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living and working ( 2 )

マリヤとわたしは建設中の家の横を
耕して小さなガーデンを作った。
石がごろごろしていて土も砂っぽいので
野菜というよりひとまずベリー用に整える。

もともとは奥に見えるような
森だったところを拓いた土地なので
耕すだけでも一苦労...


養分たっぷりの土とコンポストは、
建設場から歩いてすぐのところで
自然有機農業を営んでいるマリヤの父親から。
ガーデンに植えるイチゴの苗も彼の畑から。
イチゴは一度植えてそれなりに手入れをすれば
四.五年は毎年実をつけてくれるんだって。
日本ではイチゴは高級なイメージだったけど
こちらではイチゴやブルーベリーの類が
とっても身近で気取っていない(笑)

農場の名前は、"Pikkunuppu"
フィンランド語で"小さな花つぼみ"
http://pikkunuppu.fi/en/


マリヤの父親ピルタもとても素敵なひと。
彼の周りにはいつもゆったりと穏やかで
平和な空気が流れているような気がする。

彼はオランダ出身で二十代の頃五年ほどかけて
世界を旅した末にフィンランドで出会った
アメリカ人の奥さんとフィンランドに
移り住むことを決め、土地を探し
自然有機農場を一から作り上げた。
七十を過ぎたいまもばりばり現役で
世界中からやってきた二十代のWWOOFer達と
いつも楽しそうに幸せそうに働いている。

彼の農場もお家もすぐ側なので
一緒に食事をすることも
この日は孫娘の誕生日パーティー


彼の農地は本当に美しく、空気が澄んでいて、
穏やかな時間が流れている。
初めて足を踏み入れたとき、
ものすごく神聖な場所に来たような、
空気がふわりと変わるような感覚があった。
真っ黒の土はふわふわで柔らかくて
野菜たちは伸び伸びと育っている。
ひとがきちんと心を込めて作り上げて
手を入れてきたことがよく分かる、そんな場所。

ジャガイモやニンジン、タマネギなどを中心に
三十種ほどの野菜を育て収穫し、毎週末に
近くの町のマーケットで自ら販売する。
貯蔵できる野菜は自然の貯蔵庫で保存し、
冬にも定期的に顧客に販売をする。
お店に卸すことはほとんどないらしい。

森の中に突然現れる農場
真っ黒な土と青々とした野菜たち


野菜を自分の手で育て、自ら販売し、
代金を受け取り、手渡す。
シンプルだけど、時間も手間もかかる。
効率的じゃないと言われたり、
委託販売など他の方法を提案されることも
幾度となくあったようだけど、
彼はこのやり方を貫いてきた。

彼の義理の息子にあたるミックは、
彼に出会えたこと、彼の考え方に
触れられたことは自分の人生において
大きな影響があったと話していた。
彼はビジネスパーソンではないから、
彼のやり方は賢いやり方ではないかもしれない。
彼はただただ、心から彼の農地と野菜たちを
愛していて、その仕事に誇りを持っている。
それって絶対に間違いじゃない、
そして一番正しい、と。

夏の間は朝7時ごろから
夜の9時ごろまで作業をする
こうやって書くとものすごく
ハードワーカーみたいだけど
彼はただ畑にいたいんだと言う


この三週間で彼に会ったのは五回ほどで、
たくさんのことを話したわけではないけれど、
わたしは彼のことが大好きになった。
彼は決して口数は多くないけれど、
じっくりと話を聞き、彼の経験や知識を
わたしたちに惜しみなく共有してくれる。
彼は愛の人なのだと思う。
自分や自分の暮らし、家族や周りの人たちを
愛していて、いつでも変わらない温かさがある。
ミックの言っていたことがよく分かった。
彼の愛のある、芯のある姿勢から、
周囲は多くを受け取り、きっとそれは
静かに確実に、伝わって広がってゆく。

彼の畑で採れたばかりのニンジンを齧る孫
彼の愛は、家族にも、野菜にも
そして遠い国から偶然訪れた
ヘルパーたちにも伝わってゆく


いつだって自分の選択や、生活、仕事、
作り上げたものにまっすぐな愛と
誇りを持っていたいなと思う。
上手くいかないことも納得できないことも
きっとたくさんあるのだろうけど、
自分が本当に大事にしたいことや
見たい景色は変わらないはずだ。


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