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welcome back to our home


ともだちへの手紙 03


外見はワイルド中身は超紳士なオスカー へ


元気にしてるかな、ホイスコーレの仲間たちとのシェアハウス生活はどう?楽しそうで羨ましいなと思っているよ。


ホイスコーレを終えた友人の何人かは
一緒に家を借りてシェアしたりもしている
古い家をみんなで少しずつ修繕したり
自分たちの庭をつくったり
本当にすごい、見習わなくちゃ


はじめてホイスコーレでオスカーに会ったとき、背が高くて褐色の肌に大きな瞳、加えてピアスにタトゥーのオスカーに、なんだかなにからなにまで自分とはちがうような気がして、ちょっと遠い存在に感じていたけど、実はすごくおだやかでやさしくてスーパージェントルマン。
というのは、ホイスコーレが始まってだいぶ経ってから気付いたのだけど。


バーコミティーが運営する
パーティーのバーカウンター
可愛いカップル、イーダ&オスカー


いつだったかな、ある週末の夜、寝る前にあったかいお茶を取りにダイニングに向かうと、たくさん荷物を持ったオスカーがいて「 大荷物だねえ 」って声をかけたら「 今週末は家族に会いに出かけてたんだ 」と。「I'm back home now」と手を広げてくるから、お?とハグしながら、『 あ、そうか、いまここはわたしたちにとっての"home"なんだな 』と思ったんだよね、改めて。

それからまた数週間後、今度はわたしが週末出かけていて、帰ってきたら玄関の喫煙所にオスカーがいた。前もこんなことあったなあって、オスカーの真似をして「 I'm back 」って手を挙げたら、オスカーがわざわざタバコの火を消して立ち上がって「 Welcome back to our home 」ってハグしてくれた。どこ行ってたのー、学校ではなにしたのー、みたいな話を少しして別れたんだけど、あの瞬間をものすごくよく覚えてる。


うれしいときもたのしいときも
かなしいときもいつでも
みんなでたくさんハグをした


あのときオスカーがなんでもないみたいに、わたしにくれた言葉とハグのおかげで、わたしは「おかえり」って言ってくれる仲間の待つ" 家 "があるんだなあ、" 帰って "きたんだなあと思えた。

そんな光景はホイスコーレのあちらこちらにあって、彼らにとってはきっとそんなに特別なことじゃないのかもしれない。それがまた嬉しかった。特別じゃない仲間になれたことが、なんだかすごくいいなあと思えた。

最初に少し距離を感じていたからこそ、日々のなかのちょっとしたあったかくてうれしい出来事が積み重なって、ただの友達ともまた違う、生活を共にする仲間みたいな、新しい関係を築けたことが、とても嬉しかった。


ぜーったいに忘れたくない
大事なひとたちと過ごした
大事な時間


オスカーにとってはなんてことない瞬間だったかもしれないけど、わたしにいろんな気付きをくれていたんだよね。ありがとうってもっとちゃんと言うべきだったなってちょっと後悔してる。それからオスカーがそこらで会うたびに「Hi, Saki !」って名前を呼んでくれるのも、すごく好きだった。本当はあの五ヶ月間のなかでもっといろんな話ができたらよかったなあ。好きな食べ物とか将来の夢とか、腕のタトゥーの意味とか、そういう他愛のないことも話してみたかった。


わちゃわちゃするひとたち
みーんなと同じようにいろんな
話ができたわけじゃないけど
たくさんのものを共有してきた


いつか、また会えたときはそんな話をしよう。
そのときにありがとうもちゃんと言うね。


それまでにもうすこし
デンマーク語勉強しておくね
さきより


・・・・・


この手紙が彼に届くことはあるだろうか。
うーん、いつか、届けられるといいな。
そりゃあもう、びっくりするだろうな。


いつもの風景
ホイスコーレのダイニング
ランチを待っている


こういうちょっとしたうれしいエピソードはオスカーに限らず、ホイスコーレで出会ったほぼ全員とある。生活を共にするっていうホイスコーレの特性のおかげで気付くことができる、ちょっとしたうれしい出来事とそこから生まれて育ってゆく関係。それこそがわたしがホイスコーレで手に入れた一番の大事なものだ。

ホイスコーレで過ごした五ヶ月間、たしかにあの場所はわたしたちの"家"だった。100人近い生徒や教師と寝食をともにし、遊ぶみたいに学んで、とにかく時間を共有した。そのおかげで単なる形や住所としての家じゃなく、ちゃんとそれぞれの居場所としての" 家 "になったんだと思う。


わたしのお気に入りteacher
ダンディ・ダニーちゃん
パパみたいだった


集団で過ごすことがあまり得意ではないわたしには、しんどいなあと思うことも少なくはなかった。だけど五ヶ月経ったとき、いよいよお別れだというときに、周りのみんなの顔を見渡して、ああこのひとたちはわたしにとって家族のような存在だったんだと思った。もちろん家族にしては大きすぎるのだけど、同じ場所と時間と思いを共有する、共同体のような。

お別れする実感が湧かないくらい、当たり前に一緒にいる存在になっていた。最初の数日間は顔も名前も全然覚えられなかったひとたちと、一日一日を経ていくなかで、小さな出来事からお互いを知っていく、それぞれの間に関係が生まれてく、そうやって確実に積み上げてきたものがあったんだと思えた。


わたしの大好きな笑顔が
こんなにちかくにある!
みんなを思い出すときは
それぞれの一番好きな顔
笑った顔が浮かんでくる


一年前にどきどきしながら飛び込んだ
デンマークのホイスコーレでの暮らし。
思い通りにいかないことも、思っていた以上に素敵なことも( もちろんそっちのほうがたくさん )、いろんなことがあった。

ホイスコーレとはなんだったんだろう、
わたしにとってどういう場所だったんだろう、
あれから一年経ったいま、よく考えている。


ホイスコーレの友達との写真のなかで
わたしも良い笑顔をしていると思う
「よかったねえ」って言いたくなる


いままでたくさんの選択肢の中で悩んで選んで、少しずつだけど前進してきた、と思う。

あのときあの選択をしていたら、していなかったら、なんていうことをたまに考えるのだけど、わたしの人生のなかに、あのホイスコーレで過ごした五ヶ月間を組み込んだことは、大正解だったと胸を張れる。

よくやったぞ、わたし。

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