部活動顧問の断り方 3選
はじめに
教員の働き方改革を考えるとき、まず筆頭に挙げられるのが「部活動問題」です。これは、顧問となった教師が放課後や週末に部活指導をしなければならない状況で、休むことができないといった問題です。部活動顧問は、年度初めに管理職等から各教員に打診がいくようですが、これを断ることはできると思いますか?
ぼくは「断ることができる」と考えています。なぜか。その根拠をもとに、本記事では部活指導について深掘りしていきます。
超勤4項目
教育公務員は、原則として時間外勤務(残業)が発生しないようにする必要があります。その上で、時間外勤務を命ずる場合は以下の4項目に限るとしています。
整理すると、上記の項目以外で、時間外勤務を命じることはできないと法律で明示されているのです。そして見て分かるように、この中に「部活動」の文字はありません。
つまり、部活動顧問による残業命令を出すことは法律によって禁じられているということです。これは、非常に強力な根拠です。
管理職が、超勤4項目を理解した上で、かつ所属職員が部活顧問を断る意思があることを認知しながら、法律を逸脱する種類の残業を強いることは決してできません。
もしこれらの行為が行われたならば、職場における「パワハラ案件」となります。なので、前述したことを口頭で(もしくは紙面で)伝えましょう。もし難しい管理職であると感じるなら「もし部活動について強制するのなら、上記の根拠をもとに人事委員会に措置要請書を提出します」と伝えましょう。これで100%勝てます。
部活動顧問の断り方 3選
ここまで読むと明らかなように、現在の部活動顧問を教員が「嫌々」引き受けているという現状は、法律的にはかなりグレーなものなのです。もちろん、教員自身が引き受ける意思を持っていて、自主的にやる分にはなんら問題はありません。しかし、実質的に強制されているような現状がまだあるのは大問題です。
もし部活指導を断りたいと考えているのなら、上記のような法的根拠の下、100%断ることができます。管理職にそれを明確に伝えるだけです。では、具体的にその伝え方を以下にまとめます。
1.管理職(校長先生)に口頭で伝える
一番簡単な方法は、校長先生に口頭で伝えることです。
上記の法的根拠をもとに、端的に伝えるならこのように伝えたらよいという例を書いてみます。
ポイントは「時間外勤務を命じることはできない」「要望を受け入れられない場合は、外部機関に訴える用意がある」ということを伝えることです。
2.紙に書いて伝える
上記のように、法的根拠をもとにきちんと訴えれば部活顧問を拒否することはできますが、面と向かって管理職に言うのはかなり気が引けるというのが多くの先生のご意見だと思います。
そこで、紙面にして提出するという方法もおすすめです。以下のハナメガネ先生のnoteがとても参考になるので、ぜひご一読ください。
また、ぼくの運営する『定時退勤がちサロン』では、先生方の勤務校の実態に応じて文言を変えて使えるようなWordデータを用意しています。もしこうしたデータや資料が欲しいという先生は、ぼくのX(旧Twitter)アカウントにDMをください。こちらです。
3.部活動問題に取り組む団体に相談する
個人で動くこと自体が難しい場合は、部活動問題に取り組む団体に相談するのも非常におすすめです。『IRIS(アイリス)』や『PEACH(ピーチ)』といった団体を調べ、まずは相談してください。ぼくのXアカウントで連絡いただければ、代表の方とつなぐこともできますので、その際はぜひご連絡ください。
部活動時間が、勤務時間内だった場合
稀にですが、勤務時間内に部活指導が設定されている場合があります。この場合は、部活動が教育活動の一環として職務命令を出すことができると思われます。その場合、管理職から職務上の命令として部活動顧問をお願いされたら断るのは厳しいでしょう。
ただし、その場合においても押さえておくべきポイントが2つあります。
1.休憩時間にあたってないか
労働基準法では、8時間勤務なら60分、7時間45分勤務なら45分以上の休憩時間を確保しなければならないとしています。多くの学校は後者なので、勤務時間内の中で45分の休憩時間が設定されているはずです。
部活指導の時間が、この休憩時間にあたっていないかをまず確認しましょう。そして、時間が被っていたら、それを理由に時間をズラすよう訴えましょう。これは、労働者としては当然の権利であり、管理者としての義務でもあります。ここは絶対に譲るべきではありません。
休憩時間を確保した場合、部活指導の時間は極端に少なくなるはずです。おそらく、準備・片付けまで含めて30分も取れないのではないでしょうか。しかし、それでいいのなら引き受ければいいし、それでは時間が少ないのでというのなら、断ればいいのです。
2.部活動顧問の仕事により、他の業務に支障が出ないか
どうにか休憩時間を確保し、かつ部活指導の時間も確保できたとしましょう。しかし、放課後の業務はもちろん部活指導だけではありません。それどころか、学年会や職員会議のような集まりも入ってきますし、保護者対応も出てくるでしょう。そしてなにより、日々の授業の質を向上させるための教材研究等の時間確保は、第一に考えていくべきことです。それらの時間が十分に確保できないのに、部活指導を入れることは避けるべきと個人的には考えます。もし本記事をお読みの先生が、ぼくの考えに共感するのならこう言いましょう。
こう主張することにより、部活動顧問に割り当てることが難しくなるでしょう。ぜひ、この2つの視点は押さえておいてください。
部活動顧問を拒否した場合の「報復」が怖い…
顧問拒否については、上記のようなスタンスで主張すればほぼ100%断ることができます。なぜなら、法律上、それを強制することはできないからです。しかし、拒否することで「次年度の人事でへき地に飛ばされるのではないか」という心配をする方もいます。
まず結論を言えば、その可能性がないとは言いきれません。しかし、ぼくの周りには「顧問拒否をしたら報復人事をされた」という先生はいませんし、かなり稀なケースになるかと思います。また、そのような人事から身を守るためにできることとして『IRIS』や『PEACH』のような部活動問題に取り組んでいる団体の方に相談したり、その団体に所属したりすることもおすすめです。心配という先生は、ぜひそちらともつながってください。
さいごに
本来であれば、部活動顧問については年度当初に希望調査を行い、希望する先生のみに割り当てるというのが、法律に照らし合わせたときの正しい在り方だとぼくは考えています。しかし現状は、半ば強制的に部活動顧問の割り当てが行われているという場合も少なくありません。
しかし、繰り返しになりますが部活動顧問はあくまでも『任意』です。なので、やってもやらなくてもいいんです。少なくとも、法律上はそうなっています。その点を踏まえた上で、やりたくない場合はしっかりと断りましょう。本記事では、そのための手段を紹介しました。ぜひ、お役立てください。
今回のように、noteでは教員の働き方改革に関する記事を不定期で発信しています。また、X(旧Twitter)をはじめとした各種SNSでも、同様の情報発信を続けています。さらに、働き方改革の文脈でお困りの先生方をサポートするために『定時退勤がちサロン』というオンラインサロンを運営しています。こうした活動に興味がある方は、ぜひ下記のXアカウントからつながりましょう。よろしくお願いします。