温泉に入った後のような高揚感。冒険ファンタジー「映画TANG」(映画タング)の感想
「大人にこそ観て欲しい映画」と主演のニノが言っていた映画タング、観てきました。とてもわかりやすいお話で、タングが可愛いし、映像もキレイ。タングと健(二宮和也)に共感しながら、ワクワクハラハラきゅんとする映画です。
親子で観たい冒険ファンタジー
この映画は、妻に家を追い出されたワケあり無職の健(二宮和也)と健の家に迷い込んだポンコツロボットTANG(タング)の物語。
原作は、ベルリン国際映画祭で「映画化したい一冊」に選ばれた「ロボット・イン・ザ・ガーデン」で劇団四季で舞台化もされています。
ちなみにこの映画、親子で家族で。子どもと観れるようにわかりやすく作られていますので、頭の硬い大人やひねくれた人、揚げ足取りたい人には向いていません。(私の個人的見解です)
この映画の見どころ
・タングがとにかくかわいい
・ダメ男から復活までの健の変化
・白組が手がけた素晴らしいCG
・出演者の演技力
見終わった後の心の温かさ。健のようなキレイな涙が流れていると思います。
「とにかくタングがかわいい!」ということ、話がわかりやすく長くないので、小学校低学年のコでも最後まで見ることができます。
大人も子どももメロメロにするタング
この映画の具体的な感想は大体2つに分かれます。
「とにかくタングがかわいい」
「二宮和也と満島ひかりの演技が素晴らしい」
ポンコツロボット「タング」は、まるで幼児のような無邪気で純粋無垢なかわいらしさ。「私って母性が少ない」と思ってる人でも、「母性なんか知らん」という人でも思わず愛しくてメロメロになっちゃうタング。
原作のタングはもう少し違う感じなのですが、子どもでも観られるように、とにかくかわいらしいタングを追求して作られたそうです。その原案はなんと100通り。細部までこだわり抜かれ、計算されて作られてるからこそ、誰もが「かわいい!」とメロメロになってしまうんでしょうね。動きまでかわいいタングですから、メイキングなんかを観てるとこれがどうしてあんなに愛らしい動きになるんだろう?と不思議に思います。
そしてなんとタングに命を吹き込んでいるのは、主演の二宮和也さん。ご本人からの提案でモーションキャプチャーをつけて、タングを動かし、セリフもタングとして吹き込んだとか。
二宮さんは実は声のお仕事もかなり評価をされていて、「鉄コン筋クリート」や「暗殺教室」などで制作関係者からかなり絶賛されています。
「ポンコツだけど愛らしいロボット」がナチュラルに見えるのは、「タングと健は合わせ鏡のようなもの」と二宮さんご本人が言っていて、だからこそ「タングも自分が演じたほうがいい」という提案をしたのではないかとプロデューサーも言っています。
「その役が実際に生きているかのようにナチュラルに演じる二宮さん」で有名ですが、今回のタングもその前の連続ドラマ「マイファミリー」でも、事前に役をプランニングして監督やプロデューサーに提案しているようなので、二宮さんの底知れぬ実力をもっともっと観てみたいですね。
「いつまで逃げてんのよ」健が無職のワケ
あることがキッカケで無職になってしまった健。それを見守る妻の絵美。
時間は進んでるけど時は止まっている。この二人の微妙な関係が主軸のストーリー。
それをポンコツロボットTANGがどう導いていくのか?
