明治神宮外苑の銀杏並木の絵
都会の色づく木々に人々は何を期待するだろうか。赤い紅葉は都会の風景に必ずしもマッチしないかもしれない。都会にマッチするのは街路樹の黄色と鮮やかな金色だ。
東京の銀杏の葉が色づくのは、冬に近づく直前の11月下旬から12月上旬。東京や横浜など関東の都市は金色や黄色に染まる。
枝が大きく伸び、地面に散らばった黄色い葉が絨毯のように広がる。春先のお花見のように地面にシートを敷いて楽しむ人はいない。東京の平均気温は4月と11月であまり変わらない。違いは空の明るさと人々の季節感。人が家の中にいる秋と外出する春の違いだ。
11月から12月にかけて、紅葉の輝きがピークを迎える明治神宮外苑の銀杏並木は夜間ライトアップされる。単なる街路の装飾ではなく、巨大な芸術作品となる。
黄葉は春の桜のように木の下に座って楽しむものではない。しかし、明治神宮外苑では11月に「いちょうまつり」というイベントが開催されて屋台もたくさん出る。そこでホットワインを一杯買ってそれを飲みながら、たくさんの街路樹の下、まっすぐな道を歩くのは至福である。花見ではなく、黄葉鑑賞だ。少し身体があったまり、リラックスした気持ちで銀杏並木を楽める。(もちろん酔っ払っての交通妨害など人に迷惑を掛ける行為は絶対しないようにするのは言うまでもない。)
ちなみに、銀杏はヨーロッパにも分布している。17世紀に長崎から持ち帰えられた種がオランダやイギリスで栽培され開花したと言われている。銀杏の木は火に強い性質があるため、江戸時代には大量に植えられた。関東大震災でも銀杏が延焼を防いだことから、その後も 防災用の街路樹として広く使われるようになった。
日本全体では街路樹として57万本の銀杏が植えられているそうだ。ところで秋に落ちる銀杏の種子、ギンナンは悪臭の原因となることがある。このため銀杏を街路樹にする場合は、種子のない雄株のみを選抜して植えることがある。ギンナンは茶碗蒸しにして食べると美味しいのだが、道にあると少し臭う。
(この文は2020刊行の日本の事物紹介本Picture Book of Japanに英語で掲載した内容を加筆訂正したものです)
参考:https://picturejapan.com/gingko/