キッチン🍴三重の恵み🌿『田中佑樹』リレーコラム⑨　訪問報告、商品開発案発表を終えて

三重県四日市出身、西麻布、割烹「伊勢すえよし」店主の田中と申します。
『美味しい恵みを未来に残す』をコンセプトに、循環型社会を地元三重に生み出す「三重の恵み」の代表も努めております。
現在「三重の恵み」は、三重県多気町にある相可高校と共同で「キッチン三重の恵み」プロジェクトを実施しております。

お題は「水産現場の課題を美味しく解決せよ」。

という事で、プロジェクトがスタートしました！

現在、相可高校の調理部の有志8名そして顧問の西岡先生と商品開発中です。

緊急事態宣言を受けリモートでプログラムを進めています。

生徒たちのコラムで「進行状況と体験を伝える」
田中のコラムで「その裏にある手間の見える化」

を記録していきたいと思います。

■プログラムの進行具合

①「相可高校」と「伊勢すえよし」の授業
②「友栄水産」オンライン訪問
③「相可高校」と「伊勢すえよし」の授業
④「外湾漁協」オンライン訪問
⑤「伊勢志摩冷凍」オンライン訪問
⑥「訪問報告と商品開発案発表」　 ←イマココ
⑦「ぎゅーとら」オンライン訪問
⑧～⑭商品開発会議
⑮商品販売スタート

④「外湾漁協」オンライン訪問
⑤「伊勢志摩冷凍」オンライン訪問
を経て、「未利用魚を活用魚に！」にすべき魚、できる加工が見えてきました。
そして今回は、④⑤の訪問報告と商品開発案発表という回でした。

ここまでのオンライン訪問で彼らが何を受け取っているのか。
そしてプロジェクトの肝心の部分”商品開発”がいよいよスタートとなりました！！

■訪問報告

「外湾漁協」「伊勢志摩冷凍」のオンライン訪問の際の学んだこと・感じたことを一人一人に発表してもらいました

・「外湾漁協」オンライン訪問報告

訪問の際の詳細の記録は２年生の渡邉さんがまとめてくれた、こちら、を是非ご覧ください。

発表の中で生徒の口から多く出てきた内容がありました。それは、
「魚がこうやって獲れるのを知った」「漁師さんの大変さを知った」「新鮮な状態で魚が私たちに届く理由が知れた」「生産者の方々の想いを橋渡しできる商品にしたい」というものでした。

最後に発表してくれた二年生の濱口くんは
『定置網ではすごい沢山の魚が撮れている事を知れたのと同時に、未利用魚も多いという事実を知れた』と発表してくれました。

彼らからこういった言葉を聞いて私はとても嬉しかったです。
なぜなら、私がこのキッチン三重の恵みの活動を通じて、生徒の皆さんに伝えたい事の一つが、「食材が届くまで」のストーリーの大切さだったから。
生徒の皆さんは、この大切さに気付いてくれていたのです。

私がその大切さに初めて気付いたのは25歳の時でした。
初めて生産現場のお手伝いとして白菜の収穫を二日間お手伝いさせてもらった時です。
その時に感じた事が、いまなお私の料理人としての基盤となっています。

私たち料理人は、とても慌ただしく日々仕事をこなす必要がある、そういった現場が多い職種です。忙しいとついつい"作業”になってしまい、ストーリーに想いを馳せる事を忘れてしまいがちです。私も料理を学び始めたときはそういった状態になっていました。
このプロジェクトを通じて、生徒の皆さんに、「食材が届くまで」のストーリーの大切さを知ってもらう。
それが、「食材への感謝」へと繋がっていきます。

これから社会に出て荒波を乗り越えていく彼らに、「食材が届くまで」を理解して「食材への感謝」を持ってもらいたい。その想いを持って成長していけば、感謝を還元できる料理人となるはずです！

・「伊勢志摩冷凍」オンライン訪問報告

訪問の記録は２年生の宿谷さんがまとめてくれた、こちら、を是非ご覧ください。

「衛生管理の徹底がすごいと思った」「冷凍加工技術に驚いた」「弁当作りの時に活かせないか試したい」という言葉が沢山の生徒たちの報告の中から出てきました。

伊勢志摩冷凍さんのプロフェッショナルな加工の話・冷凍技術の話にとても興味深かった様子でした。
私も伊勢志摩冷凍さんに初めて訪問させてもらった際に同じ感想を抱きました。
宿谷さんの記事をご覧いただければその理由がお分かりになるかと思います。

