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いい評って何だろう@銀狐(入谷)
1月から、塔の誌面で、永田淳さんの選歌欄評を担当させていただいている。
短歌の評は、これまでもnoteに書いていたので、その延長線上で考えていたのだが、いざSNSとは異なる読者層の方の目にも触れる塔の誌面に掲載されることを考えると、あんまり気楽に書いてもいかんな、と悩みながら書いている。
先日、入谷にあるバー『銀狐』で飲んでいた。
銀狐のマスターは、短歌21世紀の選者・副編集長の小川優子さん。
小川さんに「いい評ってどういうものなんでしょうね」と話したら、一つの答えとして、作者のパーソナルな情報や歌の背景となっている知識の付加により、歌の世界を広げることじゃないかと示唆をいただいた。
なるほど、確かに。
ただ、おじさん、社畜兼家畜で自由のない人生を送っているので、歌人の方のパーソナルな情報なんて持ち合わせていないわぴえん、と思っていたところ、今月(2025年2月)の塔の白石瑞紀さんによる逢坂みずきさんの歌集『昇華』の書評がどんぴしゃにおもしろかった。
まず冒頭から、白石さんと逢坂さんが、名前が「みずき」という同じ名前なので、「リトルみずき」「エルダーみずき」という関係性があると白石さんが勝手に思っているという、かなりクレイジーな説明に引き込まれる。
二人の親しい関係性を背景に、評の中では、逢坂さんの自己開示(呈示)についての歌人としての覚悟や歌から読み取れるパーソナルな部分の推測が一定の信頼感を持って語られる。
歌を引用した粋な終わり方を含め、この評は、開かれた評でありながら、白石さんから逢坂さんに宛てられた手紙のようにも思えてくる。
生きづらさにリスロマンティックと名が付いた 可愛いじゃん、リス肩にのせたい/逢坂みずき『昇華』
この歌を引用した評のタイトル「リスを肩に乗せて生きていく」というのも超いい。
評自体は、きちんと歌自体を評しているので、内輪ノリにはならずに、歌・歌集の世界が確かに広がっている。
あたしもこんな素敵な評を書きたいわという思いを胸に持ちながら、家と会社を息も絶え絶え往復しつつ、ときおり入谷で息継ぎする日々を送っております。
ということで、銀狐でお会いしたときは、あなたの好きな評のことを聞かせてください。