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ヨーの読書記録

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ジャンル問わず、さまざまな本の読書記録です。
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読書記録『裏庭』1

読書記録『裏庭』1

※当記事はネタバレを含みます。ご注意ください。

梨木香歩『裏庭』を再読した。

主人公の照美は、小学生の女の子だ。「純」という名の双子の弟がいたが、弟は6年前に亡くなってしまった。レストランを営む両親は忙しく、家族団らんの時間はあまりない。照美の心のよりどころとなっているのは、友達の綾子の家の、「まっすぐ自分に向かって呼びかけてくれている感じがする(『裏庭』 梨木香歩 新潮文庫 32頁)」おじい

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読書記録「ルポイチエフ 福島第一原発レベル7の現場」

読書記録「ルポイチエフ 福島第一原発レベル7の現場」

2021年8月現在、日本が目下直面している危機はCOVID-19の感染拡大だ。少なくない日本人の注目が、COVID-19に向けられている。

しかし、日本の危機はそれだけではない。2011年3月に起きた福島第一原子力発電所事故は、まだ収束していない。

「ルポイチエフ 福島第一原発レベル7の現場」は、ジャーナリストの布施祐仁(ふせ ゆうじん)氏が、2011年から2012年にかけて、原発の関係者や地

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読書記録「家守綺譚」「冬虫夏草」

読書記録「家守綺譚」「冬虫夏草」

梨木香歩「家守綺譚」「冬虫夏草」を読んだ。

二作は連続した物語で、「家守綺譚」が初巻、「冬虫夏草」が二巻となっている。

まず感嘆したのは、その文章の技巧だ。二作ともに、現代日本語をもってして上代の日記文学を彷彿とさせるような古典調の文体を実現しており、あっと驚かんばかりの趣の深さだ。とくに「家守綺譚」の「木槿」の章の冒頭がすさまじい。声に出して読みたい日本語として日本中に知らしめたいくらいだ。

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