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これからの“まち”との関わり方を考える~シン・まちづくり業界のこれからと働き方~後編/micro development inc.【イベントレポート】
本記事は、まちづくり業界のこれからを考えるイベント「シン・まちづくり業界のこれからと働き方」のレポート後編です。後編では、まちづくり領域で新たな動きに挑戦する3社がテーマをもとに行ったクロストークを、micro development inc. 広報の花崎がお届けします!
各社の取り組みや想いについては、レポート前編でまとめているので、お読みでない方はそちらもぜひチェックしてくださると幸いです!
https://note.com/preview/nbc746c0439bd?prev_access_key=4dac30bf801979e4cd4ee2e4a3ce477b
クロストーク
クロストークでは、Q&A・投票アプリslidoを使って会場・オンライン参加者から寄せられたテーマに対して話し合いました。
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〇都市と地方の間の差分が価値になる。共存できる関係性を探っていくことが必要!
【質問】都市部と地方で求められるものが大きく異なるが、どちらにより緊急性や将来性を感じるか?もしくは根本的なテーマは同じか?
菊地さん:地方にこそクリエイティブさがあると思っています。公共R不動産の事業でも「誰がどうつかうか」は結構大事な点で、都市部の企業が地方にやってくることもあるし、地方の企業がやっていくこともある。そのどちらにも可能性を感じていて、両方あって良いと思います。中でも注目しているのが「ローカルディベロッパー」と呼ばれる、地方で活躍していくべき、地元との運命共同体のような企業。公共R不動産ではまだ手が着けられていませんが、地元の企業がまちづくりに貢献することで利益を上げられる、という仕組みをつくっていきたいです。
荒さん:資金の流れはHITOTOWA INC.でも意識していて、今の規模は小さくてもここを変えるとこの地方は良くなる!というところにお金を使えるようにしています。地方と都市との関係性の中でお互いを良くしていくのが大事だと思っていて、例えば、都市の暮らし方やビジネス、ライフスタイルを見直していかないと地方も衰退してしまいます。HITOTOWA INC.が取り組んでいるのは主に都市部の、経済合理性や人口の流動性が激しい中でのネイバーフッドデザイン。ネイバーフッドデザインの発展形がローカルディベロッパーだなと考えています。
福島さん:価値差分が価値になるけど、その「差分」はどこにあるのか。都市とローカルは二元論的に独立しているものではなく、両立して相互に関係性を持って存在しています。都市とローカル、両者の間の差分が価値になる中で、片方だけ見るのではなく両方見た上で、自分たちはどちらの立場で何をやっていくのか。複雑性がある中でぐるぐる考えるのが大事だと思っています。
まとめ:都市と地方、それぞれが抱える課題は少し違います。一方で、課題ばかりかというと、そうでもない。それぞれがもう一方に対して持つ違い=差分があるからこそ、提供できる価値があるのです。これからは、都市と地方でお互いが価値を提供しあって共存できる関係を考えていけると良いのではないでしょうか。
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〇組織のマネジメントでは、アイデンティティの共有を大事に。
【質問】色々な領域のメンバーが有機的につながりながら事業を進めていったり、組織ができていったりすると面白くなると思っている。新しく事業がはじまるプロセスってどうなっているのか。どういうチームを組んで運営に入っていっているのか。
荒さん:HITOTOWA INC.は正社員17名で、ネイバーフッドデザイン事業、スポーツ事業、調査研究事業に取り組んでいます。アイデンティティ的には、「マニアックだけど社会にとって大事なものを個人の想いで形にしていく」ことを大事にしています。
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〇求められる人材像は、スキル重視からマインド重視へ!
【質問】求められる人材像は?
