藤本ナオ子(naok fujimoto) 「藤枝リサーチ=藤枝市滞在前半の振り返り= (5日目)」
「マイクロ・アート・ワーケーション(MAW)旅日記」
▶️藤枝市滞在5日目(2023/09/29)
1)はじめに
藤枝市でのマイクロ・アート・ワーケーション(MAW)もそろそろ終盤。
これまで見聞きした事柄をより深く探るため、藤枝市滞在5日目は藤枝市立駅南図書館でリサーチ。
はじめて藤枝駅に降り立ったとき(2023/09/25)、駅前にこんなに立派な大きな図書館があるなんて便利でいいなあ〜と当初より気になっていた場所。もともと自分は『図書館』という場所が大好きなこともあり、時間が許す限り旅先でも必ず訪れるようにしている。本来、公共図書館とは誰にでも等しく拓かれている社会と接続した場所であり、それ故に、市井の人々が集う場所としてそこに住まう”まちの人々”に出会ったりその雰囲気を感じることができる。だからこそ、その土地の郷土の歴史や文化などのアーカイブを知るにはネット上での資料の閲覧だけではくやはり現場訪問が最適だ。
2)藤枝市立駅前南図書館と、駅前スーパーでの出来事…
今回、私は自身の宿泊施設(藤枝駅北口にある)に最も近い図書館である藤枝市立駅南図書館を利用することとした。藤枝滞在3日目の”まち歩き”の際に、藤枝街歩きの達人であるイラストレーターのtocoさんや、藤枝地域おこし協力隊の古澤さんに案内していただいた藤枝のまち並みや、神社や仏閣の歴史、そして、民話や伝承についてもっとリサーチしたかったからだ。できれば、藤枝市滞在中に関連の資料を借りることができたならばよかったのだが,いかんせん、私の立場や身分(静岡県外/藤枝市外の者)では規定上、図書カードの作成は難しく残念ながら貸し出しは不可であった。(一応、図書館の方に相談したのだが。)
なので、これは、私の個人的なアーツカウンシルしずおかさんへの勝手なリクエストなのだけれども、マイクロ・アート・ワーケーション(MAW)の”旅人”も訪問先の土地で図書館の書籍を借りたりできる一時的なシステムを組んでいただけたら嬉しいなあと考える次第だ。
私は今年7月、英国からアーティストが来日にするに伴い、公立美術館(金沢21世紀美術館)や都内のギャラリー(工房親CHIKA)にて対話型の展覧会イベント(哲学カフェ)のワークショップ(※)を開催しその土地どちにまつわる”コレクティブ・メモリー”、すなわち、街の記憶(パブリック・メモリー)、《共有される記憶》について考察する機会があったので、今回、幸いにもアーツカウンシルしずおか主催:マイクロ・アート・ワーケーション(MAW)にて滞在する藤枝市や、静岡における人々のパブリック・メモリーからなる《共有される記憶》についてもリサーチを深めたいと考えていた。
参考)※ 対話型イベント(哲学カフェ)
ゆえに、そんな期待もあって訪れた藤枝市立駅南図書館で先ず驚かされたことはその規模の大きさだった。当初、駅前のサテライト的な小規模図書館かな?と勝手に思い描いていたのだがその考えは覆されることとなる。館内の写真撮影はNGのため、以下の動画を見つけたので備忘録として埋め込むが、藤枝市子育て応援チャンネルが”子育てに優しいお店”の動画紹介で取り上げられているだけあって、白を基調とした館内は開放的で清潔感あふれ、椅子席、テーブル席、ソファー席などもあり図書館利用者の目的ごとの使い勝手がとてもよい。また、児童書スペースも(動画からもわかるように)もとても充実している。まさに、子育て世代に最適な居場所としての図書館と言えるのではないだろうか。
動画)『藤枝市立駅南図書館』by 藤枝市子育て応援チャンネル より
その他、印象的なことのひとつに館内のヤングアダルトコーナーの充実がある。そのせいか制服姿の中高生の姿が多い。昨今のポリコレや、ジェンダー、ハラスメント防止、将来の職業選択に関する書籍が目線上にずらりと並ぶ。更にライブラリアンの手書きのコメントなども添えられており、思わず導かれるように(未成年ではない)私も以下の新刊書籍『10代から知っておきたい女性を閉じ込める「ずるい言葉」』(著:森山至貴著_WAVE出版_2023年)を手にとってしまった。
その理由に、本書籍の目をひくデザインや、ライブラリアンの方の展示方法の妙もあったからこそとは思うが、実は宿泊先である藤枝駅南口にあるホテルから本図書館へ向かう途中に立ち寄った駅前のスーパーの店内で明らかに私に向けられたであろう)ある種の『言葉』が向けられたこともあり、その言葉がザワザワと心に残っていたからだ。前日9/29は静岡県は全国で最も高い気温をマークを記録しており10月を明日に控える本日も同様に厳しい暑さが続いてた。図書館に入る前に『藤枝の水』を買いに求めた駅前のスーパーでその出来事(私のなかの事件)は起こった。
https://www.city.fujieda.shizuoka.jp/soshiki/kankyosuido/josuido/gyomu/1/1445916293361.html
