石鹸の匂い
私は子供の頃、おじいちゃんとおばあちゃんと寝ていた
当時、実家は町工場をしており、おじいちゃんはコテコテの職人さん
戦後の焼け野原で、一から町工場を作った
私は、おじいちゃんとおばあちゃんが大好きだった
職人のおじいちゃんとちょっと怖いおばあちゃん
昔の職人のおじいちゃん
口数は少ない
技術はある
仕事はキチンとする
反面
酒に、タバコに、ギャンブルに、なんでもあり
禁煙なんて言葉は当時にはない
全く禁煙が関係ないから家中煙だらけ
おじいちゃんに、おばあちゃん、とうさん、職人さん
みんなタバコを吸っていた
お金もその日暮らしの感覚なのだ
あるときはあるが、ないときは全くない
おばあちゃんが、お金で苦労していたと、後から母さんに聞いたことがある
戦後から高度成長期はみんなそうだったんだろうか?
当時の生活については私は、全く知らない
昔気質の職人であるおじいちゃんは、毎日、お酒を飲んでいた
いや、お酒飲むというよりも、飲まれていた方が正解かもしれない
ほろ酔いではなく、限りなく泥酔に近い飲み方だった
お酒飲んで、暴れたこともあるし、包丁を振り回したこともあった
怖いと思った時もあった
そんなおじいちゃんなのだが、優しい思い出もある
私は体が弱く、小学生低学年の頃は、毎月熱を出して学校を休んでいた
いつも、いつも、熱を出して水枕で唸っている私を
おじいちゃんは、仕事終わりに必ず見にきてくれて、
仕事での油を落とすための工場用の特殊な石鹸で洗った手で
私の額に手をあてる
『大丈夫か?』
『まだ、熱いな?』
『休めよ』
やはり、ここでも口数は少ない
おじいちゃんの優しさと工場用の特殊な石鹸で洗った手の匂い
今でも、忘れる事はない
私が大きくなってもおじいちゃんは基本的に変わらなかった
酔っ払って、帰れなくなり、お金もないから迎えに来てくれ
と言われて、迎えに行ったこともあった
『何やってんだよ〜』と当時は情けなくなったけれど
怖い思い出も、嫌な思い出もあったが
おじいちゃんの優しい石鹸で洗った手の匂いを思い出すと
不思議と許してしまう私がいる
優しい記憶の上書きだ
今回このようなnoteを書くきっかけになった
noteクリエーターさんはこちらです
『篭田 雪江さん』です
忘れたわけではないのだけれど、忘れかけていた、おじいちゃんとの思い出
思い出させてくれて、ありがとう。
あなたのお陰で、私はおじいちゃんとの思い出を書くことが出来ました。
折を見て、怖いおばあちゃんの話も書きたいと思います。
実際は怖くなく優しいおばあちゃんなの話なのですが・・・
これはまた今度の話
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