ハリガネムシは「寄生⇒洗脳で再び水へ帰る」
(写真一切無し)
道の駅「五城目」にて、建物を通り抜けると、チェーンソーアートと共に、小さな池がある。そこをふと覗いたときに、面白いものを見た。
最初は、水に流された紐なのだと思ったのだが、よくよく見ているうちに、それがくねくねと自ら動かしているのが分かった。その紐は、自力で水の中を泳いでいたのだ。
その名はずばり「ハリガネムシ」
私が見たのはベージュの色で、顔や模様なども何も見えない、本当にただの紐に見える虫だ。ミミズのように肉質でもないので、もはや気持ち悪いとも感じない。ただの紐で間違いない。
「ハリガネムシ」とは何かと調べてみた。「~ムシ」とつくけれど、実はそういう虫の名前ではない。ハリガネムシというのは、類線型動物の総称なのだという。
類線型動物とは、寄生する動物のことだ。私が見たハリガネムシの本名を検索してみたのだが、一向に出てこず。仕方がないので「ハリガネムシ」ということで通すことにする。
そもそも、ハリガネムシは虫というよりも、なんの生き物なんだ?というような不思議さを感じさせる。直径は1~3mmで細いし、ミミズのように体に節を持たない。胃や呼吸器官も無い。けど、生態系に何らかの関りがあることが分かっていたりして、謎であるからかなり興味深い。
興味深いと言えば、ハリガネムシは他の動物、中でも昆虫に寄生して生きるのだが、その生き方が凄まじいので説明しよう。
まず、ハリガネムシは水中で生活する生き物だ。卵から孵化したハリガネムシ幼虫はとても小さく、水の中をぷかぷか泳いでいる。ぷかぷかしているからこそ、そこへ登場したヤゴやオケラなどの肉食生物が、ハリガネムシ幼虫を食べる。
この時点で終了したと思うだろうが、これこそがハリガネムシの大人になる第一歩なのだ。
ハリガネムシを食べた肉食生物が、また地上で肉食昆虫に食べられる。有名な話では、カマキリが代表的らしい。「ハリガネムシ」と検索すると、必ずセットでカマキリが登場する。
無事、カマキリの腹に入ったハリガネムシは、その腹の中で休眠状態に入る。そのまま大人になってやるという魂胆だ。食後には何も感じていなかったカマキリだが、ハリガネムシが体に入り徐々に異変を来たしてくる。
カマキリは普通陸で生活をする昆虫だが、もしもそのカマキリが自ら水の中へ入って行くのを見かけたならば、ハリガネムシの仕業だ。ハリガネムシの成虫はカマキリの腹の中に居ながら、特別なタンパク質を出し、カマキリの遺伝子に語り掛ける。
「水に帰ろう」と。
帰るといっても、もちろん水辺は普通カマキリの帰る場所ではない。カマキリではなく、ハリガネムシの帰る場所であるという事で、カマキリはハリガネムシの洗脳を受けていることになる。ハリガネムシの意のままに動かされ、カマキリは水辺に近付き、そのまま着水。
水気を感じ取ったハリガネムシが、カマキリの腹からようやっと姿を出す。その間約3か月もの期間で、ハリガネムシは立派な成虫となっている。当然カマキリの方は、腹を破られた衝撃よりも、水の中で溺死。水中に戻ったハリガネムシは新たな卵を産む。
そういうサイクルで生きている。ハリガネムシの見た目は嫌いではないのだが、生きざまはすさまじく気持ちが悪い…。
とはいえ、今回私が水辺でハリガネムシを見かけたのは、成虫であった。ハリガネムシは一生のほとんどを虫の体内にいるのだから、水辺を泳ぐ成虫を見たということは、無事?また水辺に帰って来れたということだろう。「おかえり」と声をかけてやれば良かっただろうか。
そういえば、人間に寄生することは無いらしいので安心して良い。