『映画鑑賞 クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』
デヴィッド・クローネンバーグ監督、『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』を観てきた。前作の『マップ・トゥ・ザ・スターズ』から8年、御年80歳での新作ということになる。気合を入れて観に行ったが、正直なところストーリーは難解で、一度観ただけではすんなりとは理解できない。
しかし、映画の中に登場する臓器を取り出す解剖モジュールや、主人公の食事をサポートする椅子はクリーチャーのようなフォルムである。それらプロップは過去のクローネンバーグの作品、『戦慄の絆』や『イグジステンズ』を、ミサのような集会や町の雰囲気は『裸のランチ』のインターゾーンを彷彿とするから、その辺はクローネンバーグの映画が好きという人は楽しめると思う。
加速進化症候群により人間が体内に新たな臓器を生み出すという物語の設定は、過去にクローネンバーグが扱った寄生体やメタモルフォーゼといったテーマを受け継いでいるようだ。クローネンバーグは1970年に『クライム・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立』という同じタイトルのアングラ映画を撮っている。自身の作品をリメイクすることで過去のテーマと向き合おうとしたのか?
小説家を目指していたクローネンバーグが何故、映画作家に転身し実験映画、『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー/未来犯罪の確立』撮り始めたのか、その経緯が『クローネンバーグオン・クローネンバーグ』の中で触れられている。
『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』の物語が、近い未来であるから未来犯罪とは、現在は存在しないが近いうちに顕現するだろう犯罪を扱った予知夢のような話しなのだろう。