じょうずに いっぱい しっぱいしよう
子どもたちが失敗する経験が減っている、と言われています。
大人たちの目が充分に行き届くようになって、失敗する前に、「あ、そこのやり方はそうじゃない、こうするといいよ」「あぶないから、やめようね」「まだむずかしいから、かたづけるね」・・・などなど、子どもたちを失敗から守るために、隙のない予防線が張られる場面が多くなりました。
他方、その風潮に警鐘を鳴らすかのように、「子どもたちから失敗する権利を奪ってはいけない」なんてことも言われるようになりました。
「失敗」によって得られるもの
そうですよね。
「失敗すること」には、必要なものが、ぎゅぎゅっ詰まっています。
「できなかった」という経験は、「じゃあどうしたらいいか」を考えるきっかけになります。
「今はできないけれど、できるようになりたい」という願いは、1つのことに継続して取り組もうとする意欲を生みます。
「できなかったことが、できるようになった」という経験は、最初からするりとできたよりも、大きな大きな喜びを生み出します。
「できなかった」を知っていることは、できない人に対して共感できるようになります。
「できないことがある」ことを実感している人は、「自分のできること」をもっともっと大切にできるようになります。
そして、「できないこと」に直面したときに、くじけない心を育てます。
いっぱい しっぱいしよう
だから、「失敗」は恐れずに、存分に経験したらいいと思うのです。
ちょっと昔のように、子どもたちが、子どもたち同士の異年齢のコミュニティを持ち、年上の人も、年下の人も、一緒み色々な失敗をしたり、近所の大人たちに叱られたりできた時代は、あまり意識しなくても、存分に失敗できたんだと思います。(私自身の子どもの頃は、そんな時代ではありませんでしたので、想像であり、願望ですが。)
でも、今は、どうしても大人たちの目が行き届いてしまう。
だからこそ「いっぱい しっぱいしよう」って、大人たちが心がけていることが必要だと思うのです。
じょうずに しっぱいしよう
そして、「じょうずに」失敗できたらいいな、と思っています。
「じょうずな しっぱい」は、〈他人や環境や状況のせいにしないで、自分の責任で失敗したと自覚し、でも過剰に落ち込まず、引きずらず、「ま、そんなこともあるよね」と、受け止める失敗〉です。
例えば、ちょっとお茶をこぼしちゃった時に、「だって、コップを抑えてくれなかったからだよ」とか「机が高すぎるんだよ」とか、言わない。「あ、こぼしちゃった」って受け止める。
そして、大人も、「あー!なにやってんのよ!ぼんやりしてるんだから!」とか「そんなことだから、あなたは、いつもいつも・・・」とか「もう余計なことはやらないでちょうだい!」とか、過剰に大きくしない。
「あら、こぼしちゃったね」「次は、こぼさないように、よろしくね」って、受け止める。
そういう、失敗です。じゃあ、そういう失敗を経験するために、大人たちは、どうしたらいいのかしら。
じょうずなしっぱいのために 大人ができること
①手やクチを出さない。
大人が手を出したり、クチを出したりすると、そもそも失敗そのものを回避してしまう場合も多いです。また、失敗したとしても、「ママが余計な手を出したから」「パパがちゃんと教えてくれなかったから」みたいに、誰かのせいにできる余地を残してしまいます。
だから、手やクチは出しません。(でも目は離さない方がいいかもしれませんね。見ているのに何もできない、というのが、一番忍耐のいることですけどね。)
②失敗した時に評価しない
子どもの振る舞いに対して、大人が評価(良い/悪い)の言葉をクチにしない方がいいと思います。あ、うまくできなかった、ということは、子ども自身が気づいています。
それに対して「手の位置がおかしいのよ」とか「もっと練習しなくちゃだめね」とか言う必要はありません。改善策さえも、自分で考えたくなるのが、失敗の魅力ですから。(アドバイスを求められるまで待ちましょう、じっと。)
また、過剰に褒めなくてもいいと思います。「チャレンジできるなんてすばらしい」「失敗したことが、すごい」とか、大人が認める必要はないのです。
どうしても何か言いたい時には、事実だけを伝えてみてはどうでしょうか。例えば「1人でやったね」「最後までやったね」など。(褒める言葉との違いは、〈だからスゴイ〉〈だからエライ〉という大人の評価を言葉にしていないことです。)
失敗の中にもポジティブな事実があるはずですので、それをシンプルに言葉にする。だからどうなのかは、子どもが自分で考えます。
③大人も失敗している姿を見せる
大人自身も失敗します。それを、見せましょう。そして、失敗を前向きに受け止める姿も見せましょう。
「今日、マヨネーズ買うの忘れちゃった。忘れないようにメモしとこ。」「テレビに夢中になって、やることが終わらなかった。その分、午後がんばろう」などなど。(しかし、具体的な例を考えると、子どものことは叱っているけれど、似たようなこと、大人は平気でやってますね。忘れ物とか、好きなことに熱中しちゃうとか、夜更かしとか、〆切忘れるとか・・・。)
しっぱいしても 大丈夫
新年度が始まりました。知らないこと、分からないこと、始めてのことが、次々とやってきます。特に、大人たちは、子どもたちを失敗させないようにと、必死になってしまう季節でもあります。
いっぱい、しっぱいしましょう。
失敗しないことを目指すのではなく、失敗しても大丈夫って思うことを目指しませんか?
今日も、元気に、いってらっしゃい!
昨年の1年生に向けては、こんな記事を書きました。