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三重のお寺―菰野町・乘得寺

子どもたちへ伝えるために


 三重組の一部地域では、十ヵ寺の持ち回りで年十回、『阿弥陀経』を読誦し、「御消息」を拝読する「六日講」が、一八二六(文政九)年からおよそ二百年にわたり受け継がれている。そのようなお講の根付いた地域に乘得寺はある。

 乘得寺では、月に一度発行する寺報を総代の諸岡克博さんが作成している。寺報は住職の栗田顯さんの祖父である先代住職の代から、何十年も中断していたという。しかし二〇二一年の住職継職時の総代会にて、寺離れ対策と新しい住職のことを知って貰うために寺報の再開が提案された。それを受けて諸岡さんが、元教員の経験を活かして見本として作ってみたところ好評であり、諸岡さんを中心に新たな寺報として発行することとなった。

 寺報は、主に一ヵ月間の行事や出来事、これからの予定を記すほか、入寺されたばかりの坊守さんの紹介や、真宗やお寺のことを学べるコーナーも設けられた。「寺院の活動や、華方さんをはじめとする多くの方々のお世話になっていることを、門徒さんに知って欲しいし、知っていくべき」だと願う諸岡さん。「お寺や地域の行事を強制にすると、拒否感へ繋がる。しかし、なんでもかんでも無くしていくのも寂しい。強制的にではなく、楽しくやってほしい、楽しんじゃえ」と考え、寺報作りも取り組まれている。

左から総代の諸岡さん、住職の顯さん、坊守の佳奈子さん


 また乘得寺では、誕生会を行うなど、昔から子どもに関わる取り組みに力を入れてきた。

 毎年十月の最終土曜日には「子ども報恩講」が勤まっているが、報恩講の前の一週間、夜七時から八時まで、子どもたちのお勤め練習が行われており、二十人近くの子どもたちが参加している。

 元々は報恩講をご縁にお勤めの練習が行われていた。練習は前々住職の代に始まり、もう七十~八十年ほど続けられており、そのことが切っ掛けで、子ども報恩講が勤められるようになったという。

 子ども報恩講は教区の児童教化連盟のスタッフにも加わってもらい、十五年程続いている。十年程前からは、乘得寺のお斎を体験してほしいという前住職の思いから、砂糖がきいた赤みそに大根と油揚げの入った「御講汁」やご飯、おかずを食べてもらっていた。現在は新型コロナの影響により乘得寺のお斎は止む無く中断しているが、諸岡さんは「復活は難しいが、寺報に御講汁のコーナーを作るなどして継承していきたい」と話された。

 「お子さんに関わる仏事が求められていると感じる。「正信偈講座」等、何かしらの行事を始めようか」と考えているという栗田住職。「親子で一緒に学んでいけると、家庭でも、真宗のことが話題になるのでは。そんなことをしてみたいな」と意欲を語られた。

寺報「乘得寺だより」

(三重教区通信員・山田潤貴)
本記事は、『真宗』(東本願寺出版)2024年10月号の転載です。

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