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菊地さん:「優しい・誠実・面白がれる」が大事だなと思っています。まずは優しいこと。自分に対しても、人に対しても、優しくあれることはチームとして動く中で大事になります。また、公共R不動産では行政と民間との調整として入ることも多く、例えば民間がどう介入し、それによって市民の暮らしがどう良くなるのか、などの調整にあたって誠実に対応していくことが必要になります。あとは「公共空間をもっと楽しく」と掲げているので、新しい風景をつくっていくことを面白がれる人が公共R不動産に合っていると思います。
荒さん:組織の理念として「自律共創型」を掲げています。一般的には「自律分散型」と呼ばれる、アメーバ状・ティール型で合意形成が中央集権的でなく現場で意思決定ができるという組織のあり方もありますが、それだと「個人で頑張る」という感じが強いなと思い、「自律共創型」という造語をつくりました。個々人は自律的であって自分の人生の主役であるべきですが、仕事はひとりや一社だけではできないこともあるため、チームで頑張ろう、という意味を込めています。働き方についても、ガツガツ働くのも、しっかり休むのも、地域に入ったときには優しさも、しっかり稼ぐのも両立させていきたいです。
福島さん:スタートアップのCXOを見ていると、自分がこうありたいという視点を持っている人や、世の中の課題を解決したい公益性を見ている人もいて、それぞれに学ぶ姿勢とか成長したいと思う意思がある。儲かりそうな事業は自分の会社でやって欲しいと思っているけど、お金じゃない価値としてみんなで大事にしたいものとか、色々な色を重ねることで価値が変わるようなものとか、お金を稼ぎづらいようなことは、ADDReCの中で頑張ってもらえると良いなと思っています。
コーディネーター・守屋:重視するものがスキルからマインドに変わってきている感はありますね。反対にスキルだと、あたらしいまちづくりの領域をつくっているからこそ、色々な人の間での調整をする力を実践を通して磨いていけると良さそうですね!
まとめ:ここでのお話から出てきたのはいずれも、スキルというよりマインドを重視する考え方。仕事だけでなく、それぞれがどう生きていくのか、にも深く関わっている要素だなと感じました。
〇まちの解像度は、地元プレイヤーとの連携や複数地域を見ることで高まる!
【質問】色々な地域に入り込む事業をしている各社。それぞれの地域に常駐の人材を置くことは難しいと思うが、どれくらいのコミットメントで続けているのか。困っていることはあるか。
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菊地さん:公共R不動産では受託がベースになるので、常駐まで踏み込むプロジェクトはそんなにないです。地元のプレイヤーを見つけていく段階では、ローカルディベロッパーに会って輪を広げていくようにしていたり、各地のR不動産と組んで事業を進めていったりすると、一気に地域の解像度が上がります。
荒さん:拠点型、通い型、コンサル型でのコミットメントがあります。HITOTOWA INC.では、ひとりのメンバーが3~4つの地域を見ているのですが、それは、複数の地域を見ることで違いが分かったり、まちづくりは長いスパンで進んでいくため、成果が出るまでに時間がかかることや違うフェーズのところを見ることで人材育成にも役立つことがあったりするため、いくつかの地域に関わってもらうようにしています。3つの型の分け方は、社歴が浅いメンバーはまず現場に入り、実績を積んだ後、コンサル型に移行していくというようにしています。
福島さん:ADDReCは元々プロジェクトデザイン会社で、プロジェクトのコアの部分に入ってデザインし、組み立てていき、問題が発生したら対応し、その中で学んだノウハウを他のメンバーに共有していく、というようにしています。これで面白いのが、他の職能のデザイナーが地域に入っていって、プロジェクトデザインを実装していくこと。プロデュースしたものを仕組み化し、再現性を持って水平展開していくことでコンサルにつなげていきます。ローカルでは0から1を生み出し、得たノウハウは都市部で共有し、横展開していく。まちづくり業界の共通課題として知的財産や人材、プロジェクトを共有していった方が良くて、一社で固まってやるより、みんなでできるようになったら良いなと考えています。
まとめ:各社のコミットメントの度合いは、事業を行う地域や各社の状況に合わせて戦略的に調整していく、とのことでした。ひとつの地域だけで活動している訳ではない分、地元をよく知る人に共有してもらうことで地域の解像度を上げたり、反対に他の地域での活動で得た知見をその地域での取り組みに活かすなど、複数地域にまたがって活動している各社だからこその戦略を伺うことができました。
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〇地域の利害関係に対しては、地域のことをよく知り、外からの客観的な見方ができると良い!
【質問】地域のプレイヤーなど色々な利害関係の方々と関わる中で調整していくコツは?