まさに、子はかすがい。あれ?!だから春日井健なの?!ってさすがに違うか(笑)
誰しもが抱えているトラウマやどうしても越えられない苦手なこと
その壁を越えられずふにゃふにゃと逃げている健。
ただ子どもも見られるようにしてるからなのか、そのダメ人間の健がこれまた愛らしいんですよね。穏やかで。
越えたいのに越えられないモノを抱え続けている健と
そんな健を信じたいけどこのままではダメだからどうにかしたいとモヤモヤする妻の絵美。
そんな二人をよそに、タングはどんどん成長していきます。
「きっと大丈夫」
温泉に入った後のような温かな気持ちになる映画です。
徹底的にこだわり抜かれた映像美
思いっきり綺麗なCGと、「えっ?!ここもCGだったの?!」という高い技術力のCG。本当にタングがドラえもんのようにナチュラルに動いているように見えるCGはお見事です。国内屈指のVFXプロダクション「白組」の圧倒的技術力。
タングが幼児のような存在としてリアルに動いているように見えるのは、一緒に旅をしている健を演じる二宮さんの演技力も高いと思いますが、純粋に観てる時にはいちいち「あれはCGだな」などとは思いませんでした。
原作では世界中を旅しているタングと健。映画も当初その予定だったそうなんですが、コロナの流行によって叶わず、近場で済んでいるのが残念なところ。世界中を旅しているリアル映像とCGの融合が観たかったですね。
それを持ってしても、感動する映像美。深圳の華やかな映像美もですが、サトウキビ畑を歩く健とタングがとてもキレイ。
出演者のファッションにもこだわりがあって、主人公、健の赤いジャケットのデニムのパンツは、永遠の少年ジェームス・ディーンの「理由なき反抗」のオマージュで、靴はエアジョーダン。他の出演者も映像にマッチするようにこだわって作られています。健の姉の桜子(市川実日子)の服もおしゃれです。
だからこれは是非、映画館で見た方がいいんですよ。
めちゃくちゃ映像がキレイです。
映像美とタングのかわいらしさで子どもも見ていられるんでしょうね。
また監督によるとさまざまな映画のオマージュが取り入れられてます。
先ほどの健の服装はもちろんですが、健とタングの関係は「レインマン」近未来だけどファンタジックさを出すために「グーニーズ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「シザーハンズ」のようなレトロ感、かまいたちは「ホームアローン」の泥棒コンビをそれぞれ意識されているそうです(パンフレットより)
そしてそして、美術監督の小島さんによると「父親から譲り受けた」健の家は「アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜」、馬場教授の研究室は「アイアンマン」や「エクス・マキナ」を参考にされているそうです。健の家のインテリアにも注目です。
そういった映画の見方も楽しいかも。
「この役は二宮さんしかいない」
原作をもとに企画を進めていくうちに、脚本家の金子ありささんも、監督もプロデューサーも「これは二宮さんしかいない!」と思ったそうです。
少年っぽさを保ちながら静かに葛藤するダメ男からの成長を描かせたら日本一、いや世界一?の二宮さん。
「この役は二宮さんしかいない」って浅田家!の時も言われてましたね。
二宮さんが引き受ける前から脚本は二宮さんに当て書きしていたとか。
だから最初のシーンがゲームなんですね(^^
無駄がなく存在感バツグンの出演者
この映画の良いところは、登場人物にムダがなくそれぞれのキャラがたっているところですよね。ほぼタングと健で、他の人は少ししか出ていないんですがw
にも関わらず、存在感があり映画を引き立たせます。
春日井健(二宮和也)
注目は、最初と最後の顔つきの違い。ふにゃふにゃダメ人間からタングと一緒にいることでしっかりとした顔つきになっていきます
春日井絵美(満島ひかり)
アメリカのドラマのような”仕事ができるキュートな女性”と感情をナチュラルに静かに表現するギャップがお見事です。健に言えてない秘密があるので、エンドロールが流れても席を立たないほうがいいですよ。
大槻 凛(奈緒)
とってもキュートに物語を盛り上げてました。雰囲気から服のコーデからとてもキュート。原作だと健とロマンスがあったみたいなので、そこは是非とも見たかったですねぇ。もう少し健と凛のやりとりを見たかったなー。
林原 信二(京本大我)
私生活リアルにナルシストでしょ?!と思わせるぐらいナチュラルなナルシストで、お父様を彷彿とさせる(無意識?)ナルシストぶりにクスクスと笑わせてもらいました。タングが「ケーン!ナルシストぉー!」というところがお気に入りです。
小出 光夫・大釜 仁(かまいたち)
映画タングにめちゃくちゃハマってた。特に濱家さんの演技がスゴい上手かった気がする!ホームアローンの泥棒を彷彿とさせる感じがぴったりフィットしてて、ここで子どもも大人も見やすくなってるんじゃないかなと思います。
馬場 昌彦(武田鉄矢)
武田鉄矢はやっぱりすごかった。表情だけでその場の空気をガラッと変えてしまうんですよ。
子どもに見やすい映画づくりをされているのでこまかーいところを見るとツッコみたくなる人の気持ちもわかります。ニノでさえ「あそこで血が流れないのスゴい」とか言ってたし(笑)
でもそんなの気にならないくらいタングと健が愛らしくついつい応援してしまう。
暖かな高揚感をもう一度味わいたいとおかわりタングをしてしまう。
とても素敵な映画でした。観てよかった。
情報
映画タングオフィシャルサイト
原作:ロボット・イン・ザ・ガーデン
二宮和也作品
浅田家!
マイファミリー
鉄コン筋クリート
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