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【季節のおすすめ絵本】4月:あの子も この子も みんなともだち

この季節だからこそ、味わいたい絵本、というものがあります。
もちろん、子どもたちが、真冬に水遊びの絵本が読みたくなったり、雪だるまの絵本が好きすぎて1年中楽しんだりする姿も、それはそれで微笑ましいので、あんまり厳密に「絵本を使って季節を教えよう!」とは思わないのですが。
もっと緩やかな感覚で、〈今年も、この季節だなぁ〉とか思いながら、手に取りたい絵本があってもいいよね、という想いで、月ごとの絵本をご紹介していこうと思います。

新しい生活が始まる4月。入園や入学、進級やクラス替えと、新しい友達との出会いに、ドキドキする時期でもあります。
そこで、4月は〈あの子も この子も みんな ともだち〉というテーマで絵本をご紹介します。と言っても、今回ご紹介する〈あの子〉や〈この子〉は、かなり多彩な顔触れですよっ!

まず、4月のテーマを〈あの子も この子も みんな ともだち〉にしようと思った1冊から。

こぎつねコンとこだぬきポン』 松野正子:作 二俣栄五郎:絵 童心社
こぎつねのコンと、こだぬきのポンが出会い、友達になる話です。初めて出会った家族以外の存在に胸を躍らせる2匹でしたが、どちらの親からも「たぬきなんて とんでもない!」「きつねなんて とんでもない!」と反対されてしまいます。そんな2匹の奮闘が、大人たちの心を動かすお話。

誰かのことを、つい先入観で見てしまうことがあります。「きつねだから」「たぬきだから」「どこの出身だから」「見た目が○○だから」・・・のように。でもそれは、相手のことを〈知らないから〉だと思うのです。知らないから、ステレオタイプで判断してしまう。でも、その人と向き合い、知り合えば、属性としてのその人ではなく、人としての魅力を知り、友達になれる。

私は、この『こぎつねコンとこだぬきポン』の話は、ステレオタイプで判断せずに個々と向き合えば、分かり合うことができるよ、ということを伝えてくれる1冊だと思っています。(物語そのものは、そんなに堅苦しいものではなく、コンとポンとその家族の姿が、愛らしくユーモラスに描かれています。)

新しく出会う人には、今まで会ったことがないタイプの人や、今まで会ったことのない属性を持つ人もいるかもしれません。そんな人たちとも、理解を深め、分かり合えたらいいな、と思うのです。

お化けの真夏日 川端誠:作 BL出版
川端さんの絵本は、絵がきれいなところが好きです。きれい、という言葉で伝わるのかどうか自信がないのですが、キラキラして美しいという意味ではなく、清潔感があってきっぱりした感じの「きれい」なんです。そして、描く生き物1つ1つに愛情が感じられます。
暑い暑い夏の日の、〈お化け〉たちの何気ない日常のお話です。有名なお化けだけでなく、知らなったお化けも登場するのですが、それぞれに個性があり、魅力的です。なーんだ、今まで知らない存在だったから、この人(?)たちのことを、コワいと思っていたけれど、個々のことを知れば、決してコワくない、むしろ愛すべき存在なんだね、と気づくのです。

知ればコワくない。一緒に遊べば楽しい。そして、すぐに友達になれます。

めっきらもっきらどおんどん長谷川摂子:作 ふりやなな:絵 福音館書店
不思議な言葉から始まる特別な時間。わくわくする想いに共感できれば、お互いに分かり合い、楽しい体験を重ねることができるのだと気づきます。ここで繰り出される遊びの、どれもどれも楽しそうなこと!楽しい気持ちは万国・万世界共通なんですね。

そして、お互いに本気で向き合い、本気でチカラを出し、本気で遊ぶと、そこには認め合い、尊重しあう気持ちも生まれるのですね。

まゆとかっぱ 富安陽子:文 降矢なな:絵 福音館書店
やまんばの子ども、まゆは、体中からエネルギーが溢れていて、真っすぐで、一生懸命で、誰に対しても礼儀正しい、生命力の塊のような女の子。まゆのお話は、どれも魅力的なのですが、かっぱとの出会いは、まさに、まゆとかっぱとがお互いを認め合うお話。お互いのチカラ一杯に、仲間たちが隔てなく敬意を持って応援する場面は、胸が熱くなります。

こんな風に考えていると、子どもたちは「友達」のことを、自分にとっての大切な仲間として、自分と同じく懸命に生きる存在として認め、真摯に向き合っているんじゃないかという気がします。

『へぇーすごいんだね きたやまようこ:作 偕成社
おにのこあかたろうのシリーズの1冊です。自分のルーツに興味を持つ話。
あか・あお・みどり・きの4色のおにの子たちが、お互いにどこから生まれてきたのかを伝えあう場面からお話が始まります。自分がどこから生まれてきたのか知らないあかたろうが、その場で思いついたことを言うと、他のおにの子たちは、かなり厳しい言葉を返すのです。(そこまで言うか、というくらい、さんざんな言われようです。)でも、あかたろうが、一度家に帰って話を聴き、仲間たちに本当のルーツを話すと、彼らの態度は一変します。
最初は、おにの子たちのあまりに厳しい言葉に、戸惑ったのですが、何度も読むうちに、彼らは自分たちのルーツを大切にしているからこそ、思いつきを話したあかたろうに、厳しく接したのではないかと思うようになりました。あかたろうも含めて、自分たちが生まれたことは素晴らしいこと、だからこそ、それは茶化していい話ではない、「すごいんだね」と共に称え合うことだと思っているんじゃないかと。
お互いのことを心の底から「すごいんだね」と言い合える、とてもすてきな仲間たちです。

いかがでしたか。
〈あの子〉も 〈この子〉も、みんな 友達なんですよね。
新しい出会いがすてきなものになりますように。

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