めざましい、春【日記】

「期間限定のメニューが出てる！」

いつも通りがかるスターバックスの前。ほんのり桜色のドリンクに目が留まる。まだまだ肌寒いこの空気からは想像がつかない、小さな春を発見した。

春を感じさせる季節ものは、見るものの心をぽっとあたためてくれる。

いいなあ…

そういえば、ほんの少し前はバレンタイン仕様のチョコレートドリンクだったはず。いつのまに終わったのだろう。どうやら飲みそびれたようだ。

と、忘れていた「期間限定」が突然恋しくなる。

もし試すことができていたとしても、美味しかったなあ！と余韻を楽しむうちに新たな商品のサイクルがやってくる。そうなれば、もう一度飲んでみたかったなあ…と名残惜しくなっていたはず。

２週間に一度、「限定」が変わる。
目のまわるこのスピードに、いつも置いてけぼりになる。

あわただしく行き交う人々。

するするとかき分けて進んでいく人のなかに、あの桜色を見つける。片手に握りしめ、器用に口へと運んでいる。

見ているこちらが不安に感じるほど、不安定で危なっかしい。

でも、こうしてでも「期間限定」を味わえたら…と、そのストイックな姿勢がほんの少し羨ましくなる。

人混みに紛れ、流され、ふと足元に目がいく。

マンホールのようなものがひとつふたつみっつ。といくつも続いている。

その丸いものをじぃっと見つめる。

「あ、桜だ…」

ほんのりと色づく美しさとは程遠い、
無機質な桜のモチーフ。

上ばかりみていたら通り過ぎてしまうような、小さな小さな桜の集合体。

おそらく「期間限定」ではない。
きっと、昨日も今日も明日も。ずっとここにあり続けるもの。

見つける時期によって、
「春が待ち遠しいな」
「もうすぐ春だな」「春だ！」などと

いろんな瞬間を感じることができる。

”めまぐるしさ”を追いかける動機はきっと

「せっかくだから」

という気持ちがあるから。

取りこぼしてしまっては勿体無い。
季節のものをたんと味わう。旬を感じる。

春らしいものを、
「期間限定」のものを、もっと。

あれもこれもと気持ちが高揚しているときは、

すでにある”めざましさ”を見落とさないよう
ときには立ち止まって、

小さな春を大切にしていきたい。

🌸