mugwump「個人の力が動かすビジネス」滞在まとめ
ちょっと真面目な話からはじめちゃいますが、何よりも個人の表現を尊重したい私としては信じがたい話なんだけど、経済大国アメリカで「パーパス(企業の存在意義)をステークホルダー(従業員など、かかわる人との関係)の基盤に位置付けることが重要」と提言されたのが2022年の最近のことだったんです。こう述べたのは、世界最大の資産運用会社ブラックロックのCEOラリー・フィンク。2018年から彼はパーパスの重要性について話していたんですね。それで決定的に世界の方向性を変えたのがパンデミック。
従業員の思いというのは会社にとってバグみたいなものでもあったんでしょうけど、ネットの力か、資本主義の限界なのか。人間の関係性を変える提言がされたのは大きなことでした。
そんなことを思い出しながら、今回滞在した沼津では、個人の大切なものにこだわり、それで生きていってる人達に出会いました。その人達はとても力強く前向きで、沼津を愛していました。個人の行動と会社の方向性が謎にシンクロしてるときがありますよね。それぞれで好き勝手に動いていたはずなのに、なぜか向かう先は似ていたり。世界の経済王がいうことと沼津の町の現状。グローバルな視点からローカルをかんがえる。資本主義の終末ともいわれるこの時代に個人の力とは何か?その答えは複雑に考えちゃうけどビジネスってとってもシンプルだからなー。
今回はそんな話をつらつら書いてみようと思います。アーティストっぽくないかもしれないけど、戦争もビジネスになってる今、アートだけは違う、とは言えない気もするし。
中小規模店
大規模店は町の中心にあって、品ぞろえがよく、そこに行けば大抵のものはなんでもある。私としてはその状況にそろそろ飽きてきて。というのも、普段から人が多すぎる街に住んでいるから見慣れているというものもちろんあるんだけど、商品やセレクトされたものから関係性を感じることがどうしても少なく寂しいと思っていた。そしてさらにモノがありすぎて何も考えられなくなるので「アホ」になりそうになる危うさまでも感じる。
それに対し中小規模店は、個人の思いやセレクトが感じられて好きなんです。なんで作ったのかの話を聞けるのはもちろん、店を眺めると店主がなぜこれをセレクトしたのかを考えさせられる。その人の思想や哲学まで思いを巡らせられる。だから面白い。そこには品揃えな物が豊富である必要はない。
沼津で出会った中小規模店は、自分の好きなものをセレクトして発信していました。売れるようにしていた店もあるし、売れなくても良いと割り切っている店など色々立ち位置はあったんですが、印象的だったのはみんなつながっていたことでした。
それぞれがお互いを紹介しあい、その紹介をもとに私は町を巡りました。普段時間さえあれば私はずっと水彩画や漫画を描いているのですが、これがなかったら沼津に行ってもホテルでお絵描きしてるだけの1週間となったかもしれません。。。。
その7日間の記録はお時間のある時にでも是非下記からチェックしてください。
▷沼津のチャリ事情
旅先でのシェアライドはすごく助かります。沼津ではハローサイクルがシェアライドをやっていました。私は毎日使いました。沼津~三島周辺を毎日20キロほど。いろんな人が紹介してくれたので、そこにとにかく向かいました。原まで行く途中の海辺なんて最高だったなあ(帰省した今、背中がガチガチ。でも一切の後悔なし)
▷ジン蒸留所が沼津にもあるよ
日本にジン蒸留所はどんどんふえてきててうれしい。ジンは世界的にもボトルでデザイン勝負をしているから、どれもこれもかっこいいし、かわいい。沼津ジン名はLASY MASTER 。怠け者の仙人だと?かわいい。
▷中小商店を紹介してくれた一般社団法人いちご
沼津でお世話になった一般社団法人いちごさんの活動は子育て支援・まちづくり活動をテーマに、沼津の商店からおいしいものを集めてパッケージにして販売したり、沼津をテーマに人を繋いで販売しています。
