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私の好きな世界のMuseum:10こどもの城

〈私の好きなMuseum〉の記事を書きながら、「区切りのいい、大事に思っていることが伝わるような番号まで続いたら登場させたい」とずっとずっと考えていたのが「こどもの城」。
ここには、1人の母として、本当に本当にお世話になった。今思い返しても、私の好きな、大切な場所。

「こどもの城」とは?

「こどもの城」は、言わずと知れた青山通り添いに立つ大型児童館。正式名称は「国立総合児童センター」。
こういう場所。

こどもの城は、1979年の国際児童年を記念して、厚生労働省(当時 厚生省)が児童福祉法に基づいて計画・建設した大型児童館です。日本で唯一の国立総合児童センターとして1985年11月に開館、公益財団法人児童育成協会が国より委託されて運営をしています。
遊びプログラムの開発、提供だけでなく、児童厚生、保育、小児保健各分野の専門職とともに子どもを取り巻く諸環境の改善を目指しています。「社会が子どもを育てる」という児童福祉の理念を社会に発信する役割も担っています。
〈こどもの城について〉 より引用

「言わずと知れた」と書いてはみたものの、閉館されたのは2015年2月1日。知らない人も増えているかもしれない。

母になる前に、仕事の参考にと、こどもの城を訪れたことがある。でもその時は、魅力が分からなかった。「子どもが普通に遊んでいる場所」に見えたのだ。

新米母のよりどころ

それから、母になり、育児雑誌の片隅に「赤ちゃんぽかぽか広場」の開催の記事を見つけ、改めてこどもの城を訪れたのは、息子が5か月の頃。

「赤ちゃんぽかぽか広場」は、普段は〈音楽ロビー〉として使っている広い部屋一杯にマットを敷き詰め、赤ちゃん(3~18カ月)と保護者がのんびり過ごせる会。子どもの月齢ごとに、大まかに座る場所が分かれていて、輪の中に入れば、同じくらいの月齢の子どもたちや、そのお母さんたちと一緒に過ごせる。赤ちゃんは、自由に動けるように、服を全部脱がしてあげてくださいねーと言われ、どの子もどの子もオムツだけの恰好で伸び伸びと手足を動かす。その周りで、周りのお母さんとおしゃべりをしたりして過ごす。

クリニックのドクターや、栄養士さん、看護師さんなどのプロの方々が、会場内を回っては気軽に声をかけてくれるので、お母さんたちも、「わざわざ小児科の予約をとって相談するほどでもないけれど、ちょっと心配なこと」を気軽に話ができる。相談内容は、誰にでも共通する「気にかかり事」であることが多くて、先生の話を他のお母さんたちも聴き、先生がその場を離れてからも「そうそうウチもね・・・」とか「こうしてみたらね・・・」とか、そこから話が広がったりもする。

14時までの「赤ちゃんぽかぽか広場」が終わると、スタッフの方たちは手早く片付け、部屋は元通りの〈音楽スタジオ〉へ。オムツ替えをしたり、授乳したりして一息つくと、〈音楽コンサート〉の時間が近づいていて、そのままバンドの音楽を楽しんでから帰る日も多かった。数か月の赤ちゃんと一緒にいると、1歳や2歳の子どもたちが、随分大きなお兄さんお姉さんに見えたものだった。

6枚つづりの回数券を買って、月に2回、「赤ちゃんぽかぽか広場」に通っているうちに、私にとってもホームみたいな感覚になっていて、ぽかぽか広場を卒業しても、何かと遊びに行った。

多彩なコンテンツ

音楽スタジオでは、童謡のコンサートだけでなく、世界の民族楽器のコンサートもあった。楽器も素晴らしかったし演奏も素晴らしかった。自由時間には、木琴や手作りの楽器を使って想い想いに音を奏でた。

音楽だけじゃなくて、紙芝居や手遊びを楽しんだこともあった。手遊びがおかしすぎて、息子が床にアタマを打ちそうになるくらい笑い転げていたことをよく覚えている。同じ日に読んで頂いた紙芝居もとても良く、私は地元の図書館で同じものを見つけて、子ども会で使ったこともあった。

大型遊具でも遊んだし、季節の工作も楽しんだ。
月に何回か人形劇がやってくる日があって、それを目当てに行ったこともあった。私の大好きな人形劇団の方が、2~3人の少人数で来て、小さな劇や歌の舞台を披露してくれた。「雨降りくまの子」の歌に合わせて、くまさん人形がゆっくりゆっくり歩く姿を見ているうちに、子どもたちが2人とも寝てしまった日もあった。

大好きな場所だった。決して華やかではないけれど、子どもと楽しむことに対してベーシックで大切なものが、ぎゅっとある場所だった。

改めて「こどもの城」の魅力


母になる前に感じた「普通に遊んでいる場所」という感覚は、たぶん、そう間違ってはいない。ただ、その時は、「普通に遊ぶ」ことが、どんなに大切で素敵なことなのかが、分かっていなかったんだと思う。

今になってみれば、かつての「こどもの城」は、「普通に遊ぶ」ことを守り、維持するために、チカラを尽くしていたようにも思える。様々なジャンルの遊びの情報を収集し、子どもたちが使えるように実践した。子どもたちの普通の遊びの場所を守り続けた。大人たちが、ごく普通の子どもの遊びを大切にできるように環境を整えた。
子どもを取り巻く環境は日々刻刻と変わり、かつて「普通だった遊び」は、意識して、努力しないと、次の子どもに伝えることが難しくなったけれど、その中で、子どもの城は〈子どもの日常の遊び、普通の遊びを守る〉という役割を果たし続けたのだと思う。

こどもの城は2015年に閉館になった。多くの人が、こどもの城を復活させよう、と言っている。私も、こどもの城を復活させることに関われたらいいのに、と、どこかで思っている。東京都からは計画も出ている。どうなるんだろうか、まだ分からないけれど。

ただ、大事なのは、華やかだったり、よそゆきだったり、奇を衒ったりする必要はないよね、ということではないのか。子どもにとって、特別な場所ではなく、気軽で、当たり前の「普通に遊べる場所」こそが大事なんじゃないかと思う。

ずっと大好きな場所でいて欲しいと思う。そのために、私にできることがあるなら、喜んでチカラを尽くしたい。

あそびを磨こう。

リンク元:こども×おとな×しごとプロジェクト


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