私たち料理人は、大きいくくりでは加工の方々と同じ「厨房」の枠の中に入る職種です。
だからこそ生徒たちも私も、伊勢志摩冷凍さんのプロフェッショナルな加工の話がとても興味深かった。
さらに生徒たちは、そんな伊勢志摩冷凍さんのやり方を学んで、取り入れたいとも考えてくれていました。
学ぶ姿勢がとても素晴らしい！

今回のプロジェクトは「未利用魚を活用魚に！」するために、沢山の未利用魚の行き場を見つけるための、沢山の商品の製造が必要となります。
それを可能にする、加工についての理解をきちんとして、商品開発を進めていく。

普段生徒たちは生徒自身の手で料理を作っていますが、
今回は生徒たちで料理を作らない提案をしてもらいます。
だからこそ、より沢山の事を考える必要があります。

さあ、「未利用魚を活用魚に！」するための準備が整ってきました！！

生産者さん、流通の方々、加工の方々、生徒の皆さん、
それぞれの想いを乗せた商品開発が始まります！

■商品開発における料理人の役割「美味しい」の創出

生徒たちの商品案の話の前に、今回の「キッチン三重の恵み」における料理人の役割についてお話させてください。

生産者さんと加工の人たちに「未利用魚・低利用魚」の課題を教えてもらってこのプロジェクトは始まりました。
実態を知り、共に解決策を見つけるため、生徒たちとオンライン訪問をこれまで行ってきた中で、活用されている魚・活用されにくい魚の『特徴』が見つかりました。

活用されている魚
・手間がかからない
・商売をする上での効率が良い
・美味しい魚として認知されている
・値が付きやすい

活用されにくい魚（未利用魚・低利用魚）
・手間がかかる
・商売をする上で効率が悪い
・美味しい魚として認知されていない
・値がつきにくい

活用されにくい魚の特徴は、未利用魚・低利用魚の課題であることがわかり、これまでの取り組みを通して課題の解決策も少しずつ見つかりつつあります。

今回のお題は『水産現場の課題を美味しく解決せよ！！』
ここからの商品開発での、生徒たちと私と西岡先生の『料理人』としての役割は、『美味しい』の創出です。

これにより、「美味しい魚として認知されていない」という課題が解決されて、今まで未利用魚・低利用魚だったお魚に価値がつきます。

そして、沢山の流通がでれば、未利用魚が活用魚に変わります！

これまでの取り組みで
伊勢志摩冷凍の加工の協力、漁師さんの協力により「手間がかかる」「商売をする上で効率が悪い」という課題解決の糸口も見えてきました！！

今回のプロジェクトは、「相可高校」と「三重の恵み」だけで行っているわけではありません。
地域のみんなで協力して「美味しい恵みを未来に残そう」としてくれています！
それぞれが一人で動いても解決していかない課題を、地域のみんなで協力して解決していく。
地域で一丸となって取り組む、このやり方こそが「キッチン三重の恵み」で大切にしてきた所であり、循環型社会を創出していく一つの在り方だと考えています。

美味しい商品開発をして、三重県の皆さんと一緒に、未利用魚の課題を解決していきます！

■商品開発案発表

今回の発表に向けて「文字とスケッチを使って商品案を発表」という宿題を生徒たちに出しました。
これまでオンラインで訪問した方々から「聞いた事」「見た事」「学んだ事」を存分に生かし、枠にとらわれずに自由な発想で、考えてもらいました。

各商品開発案に関する記事は、相可高校調理部２年生の濱口君がとてもよくまとめてくれた記事がありますので、こちらも是非ご覧ください。
ちなみに、こちらの濱口君の記事の中で、『商品開発の際にこだわった３つのポイント』として、今回の商品開発の大事なポイントを書いてくれているのですが、
このまとめが素晴らしい！！
今までで学んだ事が、きちんと整理されていて、他の人にも分かりやすくまとめてくれました。
将来、調理の先生になりたいという濱口君ですが、とても説明上手な、良い先生になってくれるでしょう！！
是非ご覧ください。