是非通販を開始してほしい。キャロットケーキセットの販売。冷蔵商品なのでとても難しいそうだが、是非とも('ω')ノ
あ、最近ありがたいことに個人事業主である私に大企業さんがお仕事をくださるようになり、いろんな部署の話を聞く。大企業さんの悩みは部署間のつながりがない事で、それをどうすればいいかというご相談が多い。時間はかかっただろうけど沼津でみた中小規模店のつながりは中々面白い。大企業の部署のつながりってなんだか似てる感じがするので、結構そっくりそのまま置き換えれるんじゃないか?とこの旅中は何度も人間関係を創造することについて考えを巡らせました。
年収~億円を目指すなら別だけども、自分を自立させるためのお金であれば個人で頑張ればできる。というのも自分の腹の底から出てきた言葉は絶対にビジネスになるもんなんだ。ビジネスは人との関係性を築くことで、喉元から声出しているうちは声がかれたりして全然届かないだけで。
辞典にビジネスとは「情熱とか人情を切り捨てて利益を追求すること」と書かれる。経営者は大きい流れの中で1人の言葉に耳をかしていると船が沈むということだろう。ただ、腹から出る言葉を使っていると、なんだかこの説明には天動説のようにそう言うけどうまくかみ合わない。
ビジネスは情熱ないとできないんじゃないか?その情熱がつながりあって行くと、とても大きなパワーになるんじゃないか?
(従業員は情熱を自分の仕事に持つことを許されなかった人達だから、急に持てって言われても正直難しい。大企業の悩みをそっくりそのまま沼津式を。。。ってのはまだまだだろうな。)
おわりに
私はデジタル業界も長いので、大量のお金とマンパワーをもって最新技術を追うこともやってきたんだが、沼津のような個人の力で今ある生活を豊かにすることも大事だなあと改めて思いました。
東京に帰って来てから気が付きましたが、自分の鉛筆の線が柔らかくなっていました。というのも今まで変に力をこめすぎていたようで、鉛筆が折れることが多かったんですが。無駄に力を籠めない線は今にも消えそうなんだけども、だれかれかまわず向ける刃のような線ではなくなっていました。
もしかしたら沼津でチャリを毎日20キロほどこいで、疲れ切った体に力が入らなかっただけかもしれないけどもw
でもこの感覚を気が付けたんだから今回の滞在は自分にとって大きかったです。
アーツカウンシルしずおかさんのこの取り組みに感謝していると同時に。是非いろんな方に体験してもらいたいし、もう一度参加できるならしたいです。
うーん、アインシュタインは第4次世界大戦では石と槍で人間同士が戦うと言ってましたが、それもありそうな気がするな。
(直観過ぎるつぶやきで終わります。)
冒頭の資料を紹介。
2018年に世界最大の資産運用会社ブラックロックのCEOラリー・フィンクがパーパス(企業の存在意義)が重要と発表し、2019年には様々な企業がステークホルダー(株主をふくめ経営者・従業員・顧客・取引先のほか、金融機関、行政機関、各種団体など、企業のあらゆる利害関係者)も重要と提言。その後2022年のラリー・フィンクによる年頭書簡、いわゆるフィンク・レターによって「パーパスをステークホルダーとの関係の基盤に位置付けることが、長期的な成功の鍵だ」と言った。それまでアメリカの会社は株主だけが大事という考えがあったが、2020年のパンデミック以降、個人の存在意義もビジネスに重要と考えるようになった。
2021年の決算でうなぎのぼりだったsonyは企業のパーパスをクリエイティブとテックで世界を感動で満たすとし、Breaking barriers(障壁を打ち破る)のNIKEも好調。また無印良品は土着化をすすめて、地域に合わせて商品のラインナップを変更している。
参考資料「パーパス 「意義化」する経済とその先」岩嵜博論 (著), 佐々木康裕 (著), 井上慎平 (編集)
mugwump 山口典子