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千載一遇

昔から古代遺跡とかお城に興味があった

その遺跡を見に行くチャンスが一度だけあった

それは

新婚旅行

この旅行だけは、おおっぴらに休む事が出来た

堂々と旅行に行けるぞ!

当時の私は思った

「これは、千載一遇のチャンスだ」

今しかないでしょ❗️

当時は、まだインターネットなんて無い時代なので

どこへ行きたいのか彼女には言わずに

片っ端から、旅行カタログを集めた

旅行先の候補は、マチュピチュとエジプト

マチュピチュは前から行きたいと思っていた

語学学校の先生がマチュピチュに行った時の写真を

見せてもらった時に

あまりに幻想的で、風景も綺麗で私は一瞬で虜になった

マチュピチュと同様に行きたいと思っていたのが

エジプトだ

子供頃からピラミッドに凄く興味があった

以来、写真を見る度に

いつかは行きたいと思っていた

出来ればどちらも行きたい

が、それは欲張りというもの

ここは、エジプト一択だった


彼女と新婚旅行の話をしていると自然に

ボクシングのジャブのように

行きたい気持ちを込めて、どんどん喋っていった

「エジプトって良いよね?」

「行きたくない?」

「ナイル川のクルーズって素敵じゃない?」

普通の旅行とは違う

新婚旅行という言葉は魔法だ

歴史には全く興味がない彼女

エジプトもマチュピチュも全く響かない筈なのに

キチンと聞いているではないか

「おお〜マジか?」

「これは、もうひと押しで行けるかも?」

カタログを見ながら、微笑む彼女

これは行けるぞ❗️と思った瞬間

「私はパスだね」

「え❗️」

「だって、興味ないし、旅行代金高いし」

「え〜だって、楽しそうに見てたじゃん?」

「いや、楽しそうに喋っているから邪魔しないで聞こうかなと」

「そうなの?」

「や、優しいね・・・」

「新婚旅行だしね、どういうところに行きたいのかな?って」

「そしたら、エジプトに、マチュピチュって」

「私が行く訳ないじゃん」

「だ、だよね」

甘かった。


新婚旅行という魔法の言葉に魔法をかけられたのは

私だったのだ

一体何だったんだろう?

あの行けるぞ❗️って期待は・・・

エジプト、マチュピチュのカタログを用意した様に

今度は彼女がドンと机の上に置いたカタログを見た

ハワイ、オーストラリア、ヨーロッパ等

そこには、私が見たい古代遺跡は無かった

残念と思いながら

パラパラとカタログを見ながら、ふと彼女を見た

とても楽しそうに、カタログを見ている彼女を見た

エジプトも、マチュピチュも

【いつか】行ければ良いかな?

という気持ちになった

「まぁ〜いっか」


あれから何十年も経ち、あの時思った【いつか】は

まだ来ていない

それなりの年になって思うことは

ずっと待っている【いつか】は多分こないのだろう

あきらめ感はあるけれども

日本で開催される

エジプト展、マチュピチュ展に毎回妻と行っている

今でも、エジプトとマチュピチュに

行きたいアピールを忘れないのだ

どんなに妻からのカウンターをもらってダウンしても

矢吹丈のように立ち上がるんだ!

最後の最後まで

私は諦められないみたいだ

ただ注意なのは

真っ白に燃え尽きないようにしないとね


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