菊地さん:地域に入っていく前に2つ意識していることがあります。1つ目は、その地域の持つポテンシャルはどんなものなのか、どういうビジョンを持っているのか、ということを把握した上で入っていくこと。2つ目は、地元のキーとなる人を見つけること。地方では誰から話が回るかでその後の展開が全然違ってくるため、地元のキーパーソンを見つけることは結構重要になります。
荒さん:全く同じで。ひととわ不動産では、その地域に住んでいるので半分住人、半分ビジネス、みたいな感じですが、ネイバーフッドデザイン事業で外部者として関わっていくには、まちに住んでいる人以上に知ろうとすること、まちのあるべき姿のもとで利害関係ではなく共創関係をつくって向き合っていくことが重要になります。分かっていただけない方も当然いますが、全員が同じことを考えている訳ではないので、僕はそれでも良いのかなと思っています。
福島さん:外からの視点で客観視しながら入っていくことが大事かなと思います。「この人が好き」とかの要素もあるけど、ADDReCの会社としては、客観的に見て入っていくのが地域にとっても価値を提供できるかと思っています。
守屋:自分の地元のまちづくりは難しいなと思っていて、何かやろうとしたときに親の顔が浮かぶとか、子どもがここを受け継ぐと思うと、とか、色々考えてしまう。「よそ者、若者、ばか者」と言われた時代もありますが、他人事で入った方が案外良い視点で地域を見ることができる、というのを実感しています。
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〇まちづくり業界のこれからは「助け、助けられ、輪を広げる」がキーワードに。
【質問】まちづくり事業をスケールするために大事にしようと思っていることは何?
菊地さん:最近読んだ『ケアしケアされ、生きていく』という本で、お互いに迷惑をかけても良いじゃん、ということが書かれていました。僕的には「自立」とは自分で生き抜いていく力だと思っていたのですが、その本では、「依存先を増やすこと」だと書かれてあり、誰かに助けられ、自分自身も誰かを助けることで生きていけば良い、という考え方でした。組織やまちでもそうだなと感じ、そうすることでまちも大きく、強くなっていくのだろうなと思います。
荒さん:「スケールする」という言葉を「全国展開や、世界に広げる」という意味で使うなら、ネイバーフッドデザインはあまり向いてないなと思っていて、それよりはローカルに根付いたものにしていきたいです。そのまちを見てもらうことで、他の地域でも真似してもらうというモデルで広がっていったら良いなと考えています。一方で、ひととわ不動産では、相続などにお金もかかるので、しっかりビジネスモデルを考えていかないといけない。ただ、経済合理性だけで戦うつもりもなくて、今までに無かった、これから必要になるものをつくれるようにしていきたいと思います。僕のスケールで言うと、まずは「いいね!」と応援してくれる人を増やしていくことかなと思います。
福島さん:まちづくり会社でお金を稼げるのは少ない。お金にならなくても時間や人を投資していって、0から1を生み出そうとしていると、投資したものが自己投資になって、お金じゃないもので返ってくることがあります。良い仕組みをつくっているものに対してお金が流れていき、まちづくり会社で良い仕事をしているなら、一緒にやろうよ、という話が出てくる。自分たちの周りでどんどん話が広がっていって、それがどこかで自分たちにまわってくることがあるのです。
まとめ:まちづくり業界のこれからについてお話ししてきたクロストークを締めくくる問い。これからのまちづくり業界では、「助け、助けられ、輪を広げる」が大事になってくるのだろう、と感じました。お話の中でもありましたが、多様な人との間での関係を継続的に調整し、プロジェクトコーディネートを進めていくことが求められそうです。
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クロージング
2時間にわたって開催したイベント「シン・まちづくり業界のこれからと働き方」。イベント終了後には、登壇企業と参加者を交えた交流タイムを設けました。登壇者のもとへ積極的にコミュニケーションを取りに行く参加者がたくさんいて、良い空気感でした!
