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「楽しい」という言葉は、いろんな意味を含みすぎている
子どもたちの「楽しい」という言葉は、少し慎重に取り扱う方がいいと思っています。
子どもと一緒に過ごしたあと。
例えば、動物園に行ったり、映画を観たり、パズルを一緒に解いたり、公園でなわとびしたり、お菓子を一緒に作ったりして。
感想を聞くと、大抵「楽しかった!」って答えると思うんです。大人の方から「楽しかった?」って聞いて、「うん!楽しかった!」って答える場合もありますよね。
その「楽しかった」の中身を、少し考えたいな、って思うんです。
「初めて見るものが、とても興味深かった」
「とても感動して、心があったかくなった」
「むずかしかったけれど、やっとできて嬉しかった」
「すごく集中して、一生懸命やることが、気持ちよかった」
・・・きっと、言葉にするならば、いくつもの異なる感情になると思うんです。でも、総じて、満足感とかポジティブな気持ちがある時に、「楽しかった」って言うんですよね。
英語で言うところの「Funny!」だけではない、もう少し複雑な気持ちを彼らは抱いていると思うのです。だから、「楽しかった」という子どもたちの感想を聞いて、満足して、「やっぱり、子どもにとっては〈楽しい〉が一番!」と思うのは、ちょっと、受け止め方が表面的すぎるかな、と思うのです。
子どもたちは、何に対して満足しているんだろう、知らないことを沢山知ったことかな、難しいことにチャレンジできたことかな、自分で考えて創ったことかな・・・という風に、その子にとっての〈楽しい〉が、何を意味しているのかを、もう少し深く汲み取りたいなぁ、と思うのです。
そうすれば、その子が喜びそうなことを提案しやすくなると思うんです。
心温まる映画を観て「楽しい!」と言っていたとしても、その子が感じている気持ちはコメディ映画を観た時とは当然違うと思うんです。
言葉は「楽しい」だけれど、大人の言葉に置き換えれば「感動した」とか「心があたたまった」かもしれない。それならば、一緒に絵本を選ぶ時にも、面白おかしい絵本よりも、心温まるストーリーの絵本をおすすめできそうです。
そして、それを、言葉にして、子どもに伝えられるといいですよね。「楽しかった!」と話す子どもに対して、「楽しかったね。むずかしかったけど、一杯かんがえたら、どんどん、いろんな考えが出てきて、たのしいね。」とか「楽しかったね。○○がやさしくしてくれて、うれしい気持ちになったね。」とか、「楽しい」以外にも、色々な伝え方があるんだな、って言うことを、大人がなんとなく実践していくと、子どもたちもだんだんに表現が広がっていきますよね。
「あなたの気持ちは、楽しい、って言うのとは違うのよ!」などと「教える」必要はなくて、大人と子どもの会話の中で、自然に、色々な表現に触れていけるといいな、と考えています。
そして、何より、大人自身が「子どもは、ただただ楽しいことを求めている」と思わない方がいい、と考えています。子どもたちは、もちろん、〈面白おかしいこと〉も好きだし、〈ちょっぴりくだらないこと〉も好き。
それに加えて〈知的好奇心を満たすこと〉とか〈メチャクチャ頭を使うこと〉とか〈難しくて手ごわいけれど、できたら達成感のあること〉も好き。だから、子どもの「楽しい」という言葉を、言葉通りに受け止め過ぎない方がいいと思うんです。「楽しい」が意図するところは何か、もう少し深く読み取れると、子どもが喜んでくれるものを、ますます一緒に楽しめそうですね。