瀬戸内の離島で出会った方々の思い出
本屋さんで「離島旅」というようなガイドブックを探すと、多くは沖縄、残りの大部分は伊豆諸島か小笠原諸島、さらに残ったものはアートの島として売り出している直島、豊島などというタイトルのものが見つかります。しかし、私はどちらかというと瀬戸内の観光地化されない島旅が好きで、関西に住んでいるという地の利を生かしてそこそこ多くの島を訪れました。思い出すままに、いくつかの島について書いてみようと思います。
伊島
瀬戸内海の端、太平洋との境目に位置する伊島は、徳島県最東端の島でもあります。JR四国の阿波橘駅から徒歩10分の答島港から、一日3往復の連絡船で約30分でアクセスできます。
5月下旬から6月上旬にかけては美しいササユリの花がみられるそうですが、そんなことは全く知らずに訪れたのは2016年8月7日。夏真っ最中でした。
島を一周すると、伊島灯台や湿原地帯、通夜堂などがあるとのことで見てまわったのですが、とにかく暑くて暑くてたまらず、島唯一の寺である松林寺軒先の日陰で蚊に悩まされながら、帰りの船を待っていました。
その日はちょうど、無住寺である松林寺に四国本土からお盆の棚経をあげるためにお坊さんが訪問してくる日だったそうで、見かねた地元の方がクーラーの効いた寺の中に招き入れてくださいました。わざわざ関西から伊島を訪れたということで、とても珍しがられたのを覚えています。これが、離島で地元の方に話しかけられた初めての経験でした。
讃岐広島
香川県の丸亀沖に浮かぶ塩飽諸島のなかでも最大の大きさである讃岐広島(単に「広島」とも呼ばれます)は、丸亀港からフェリーで1時間、高速船で30分ほどの場所にあります。
伊島と違ってカーフェリーも就航していることから先に気づくべきでしたが、島の外周は20kmほどあり歩いて周るのは困難でした。例によってあまり何も調べずに歩いていたのですが、歩けど歩けど見えるのは雄大な採石場(跡)と海ばかり。ちょっと辛くなってきたころ、軽トラに乗った地元の方が話しかけてきました。
「港まで乗っていくか?」
これはありがたい!と思ってお言葉に甘えることにしたのですが、助手席は荷物でいっぱいとのことで、なんと荷台に乗せてもらうことに。本当はだめなのですが…。落ちるわけないのですが、荷台に乗って走るのはとても恐怖感を覚えることだというのがよくわかりました。
小手島
讃岐広島の隣にある小手島は、人口も面積も讃岐広島よりずっと小さい島です。広島、小手島、そして近くにある手島を合わせて「HOT」な島とのことで、連携してアートプロジェクトを推進しているそうです。
高速船から小手島の港に降りるときに、地元の方から声をかけられました。
「文化祭に来たのか?」
話を聞いてみると、島に一人だけ小学生が住んでいて、私が訪れた2016年11月26日にはその方が在籍している小手島小学校の文化祭が行われる日だったようです。自由に参加してもよいと言われたものの、旅慣れない、今ほど積極性もない私は、学校の入り口の受付らしきところで話しかける勇気が出ずに、結局文化祭には参加せずじまいでした。今考えると超もったいないことをしたものです。当時の小学生は今年の春に中学校を卒業して、島唯一の小中学校はまた休校となっているそうです。
高井神島
高井神島は広島県の尾道と、愛媛県の新居浜のちょうど真ん中位に位置しています。広島の因島港からおおよそ1時間半。過疎化が進んでいて、私が訪れた2018年時点で人口は20人まで減少していました。
灯台くらいしか見るものがない島だと聞いていたのですが、行ってみてびっくりしたことに、港に面した家々に漫画のキャラクターがペイントされているのです。Gu-Guガンモ、Dr.コトー診療所、まいっちんぐマチコ先生、カイジなど…。どれもこれも微妙に古い。
1時間もあれば見てまわれるほどの大きさの島なのですが、次の船までまだ2時間くらいもありどうやって時間をつぶそうか悩んでいたら、一人の男性の方が話しかけてきました。自治会長さんとのことで、漫画キャラクターのペイントの仕掛人だそうです。移住者を募集していること、釣りをするには最高の場所であること、ペイントはすべて漫画家さんに許可を取ったものであること、住む人がいなくなった民家を「民宿なたおれの木」として格安で貸し出していることなど、いろいろお話を伺うことができました。
あれから5年、自治会長さんは当時すでに70代後半だったと記憶しているのですが、今でもお元気になさっているのでしょうか。漫画ペイントは、著作権が絡むのであんまりテレビとかでは紹介できないのかもしれません。間違いなく珍百景としてもいい景色だと思いますが。
瀬戸内の離島は楽しい
まだまだ書ききれない思い出はたくさんありますが、際限ないのでこのあたりにしておきます。
観光地化されていない離島は本当に何にもないことが多いのですが、そのぶん外来者は珍しがられて、地元の方からいろいろお話を聞くことができることが多いです。アクセスだけはちゃんと調べておかないと帰ってこれなくなったりするのですが、それ以外はノープラン、行き当たりばったりで行ってみるのもよいと思います。ただし、宿泊したい場合は宿の予約、あと現金の準備、あと飲み物と食べ物の持参だけは欠かさないようにしましょう。
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