ、分けてしまう人間の性を書いた作品。
形あるものから形のないものまで、あらゆる分けられる対象として、「彡」 をたくさんの短めの線で登場させています。
◇「カタドル ー象」(2022年)
人は一つの「ナニカアルモノ」をみた時(それがモノであれコトであれ)、心の中にそれぞれのイメージをを象る。
その象り(カタドリ)は皆違い、同じものなど一つとしてない、いいも悪いもない、それが事実という作品。
この「ナニカアルモノ」を表現するのに、物質であれアトモス(雰囲気)であれ、この万能の「彡」で表してみよう、と登場させました。
と、このように「彡」に対する偏愛は、これからも続くかもしれないのですが、この「彡」 に興味を持つきっかけとなった漢字「影」、今、その「影」を新たなバージョンで作品にしてみようと思っています。
次回はこの「影」をモチーフに今創作している作品の紹介をする記事にしたいと思います。
お楽しみに〜。