小説「リアルの私はどこにいる?」
こんばんは。Mickey★です。
今日は森先生の待望の新刊の「リアルの私はどこにいる?」をご紹介します。この作品は、WWシリーズの6作目となります。
シリーズモノではあるものの、森先生は何処から読んでも良いとおっしゃられているので、この本だけ読んでも十分面白いと思います。
ただし、他の作品もリンクしているので、それを読んだ方が2倍、3倍は楽しめると思います。
この本をオススメしたい人
1.ヒトの未来がどうなっていくのかを知りたい
2.SFが好きな人
3.既成概念を壊したい人
この本を書いた人
森博嗣先生は愛知県出身で、名古屋大学工学部建設学科大学院過程修了後、三重大学の助手となり、31歳に名古屋大学の助教授となります。
38歳の時に、お金を得るための手段として、大学の教員を勤めつつ、小説を執筆して投稿したところ、「すべてがFになる」が第1回メフィスト賞を受賞し、作家デビューしました。(作家デビュー後も10年近くは、大学の教員と作家の2足のわらじで働かれています)
因みに「すべてがFになる」が森先生のデビュー作ですが、一番最初に書いた作品は、「冷たい密室と博士たち」となります。
小説家になりたいと思ったわけではなく、「対価を得るためのビジネス」というスタンスを取られており、本は好きではないようですが、執筆のスピードがもの凄く早く、多い時は1年に20冊以上の本を出されていました。
今は趣味である鉄道模型やものづくりに没頭するため、1日に1時間程度の執筆活動となっています。最近では、本の完成は発売日の2年前(!)に終わっているようです。
森先生は、小説だけでなく、エッセイや写真集、新書等と活躍される領域が広く、多趣味で多彩な才能の持ち主です。
今でこそ、一般人でもブログが普及していますが、森先生は90年代には既にブログを始められており、そのブログをそのまま本として出版したりと、時代をだいぶ先取りした活動をされています。
小説家を目指している方は、印税とか映画化の収益等が赤裸々に書かれている「小説家という職業」は必見です。
森先生については、語り始めるとキリがないので、ここまでにしておきます(笑)
この話のあらすじ
思考実験こそ、最高の至福である
このお話の前提として、現実世界に人間以外にいろいろな存在がいます。
【現実世界に存在する人間と人間が作った存在】
1.人間(現実世界に生きる人で、体と意識を持った人)
2.仮想空間に移行した人間(体を捨てて、意識を持った人)
3.与えられたプログラム通りに動くロボット
4.人間に似た姿をして自律的な思考を持って行動するウォーカロン
5.現状を分析して未来をシミュレーションする人工知能
6.人工知能と違い固有のサーバを持たず、ネットワーク上で色々な場所に
分散して活動するトランスファ
上記だけでは、よく分からないと思うので、もっと知りたいという人はWシリーズ、WWシリーズを読んで理解を深めることをオススメします。
現実世界では、上記の6つの存在は別々のものとして、認識されていますが、これが全てバーチャル上の世界に存在する場合、それぞれの存在の差がないのではないかという仮説が展開されています。
冒頭で主人公のグアトが、200年前に存在した天才のマガタ・シキの共通思考について語る部分がありますが、バーチャル世界(仮想空間)に人間やウォーカロン等が移行することにより、体を使ったコミュニケーションを取らなくなることで「私(個人)」という概念自体が曖昧になり、自分自身が私という認識が薄れる可能性を示唆しています。
今は、人の数を増やし、人数が多い個人の力が強い時代(You tubeやTwitter等は個人が発信し、その思想に同調する人が多くいることにより、発信力が強い人や民意によって選ばれた政治家、民意で支持された芸能人等が影響力をもつ世界)ではあるものの、今、流行りつつあるDAO(分散型自律組織)は、トップが決めたものを実行する形でなく、個人の力が平等で投票権によって提案内容を採決してプロジェクトを遂行していくので、同じ考えを持つ人で構成されているという意味では、個人という概念がないという意味で近いように感じます。
ただし、DAOの運営自体は、投票権を持つ人による多数決によって決定されるため、この点が異なると思います。
もしかすると、個人の体の中で「脳」がすべての機能に影響していることから、脳が「神」だとしたら、その脳(神)による命令を受けて機能する臓器や神経等が「人」として位置づけられる関係性が、一番近い考えなのではないかと思います。
バーチャル世界で生まれた場合、リアルな世界の人たちの存在がなければ、個人という認識や意識を持つ機会がないため、自分の存在について疑問をもつことがないように思えます。
今回のお話では、人間がバーチャル世界に新たな仮想人間(過去の人間の記憶が埋め込まれたデジタル上の人間)を創造したことにより、バーチャル世界の存在価値が高まったことが語られています。
ほとんどの人が『自分は何のために生まれたのか?』『私という存在は何なのか?』を考えたことがあると思いますが、バーチャル世界で考えたこと等がそのまま相手に伝わるような世界では、それぞれの個人の考えがまるわかりになるので、同調と分裂を繰り返す形になるのかなと思われます。
小説の中では、解は出されておらず、『もうしばらく、考えていこう、と思う』という形で締めくくられており、読者に対して考える命題が残されています。
このような新しい思考や気づきが得られること、それを考える時間や精神的な余裕があることこそ、人間に与えられた最高の至福と感じます。
私もこの先にある人間の世界がどうなっていくのか、改めて考えていきたいと思います。
今回はの話は、哲学的なモノが多く、森先生の考えを正しく、自分がくみ取れたのか、それを他の人に分かる形でまとめられたのか、非常に不安な感じです。。。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
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