親が認知症になった その1

2025年現在、78歳の母に認知症の傾向が出ています。というよりは、ほぼ間違いなく認知症、という状態です。

具体的には、
・短期記憶力の低下
→10分前に話したことを覚えていない
・長期記憶力の低下
→地元の老舗の店、よく行っていた店を「知らない」というなど
・不安感と猜疑心
→常に不安で、「これは間違ってるんじゃないか」「騙されてるんじゃないか」といったある種の妄想が出始める
・物盗られ妄想
→玄関の合鍵をいつの間にか作られていて、家から着物だの何だのを盗んでるやつがいる、といった妄想が出始める
・作話
→実際には付き添いで行っていないのに、「今年に入ってから(具体的な日にちはわからない)一緒に◯◯銀行の窓口に行ったでしょう」と信じ込む
といった症状が出てきていて、その症状の度合が結構ひどくなってきました。

正月にはそれで大喧嘩になり、泣いて拗ねるといった子どものような反応を見せるようになっています。

できれば脳神経内科なり心療内科なりに連れて行こうと思っていたんですが、認知症の話をすると明らかに不機嫌になり、会話ができなくなるか黙り込むかのどちらかでした。

そこで、数週間以下のことに気をつけて会話を試みました。
・できるだけ穏やかに話す
→ゆっくりと、厳しい言葉を使わない。
・感情面で理解を示す。
→「◯◯がわからないのが不安だったね」といった具合で、母の言語化出来ない気持ちや意思を「こちらも分かってるよ」と言葉にしてみる
・怒らない
→怒ると拗ねたり黙り込んだりするので、同じことを何度も繰り返し説明する必要があっても、実際にはブチギレる寸前でもできるだけ穏やかに話す。
・心配していることを繰り返し伝える
→認知症なんじゃないか、と疑っているという事ではなく、「大事なところで記憶違いが起きてるみたいで心配なんだよ」と、あくまで寄り添う姿勢を示す

そして先日、真夜中の1時過ぎに通帳を何冊か持ち出して、
「この古い通帳から新しい通帳に替えたときに、定期預金で新しい方に移っていないのがある。絶対におかしい。今すぐ通帳を確認して、どこがおかしいのかを教えてくれ。今すぐやってもらわないと不安で眠れない」
と言って来ました。

明らかに普通ではない言動と行動でした。
普通なら「この時刻に通帳を確認したところで、身動きは取れないし窓口だって空いていない。昼間窓口が開いてる時間帯に行って相談しよう」と考えるであろうところ、僕に、真夜中に、それも「おかしいところを教えろ(=どこがどうおかしいのかは自分でも理解していない。ただ「おかしい」と感じているだけ)」という、ある種の妄想です。

夜中に、2時間かけて、できるだけ穏やかに、わかりやすく説明しました。
結論、もちろんおかしいところなど何もなく、母のただの思いこみであることが分かっただけでした。

どうも母は「2025年、年が明けてから一緒に郵貯の窓口に行って手続きをした」と思い込んでいたようでしたが、実際には通帳の最新の履歴は令和6年の9月。
その時の手続きも、僕は同行はしてません。
さらに言うなら、僕が母の定期預金の手続きで窓口に同行した、ということは一度もありません。

そのことを説明したら、何よりもそこにショックを受けていたようでした。
「母さん、不安に思うかもしれないし、ショックかもしれない。でもね、僕は母さんと手続きのために窓口に行ったことはないよ」
と繰り返し伝えたことで、ようやく自分の記憶が事実と違う、ということを認識したようでした。

そこで、「自分の記憶がおかしいのかもしれない」と自覚したのでしょう。
(母も少し落ち着いてから「一緒に行ってない、というのがショックだった」と話していました)

少し前まで頑として「自分はおかしくない。おかしいと思ったら自分で病院に行く。だからもうその話題は出すな」と言っていたのが、初めて態度を軟化しました。

そして、たまさか僕もトゥレット症候群の治療(というか定期的な診察)で脳神経内科の先生にかかっていますので、

「お金みたいに大事なところで記憶違いが出てるでしょ? やっぱりそこは心配なんだよ。だから、今度僕がいつもお世話になってる脳神経内科の先生に相談だけでも良いから行ってみない?」

と持ちかけて、やっと首を縦に振ってくれました。
母の物忘れが気になりだしてから約半年、ようやくでした。

僕のケースでは、認知症の疑い→あ、これは認知症だな、と思った時点からどうやって専門医の診察につなげるか、というのがすごく難易度の高い部分だったんですが、時間をかけて、辛抱強く接したのが奏功したのかもしれません。

また、僕の母のケースではありますが、歳を取ると人の話にも耳を貸さなくなるし「作話」という、自分の頭の中でだけ辻褄が合うように事実関係を捻じ曲げ始めると、もうこちらが何を言っても「嘘を付くな」で終わってしまい、会話のチャンネルを閉ざしてしまいます。

親子の間で信頼関係を一から構築、というのもおかしな話かもしれませんが、「基本的に自分のことを疑ってかかっている相手に、自分の話を信じさせる」というくらいの難易度の作業であると考えたほうが良いのかもしれません。

これから何年続くかわからない「親の認知症」というつらい現実ですが、できるだけ記録のためにもここに書き残していこうと思います。

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