①「干物図鑑！in三重」
②「三重のうまみ佃煮」
③「三重のサチージョ」
④「魚(ぎょ)っとするほど梅(うめ)ぇ時雨煮」
⑤「銀馬マリネ」
⑥「三重のおかきあげ」

6つの商品開発案が生徒たちから発表されました。

これらの商品案の詳細についても濱口くんの記事に記載がございます。

・手書きの絵

まず第一に私が思ったことは、スケッチの『絵』がとても上手ということ！それぞれの魚の特徴を捉えつつ愛嬌たっぷりに描かれています！
恥ずかしながら、私は絵を書くことが、とてもとても苦手で、料理人として何度も、「こうゆうときに絵が描けたら、、、」と苦しんだことがありました。
料理人が絵がうまいと、「料理アイデアを他の仲間に共有するとき」「新しい料理アイデアを練っているとき」「料理コンテストに出場するとき」などで、とても役に立ちます。

・生徒たちのアイデアの源

例えば、濱口くんが考えてくれたおかき揚げ。

こちらは、三重県産のおかき・あられを衣にして揚げるという商品案。

組み合わせとして、三重の名産のお茶で茶塩と合わせる提案がでました。
この商品案以外も、彼らの商品案の中に出てきた組み合わせ食材は、三重県の名産品ばかり！
全ての料理に三重県の名産品が入ったものを提案してくれました。
その中には三重県人にとってもあまり知られていない隠れた名産品を組み合わせた案も出てきて感激いたしました。
ただただ未利用魚を販売できるように商品化するだけでなく、三重県の名産品を使用していき、地域としてのオリジナリティを出しながら、
地域の美味しい恵みを積極的に使っていく。
その事により、地域での循環が産まれ、美味しい恵みが未来へ残っていきます。
彼らは沢山の事を吸収力してくれています。そう実感できる発表でした。

素晴らしい商品案６つ！すべてに拍手！！

・びっくり！商品案！

例えば、干物図鑑。これは、青魚の小魚が色々な種類の魚が混ざっている事を逆手にとったアイデア。
商品を図鑑とするなんて、とても私には思いつきませんでした。小魚は鮮度劣化が早く、魚の種類ごとに振り分けることができません。
混ざっている状態での商品化が必要になるのですが、この混ざっている状態を魅力に変える事のできる素晴らしいアイデアです。
他にも、「三重のサチージョ」や「銀馬マリネ」といった食材数が多く、加工が難しそうな内容は、私の商品案の選択肢の中に入れていませんでした。

「難しそう」「できないだろう」と考えて、商品化のアイデアに入れてすらいませんでした。できるかどうかは、加工場が決める事であって、商品案を考えていく中で”できない”と決めつける必要はありません。
こういった私には思いつかないような提案をしてくれました！

■素晴らしい生徒のアイデアを聞いて

生徒の発表は私に沢山の刺激を与えてくれ、柔軟に物事を捉える事ができるようになりました。
商品開発は行き場を見つけるための一つの手段であり、その他の手段もあった方が良い。
生徒たちから出た商品案は、どれも三重県の名産品を使った素晴らしい提案でした。開発する商品を一つに絞るのではなく、それぞれのアイデアに合った色々な形で発信していければ良いのではないかと思いました。
商品販売以外にも、相可高校が運営している、まごの店でのテイクアウトの商品としたり、未利用魚の美味しい活用方法としてレシピを提供することもできるのではないか？今回、商品開発案からもれてしまった案も活かす方法はあるはず！！

もちろん商品開発を行う事も大切な手段の一つですので、商品開発は商品開発で徹底的に美味しい商品を作り上げていきます。
まずは全部作って食べてみて、そして料理人チームで一緒に改良をしていこう！と彼らに伝えました。
彼らのアイデアは、とても素晴らしいものばかりで、専門分野の大人が関わることで、さらに魅力的な商品になっていくでしょう。ここからの私の役割は、アイデアをもっと良くする方法を彼ら自身に見つけてもらうガイドであり、誰もが美味しいと思える商品に道案内をする事です。

生徒と共に、私もこの「キッチン三重の恵み」のプロジェクトを通じて沢山の事を学ばせて頂いております。

共に学んで、取り組んで、持続可能な社会を一緒に作っていきましょう！！

■次回予告

第一回試食会！！
そして、地元スーパー「ぎゅーとら」さんにオンライン訪問