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犬のしつけができない(東京都在住30代男性歌人の場合#10最終回)

コンビニで羊のチャームのギャルママが俺の名前を怒鳴りつけてる

自作短歌

10年ほど前、出張の札幌行きの航空チケットを飼っている犬にボロボロに噛みちぎられていたことがある。
翌朝出張で絶対に忘れてはいけなかったので、机の上に置いておいたことが仇となった。
奇跡的にQRコードの部分が残っていたので、ことなきを得たのだが、そのことを妻に話すと、「ちゃんとしつけした?」と言われた。

犬のしつけができない。

犬が決められた場所と違う場所でそそうをして、「だめ!」と言ってみるものの、そもそも決められた場所で排泄をするのは管理をする側が効率的に管理をするために作ったルールであり、犬からすれば関係ない話である。
さらにしつけがうまくいって、怒られた犬がおもねるような眼をしていると、パワハラで憔悴した部下に偉そうに接する上司のVRを付けているみたいで嫌な気分になる。
あと、無駄吠えがひどくて、マンションの管理会社から注意を受けたことがあったが、窓を閉めたら解決した。

妻はパワハラ気質なので、犬を叱り飛ばすが、犬の行動は変わらないので、お互い様である。
もちろん妻は俺のこともしつけようとしてくるが、こちらで家事を全部担うことで、妻は文句を言えなくなり、しつけの場面がなくなった(それでも理不尽な要求は常にあるが)。

しつけはしなければならないのだろうか。

自分の行動は必要なら変えるし、必要でないなら変えない。

しつけではない方法で解決するなら、それはそれでいい。

いや、犬なんだから、しつけろよ。
そういうことはわかっているが、どうもしつけというのがしっくりこない。
愛玩動物として買ってきて、愛でることで癒されようという奴に、怒ってしつけて、楽しいのか。
と、よくわからない屁理屈を誰にも披露することなく、文字通り屁をこきながら考えている。

犬に対してさえ、こんな調子なので、人間ならなおさら、しつけができない。
叱るべきときに叱れないので、後輩や部下からなめられっぱなしの人生である。

若いころは、そんなしつけができない自分が恥ずかしくて嫌だった。
自己啓発本を読みまくって、叱るポーズを実践していたこともあった。
うまくいったりいかなかったりだったが、結局、性に合わず、やめてしまった。

そして、歳を取ると、だんだん舐められることが少なくなったし、老いてきて感性が鈍くなってなめられていることが気にならなくなってきた。

相変わらず、自分の行動をごちゃごちゃ言われたくないので、家事は全部やっていて、妻を自由に行動させていたら、勝手に管理職になっていた。
昔叱ることのできなかった部下が偉くなって、当時のよしみで仕事を融通してくれる機会が増えた。

甘やかされ続けた犬は、もう13歳になる。
航空機のチケットを噛みちぎることはなくなったが、無駄吠えは相変わらずだ。

犬用の心臓の薬を飲みながら、今日も元気に見えない敵と格闘しているが、加齢にはあらがえず、ときどき吠えながら後ろに転倒してて愛らしくなっている様子を見ながら、自分も血圧の薬を飲んでいる。

俺も最近、段差のない道でよくつまづく。

ということで、こちらの連載もこれにて終了です。

前回のラーメン短歌日記同様、常にページビュー数がティーンエイジャーの年齢になっていて、「俺は俺の短歌もエッセイもめっちゃおもろいと思ってるから、大丈夫だよ、俺!」と俺の中のチアリーダー(おじさん)に応援させて、書き続けることができました。

文字通りのご静聴ありがとうございました。

第一歌集を完全無料公開中。

さらばだ!

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