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#近未来
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁−24
「お姉様に、どうしても見てもらいたいものがあります」
義妹はそう言いながら、黒色のクラッチバッグから、一冊のファイルを取り出し、それを私の前に差し出した。
彼女のいわれるまま、アタシはそのファイルに視線を向ける。
「ま、立ち話も何だからさ、座って話そ」と言いながら、アタシは彼女に、執務室のソファに座るよう促す。「コーヒーでいいよね?」
「はい、お姉様と同じもので」エミリアは
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁-23
〈お姉様、おはようございます〉
〈おはよう、エミリア〉
アタシがディスプレイ越しに挨拶したのは、エミリア・パトリシア・クラリッサ・アリアンナ・フォン・ゾンネンアウフガング=ホッフンヌング。私の妹である。
だが彼女は、実の妹ではない。旧スイスを地盤とする貴族・ローゼンミラー男爵家からやってきた養女である。
〈あの、お姉様……今晩の晩餐会について、なにかお耳に入っていますか?〉
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁-22
だが、この安定した治世も長くは続かなかった。アインハルト5世から数えて5人目のプレアガーツ家出身の皇帝クラウス=フォルクハルト3世は若年で即位した上病弱だったこともあり、政界ならびに宮廷での佞臣の跋扈を許した。
不幸なことに、この皇帝はあまり政治には興味を示さなかった上、このころから極右思想にかぶれた人たちが、急速に勢いを増すようになった。このころの市民は賢かったから、議
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁−21
「う、う、うーん」
アタシは裸のままベッドの中で両腕を上げて、勢いよく身体を伸ばした。
デジタル時計の表示は、朝の6時20分を過ぎていることを示している。
自分の左側に視線を向けると、隣で寝ているはずのオトコがいない。
なぜ、オトコが隣にいたのかって? そんなの決まってるじゃない。楽しんでいたからよ。
さて、ここで自己紹介といきますか。
アタシの名前はマルガレータ・ハンナ
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁-20
「悪いが、もう一度言ってくれないかな。どうも年のせいか、耳が遠いものでね」
部屋の主は視線を逸らせたまま黒革の椅子にふんぞり返り、せわしなくパイプをいじりながら返事をした。
「ですから代表、エルヴィラの襲撃は失敗しましたとご報告しているのですが」
男はいくぶん顔を青ざめながら、部屋の主に先ほどいった言葉を繰り返した。
男の説明を聞いた部屋の主は、視線を逸らしたまま「フーッ」
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁-17
2人の口論は、終わる気配がない。私が周囲を見ると、いらだちの視線を向けているのはキャサリンだけではない。捜査関係者も、それは同様だった。何人かが、ラッシャーとフリーダを見ながら、なにごとかひそひそ話をしている。どんな内容なのかは、おおよそ見当がつく。総店長が口論しているから、仕事がはかどらないのだ。
「あのう、ちょっとよろしいでしょうか?」
私とキャサリンに、一人の警察官
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁−16
「だったら、社員やアワマネに後を任せて、とりあえず現場に足を運ぶべきだったのではないですか?」フリーダは執拗に食い下がる。
今彼女が口にした「アワマネ」とは、アワリーマネジャー(以下HM)という、社員不在時に店舗運営を担うアルバイト社員のことで、全アルバイトの頂点に位置する。小規模店舗では2~3人いるが、グラーツ総本店だと、20人以上のHMがいる。この時間帯でも、最低4~5
Naked Desire〜姫君たちの野望
第一章 心の壁−15
私は素早く、キャサリンがいる方向に姿勢をかえた。
彼女はアクア色の無地のシャツの上に、濃紺のノーカラージャケットを羽織り、前のボタンは開けている。下半身は、ジャケットと同じ色のレギンス、黒のパンプスという格好で、私の目の前に立っている。
近衛兵といっても、軍服を着用するのは国家や軍隊の儀礼行事がある時だけで、普段はスーツで勤務する。キャサリンに率いられた近衛兵も、全員がス