駅前のスーパーに立ち寄った頃合いは平日の昼下がりを少し過ぎたあたりでもあったため休憩スペースはサラリーマンやランチを楽しむマダムらでごった返しており満席。なので、他をあたろうとしたとき、ひとりのスーツ姿の男性が席を立ったので歩み寄ろうとした瞬間、なぜかその隣の独立したテーブル席に座っていたジャージ姿の小柄な白髪の男性がおもむろに席を立ち、いましがた空いたたテーブルに沢山のビニール袋類とともに移動してきたのだった。私は単純に、(席の移動をされたのかな?)と思ったのだが念の為にその男性に「こちらの席は空いていますか?」と尋ねた。すると、その男性はいきなりものすごい剣幕で「なに言ってんだっ、ここは俺の席だ。お前なんか殴ってやることもできるんだぞっ」と拳を振り上げ怒鳴りつけてきたのだ。
一瞬 アンタッチャブルな案件による身の危険を感じた私は即座にその場を離れたが、この間、周囲にいた人々は誰もこちらを見ようとはしなかった。幸いこの5日間、順調にMAW”旅人”生活を満喫していたので、この出来事によりみぞおちに何かささくれが出来たように感じた。そんな気分もあってか、ヤングアダルトコーナーのしつらえのよさに感激しつつ目に留まった本書籍との出会いはまさに一期一会だった。
本書の中で、女性を閉じ込めるずるい言葉の一例として、「(おまえが)女性でなければ殴っていたところだ。」といったセリフが紹介されていた。
そのセリフは先ほど、私がスーパーの休憩スペースで投げかけられた言葉とそっくりだった。こういう言葉を投げかけられると誰しも恐怖を感じてしまう、もしかしたら、自分に非が有るようにすら感じてしまう場合もかもしれない。けれども、殴られずにすんだのは自分が女性だったから結果的に殴ってこなかっ相手に感謝するひとは誰もいないわけで、だからこそ、この言葉に怯え恐怖を感じる必要はないと著者は語っている。また、実際にこの言葉を発する相手は最初から殴ろうとは考えておらず、単に『女のお前は(男の)自分に逆らうと痛い目をあわすぞ』と威嚇し牽制しているだけだと…。だからこそこの言葉のトリックさえわかれば、恐怖を抱くことなく必要は全くなく毅然に対処できるというのだ。
これまで道すがらに出会う方々に道を尋ねた際にも とても気持ちよく教えてくださったり、また、バスの降車時に小銭が見つからずオロオロしている私に対して(急がなくていいですよ)と優しく声をかけてくださるそんなバスの運転手さんが多かっただけに今回のこの急転直下な出来事はザワザワしていたのだった。しかし、こんなふうな書籍との出会いを藤枝市立駅南図書館でできたことは運命的でこころが軽くなっていった。その後、私は順調にライブラリアンの方に相談にのっていただきながら、藤枝に関する多数の資料を閲覧することができ藤枝にまつわる伝承や物語の見聞といった多くの収穫を得ることができた。そして、20時の閉館と同時に図書館を後にし再び駅前のスーパーに水やちょっとした食料を補給に出かけると、昼間のあの白髪の男性が他にはもう誰もいないがらんとした休憩スペースにひとりたたずんでいた。その姿は昼間みたときよりもずっと小さく見えた。
3)これからの”居場所”と、『ずるい言葉』の正体と…
藤枝市のWebには”子育てに優しい藤枝”といったスローガンが藤の花のイラストともに掲げられている。テレビをつければ、岸田首相が『我が国の少子化対策を最優先事項として解決する』と宣言する姿が連日映し出される。
いずれ誰しも年齢を重ねていく。けれども、その先の物語が安心安全であると謳う政策は残念ながらいまだに見たことがない。もしかしたら記憶に留まってっていないだけかもしれないけれど、”居場所とは一体何だろうか?”
年末に行われる東京山谷の『共同炊事』(ボランティアや当事者などの垣根なく一緒に作業をするということに重きがあるため『炊き出し』ではなく『共同炊事』の呼称がとられる。)でのボランティアに参加したときのことを思い出しながら(宿泊先のホテルに帰る道すがら)再びスーパーで見かけた男性のことを考えていた。結局のところ、紋切りタイプの「ずるい言葉」は誰かひとりの個人のオリジナルでつくりあげられたものではないはずで、その時代の教育だったり思想によって当時の為政者や権力者の都合のよいように成り立ってきたことを考えると、そんな『ずるい言葉』で武装攻撃しなければならない男性ももしかしたら被害者なのかもしれないのだ。(かといってハラスメントが許されるという意味ではないが…)
幸いにも今回、私は何の心配もなく藤枝市@静岡市にマイクロ・アート・ワーケーションMAWの旅人として訪れることができた。それは私に戻る家があるからこそとも言える。そして、藤枝滞在中の現在も(もしかしたら自宅の住空間よりも整理整頓が行き届いた快適な…という意味で)清潔なベッドと安心して夜を明かすことができる部屋が確保されている。
藤枝での滞在も残すところあと2日。
もし再びこの男性に出会うことができたなら今度は挨拶をしてみよう。
もしかしたら藤枝出身の方かもしれない。
残念ながらまだ一度も藤枝生まれ藤枝育ちの『えだっこ』(※)さんにはお会いしていないのだから…
※えだっことは?
藤枝市出身の作家 小川国夫氏(1927-2008)が藤枝生まれ・藤枝育ちの人のことを「枝っ子」と書いたことに由来。それにちなみ、合併し新しくなった藤枝市域で生まれ育ち郷土愛をもって生きる藤枝市民のことを「えだっこ」という。
4)そのほか
明日は再びホテルの移動日。
今日のホテルはこちら…
5)食べたものとか
以上
text by ©️naok fujimoto