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おわりに
建築・不動産の観点からまちづくり業界で活動する3社+コーディネーターのクロストークセッション×メンバー募集を掛け合わせたイベント「シン・まちづくり業界のこれからと働き方」。業界の中でも新しい活動に取り組む各社にお話ししていただきました。参加者の方々からご回答いただいたアンケート結果の一部をご共有します。
今地域でボランティアで、取り組んでいることが、ネイバーフッドデザインなんだとうれしく思うとともに、関連づけて不動産ビジネスに落とし込み具体化させていきたいと思いました。
地域のことは他の人がやるべきと言う考え方もあるかと思うのですが、地の人とも連携しながら、外からもちゃんと根付いて継続的にアプローチされている4社の視点から話を聞けたこと。またそれぞれビジネスモデルや関わり方・視点が異なっていることが興味深くとてもよかったです。
会場内の参加者同士の交流もできて良い時間になりました。ありがとうございました。
また、イベントの終盤では、「これからのまちづくりでは、これが大事なのではないか」というテーマで参加者の方々からご投稿いただきました。
人中心のコミュニティ作り/おせっかい人/熱意ある1人/結局、最後は人。人脈づくりですね。/人。泥臭さ。全体視点。
志・最終目標/当事者意識/まちづくりが長期計画になる上で、関係者が同じ方向性を見続けること/面白がれる心。/豊かな人生とは。 家族、友人だけでない関係値を育めるための場。
地域資源(大きくは人)をどのように活かすか。/地元の一番星のような周りを牽引する企業を育てること
求めるゴール設定のイメージと会話/「共有」 話にもありましたが、知恵や人やプロジェクトをどこかに集約せずに全体でシェアすること 別の業界で働いてますが、全体として発展していくのに、これが1番大事だと痛感してます。/異分野の人たちを巻き込んでいくこと/色んな立場の人やそれぞれ異なる得意なことを繋げていくこと
小さくはじめる→仕組みづくり/1つの拠点が変わることで風景が変わっていく/それぞれが特長を生かして取り組みながら、それらを横展開していこうとしていくこと。「点」の賑わいはこの10年くらいで出来てきた。あとは、この「点」を彩りのある「線」で結び、街全体を彩り豊かにすること、そして、これを全国に横展開することが大事。/マクロ(まち)とマクロ(ひと)のバランスと見せ方
一人の住人の関りシロを「イキイキ」を軸に広げていく/まちづくり系事業を事業としてスケールさせていくために必要なこと→資本主義の枠内でスケールを定義しない、新たな価値基準をつくること
今回のイベントでのお話から学んだことや、まちづくりとは別の領域の仕事とも共通することなど、参加者それぞれがこれからのまちづくりで大事なことを感じてくださいました。
人やマインドの重要さ、多様な関係者との間での連携・調整、小さく始めた実体験をもとにした仕組みの横展開、これからのまちづくりのテーマになりそうな新しい価値観など、色々な重要なキーワードが挙げられました。
〇まとめ
筆者花崎が今回のイベントを通して、まちづくり業界のこれからを考える上でヒントになりそうなポイントを2つ挙げて本レポートのまとめとしたいと思います。
1.これからの都市と地方は、今までよりもっと結びついていくのでは!
都市と地方の違い=差分は、お互いに提供できる価値になり、それぞれの課題を解消していく鍵になり得る。都市だけ、地方だけでまちづくりに取り組んでいくのではなく、地域を横断してそれぞれが結びついて協力し、価値を提供し合っていくことで、より良い社会をつくることができるのではないか、と感じました。
2.これからの人材は、マインドが合う企業とともに働けるようにすると良いのでは!
クロストークで印象的だったのが、求める人材を挙げていく流れでスキルよりもマインド重視のお話がほとんどだったこと。私自身4月から新社会人として働き始めてみて、一緒に働く上ではマインドが合うかどうかがかなり重要なんだろうな、と感じています。一緒に働く企業を見つける中で、お互いにマインドが合うかどうかを確認できる機会があれば良さそう、と感じました。
ご登壇いただいた企業の皆さま、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございます。引き続き、シン・まちづくり業界について考えていけたら嬉しいです!
〇おしらせ(リクルート情報)
今回ご登壇いただいたHITOTOWA INC. では、不動産人材を募集中とのこと。
興味を持ってくださった方は、下記リンクからご確認ください!
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text, photo, & edit:花崎寛太(micro development inc.)
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