見出し画像

子連れ出勤のはなし

コロナ禍前に、「子連れ出勤」が少し話題になりました。覚えていますか?
「子連れ出勤」は、文字通り子ども同伴での出勤。子どもが企業内託児所などで過ごす場合は、あまり子連れ出勤とは呼ばず、保護者のごく近くや、仕事をしているエリアで過ごすような場合を呼ぶことが多いようです。

待機児童の人数がとても多い時期でした。「保育園は決まらないけれど、仕事には復帰したい社員」または「子どもと一緒だったとしてもスタッフに働き続けてもらいたい雇用主」が、子ども同伴で出勤可能、という手段を取ってみた、と言う風に理解しています。そう言えば、ニュージーランドの国会議員の方が、議場にお子さん(赤ちゃん)同伴で、国会審議に参加している写真も話題になったりしました。

その後、コロナ禍で、在宅勤務が増えたり、保育園側も登園自粛をお願いしたりして、状況は変わりました。特にコロナ禍は、在宅勤務で家には子どもがいて全然仕事がはかどらない、という経験をした方も多かったようです。
たとえ在宅勤務だったとしても、子どもが近くにいたら、全然仕事にならないよね、ということを大勢の人が体感し、「子連れ出勤」という言葉をあまり目にしなくなりました。

「子連れ出勤」は、当初は、働く女性に理解のある職場、として、好意的に伝えられたように記憶しています。私は、子連れ出勤を実践している企業さんが、定期的に開催している「見学会」に参加したこともあります。

色々な事例があることと思いますが、総論としては、私は、「子どものために望ましくない」と思っています。

保育園は、子どもがその年齢にふさわしい生活が送れるように整えられた環境です。はいはいすること、身体を動かすこと、外の風に触れて遊ぶこと、発達に応じたおもちゃでじっくり遊ぶこと、そういう、その年齢の子どもの育ちに必要な活動が大切にされています。
何より、子どもに個々に向き合ってくれる大人(保育士さん)の存在があります。

一方、職場は子どものための場所ではありません。時々だったら楽しいかもしれないけれど、それは物珍しいだけです。〈静かにしていなくちゃいけない時間〉も長くなります。身体を充分に動かせる場所もありません。お昼寝の場所だってないのです。職場の中には、子どもの個々の年齢に応じた環境は用意できません。
保護者は近くにいるかもしれませんが、子どもが呼んだときに、必ずしも応えられるとは限らない。子どもにとっては「見えているのに、応じてくれない」状況です。親の姿が見えているから、期待してしまう分、余計に辛い。
保護者の心が自分を向いていないのだから「近くにいる方が子どもも安心よね」などと言う簡単なものではない。
大人たちにとっては都合がいいかもしれないけれど、子どもの立場で考えれば、決して良い環境ではないのです。

保育園って、単なる託児ではなくて、その年齢の子どもに必要な環境を整えているんですけどね。そういう、「保育園」や「幼稚園」の専門性、みたいなものを、多くの人に知って頂きたいなぁ、と、常々思っています。

もし私が雇用主で、あの時期のように、お子さんの保育園が決まらないという社員さんがいて、それでも働きたい/働いてもらいたい、って思ったとしたら、どうするかなぁ。会社の費用負担(一部補助かも?)で、保育の専門性を持ったシッターさんに来て頂き、職場のどこか一室を子どものための場所にするかなぁ、と思います。

私自身、子どもたち2人は保育園にお世話になり、仕事をしてきましたので、ずっと保護者が子どもと向き合い続けなくてはいけないと、思っている訳ではありません。ただ、子どもたちが日中過ごすための場所には、彼らにとって適切な環境と、自分と向き合ってくれる大人がいて欲しいのです。
いずれにしても、働く親と、子どもと、両方の軸を意識することが必要ですよね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?