第8回横浜トリエンナーレの記録
はじめてのトリエンナーレ
2024年6月2日。
一週間後に閉幕する第8回横浜トリエンナーレへ足を運んだ。
私は今回、はじめてトリエンナーレというものを目の当たりにした。
トリエンナーレやビエンナーレは、大まかに国際美術展と説明されるけれど、現代アートの博覧会みたいな感じかなという認識。
私は美術の初学者であるので、表現の必然性や作家が伝えたいメッセージ、またそのキュレーションについて良くも悪くも、学べるところが多かった。
※ちなみに、私がトリエンナーレについて知るきっかけになった書籍があるので記録しておく。
「現代アートを殺さないために ソフトな恐怖政治と表現の自由」小崎哲哉著 2020年
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309256641/
こちらはまだ読破していないのでいずれ読みたい。
印象に残った作家ベスト3
1、アルタン・ハイルラウさん
2、富山妙子さん
3、リタ・ジークフリートさん
それぞれの作家についての感想などを以下に。
また、作品写真を残せなかったので、参考としてトリエンナーレの展示作品をまとめている別のサイトのリンクを貼っておく。
https://www.art-it.asia/top/admin_expht/246116/
アルタン・ハイルラウさん
コソボで活動する彼の作品群は、身近な素材である紙と鉛筆で表現されたシンプルなものだが、そこにはリアルな質感があった。
キャプションを読むと、彼の日常生活が不安定性を備えたものであることが窺え、彼が切れ端のような媒体に残した筆跡にその不安定さが滲み出ていた。
この言い表し難い感覚が、物理的にはささやかに感じられる彼の作品に実体としてのパワーを持たせ、それらが纏うエネルギーが自分の元へ切に迫ってくるようだった。
日本人の私が、見かけ上彼と同じ絵を書いても、見る人はこんな気持ちにはならないだろう。また、彼が故郷で展示をしても、私と同じような見方で彼の作品を見る人は少ないだろう。
そういった意味で、彼の作品は、横浜トリエンナーレという場所で展示することに意味がある作品だと感じた。
彼が表現しているものは彼の日常に過ぎないだろうが、それは私にとって体感することができない非日常の感覚で、この作品を通した交わりに感化された。
富山妙子さん
私は今回初めて富山さんの存在を知ったが、彼女が画家として抱えたジレンマが理解できる気がした。
苦しみを抱えながら社会に生きている人たちについて、私はつい見ないふりをしてしまうが、彼女はその社会の暗がりの部分を見つめ、表現者としてどんなことができるかを模索していた。
当事者を理解しようとしながらも、自分自身が当事者ではない故に、完全に理解することは難しい。私は他者への理解が及ばないことの苦しみから目を背けてしまうが、彼女はそれをずっと見つめ続けていたのだろう。
故人である富山さんの作品を集めたギャラリーは静謐な空間であったが、彼女が作品に託した強い思いは生き続けているようで、エネルギーに満ちていた。
リタ・ジークフリートさん
政治的思想や先鋭的なテクストによる作品に溢れた空間の中で、ただ彼女の作品がオアシスのような癒しの存在として佇んでいることにある種の安心感を覚えた。
彼女の作品は、MDFボードに細密に描かれた油彩画だった。他の多くの作品に見られるような強い作者の思想や主張などは見えず、ただそこに美しく存在していた。
日本画のような繊細なタッチで描かれた自然風景画は、彼女の安らかな自然への想いが感じられた。
感想
良かった点
・群像劇のように、いろんな境遇を辿っている作家の作品を見ることができた。
・説明文のある作品がたくさんあった。
・現代社会で起きている様々な事象について、その当事者に近い立場の人の作品を目にすることができた。
・物体としてのリアリティを感じた。
悪かった点
・音が出る作品が多く、頭が痛くなった。
・キャプションが無いと理解ができない作品が多かった。
・ちょっと暗い気持ちになった
全体的に言えば、行ってよかった。頭痛薬は必携。
今回のトリエンナーレ、不評…?
鑑賞後にXのタイムラインを見ていたら、ある一連のポストが流れてきた。
雑に要約すると、今回の横浜トリエンナーレに出品された作品たちは、プロパガンダの寄せ集めでアートとは呼べないものが多くつまらない!と主張する内容だった。
……確かに……???
私はトリエンナーレ自体が初めてだったので、目に入るもの全てが新鮮だったけれど、ずっと見続けている人にとってはそう感じるのかも?
基本的に与えられた情報をすんなり受け入れてしまう性質があるので、今回のトリエンナーレについて考えるために、ネットに溢れている批判的な意見についても軽く目を通してみた。
正直、今の時点では考えたいことが多過ぎてまとめられる気がしないので、気が向いたら次の投稿もトリエンナーレのことについて書きたい。
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
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