無駄遣いのススメ
息子が2年生の時、「学童の折り紙は、1人2枚までなんだよ」と話してくれて、思わず「あらぁ。少ないねぇ。」と言ってしまったことがある。
いや、分かる。分かるよ。予算だって限られてる。そして、そういう消耗品な教材、ってかなりのコストになる。掛け算で増えるからね。折り紙とか、ペンとか、テープとか。
そうなると、「折り紙は無駄遣いしないようにしましょう」「1人2枚までです。大事に使いましょうね。」「テープは必要な分だけ使いますよ。」「必要な時は、事務室に取りに来て、使い終わったら、すぐに返してくださいね」という話になる。〈無駄遣い〉をするための余地を残さない。
でもね、このやり方をすると、失敗ができない。
たった2枚しかない折り紙。失敗できない。手裏剣だって2個しか作れないしさ。自分であれこれ工夫して、切ってみて、あっ、切ったところ間違えたって思っても、代わりのものは、もらえない。
それだと、子どもたちは、冒険ができないよね。「こうやったらどうなるかなぁ。」と、いくつもいくつも試してみて、そうやって「自分で見つけたさいこうの やりかた」が見つかると、嬉しいし楽しい。ずっと忘れないと思うのだけれど、枚数制限のある中では、その冒険をして、最初に間違えたらもう致命的だ。
そう言えば、息子の通っていた公立保育園では、いらない紙を正方形に切ったものを折り紙として使っていた。園備品カタログのページとかね。この方法なら、何枚使ったって、「いいよ」って言ってあげられそうだ。(ま。折り紙を購入する金額と、いらない紙を正方形に切るという作業にかかる人件費と、どちらが高いのかは、私は知らないけれど。)
大人の目から見て、ちょっとやったら、すぐに新しいものを欲しがる、とか、何枚も何枚もくしゃくしゃにする、とか、ビリビリちぎる、とか、そういう行為は「無駄遣い」に見えるかもしれないけれど、それは、子どもたちにとったら創作だったり、色々試しているだけだったりする。無駄なんかじゃない、意味のある、大事な行為だ。
無駄なように見えて、子どもたちには意味のある行為と言うのは、沢山あると思う。学童はまぁ小学生だから、「ここでは1人2枚」というルールも理解するし、家で遊ぶ時と学童で遊ぶ時の切り替えもできたりするから大きな問題ではないのかもしれない。
でも、未就学のうちは、何度でもやり直したり、好きなものをいくつもいくつも無限に作ったり、気に入らなければクシャってしたり・・・という「必ずしもゴールにたどりつかない折り紙」たちが、重要なんだと、覚えていてもらいたい。それは無駄ではなく、意味のある制作あそびだ。
だから、一見もったいないように見える「無駄遣い」を、否定せず、大事にして頂きたい。そして、「無駄遣いしている」と大人の理屈で子どもの行為を説明するのではなく「何をしているのかなぁ」という目で観察をして頂きたいなぁ、と思う。きっと色々なものが見えてくる。
余談だが、1人2枚という制限の中で、それでも、どうしても折り紙でライトセーバーを作りたかった息子は、他のお子さんとの交渉の末、権利を譲ってもらったり、他の子が工作をして切った切れ端をもらったりして、無事に必要なだけの折り紙を確保したらしい。まぁ、小学生くらいになれば、そういう知恵も、処世術も、遊びのうちかもしれないけどね。