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それは自分のためか、周りのためか

「これから注文して購入しますので、3ヶ月程度かかります」

初めて市立図書館の「図書リクエスト」システムを使ってみました。
いつ申請したかは忘れてしまったのですが、図書館の方から言われたこの言葉は覚えているので、きっと3月頃から待っていた小説です。


斜線堂有紀『ゴールデンタイムの消費期限』



図書館の本=公共の本。公共の本は、色んな人に丁寧に読まれてたとしても、少しずつくたびれていきます。そんな本を中心に読むことが多かったため、すごく綺麗な本を手に取ったこと、そして自分が1人目として読むことにテンションが上がりました。


<あらすじ>

主人公は、小学生で小説家デビューを果たした天才・綴喜(つづき)くん。ただ、中学生のときに発表した作品を最後に小説が書けなくなってしまいました。
書けない辛さを抱えながら過ごし、迎えた高校3年生の春。国から11日間の「レミントン・プロジェクト」に参加しないかと招待を受け、招待状に添えられていた言葉から、綴喜くんはプロジェクトへの参加を決意します。
プロジェクトに集まったメンバーは全員で6人。それぞれが各分野で活躍した若き元・天才たちでした。彼らが集められた理由。それは、人工知能「レミントン」とのセッションを通じて、再び第一線で活躍するため、再教育されるためでしたーー。


◆◇◆


元・天才であることを自分で自覚しながら、それでもなお活動を続けている登場人物たちには、それぞれに訳がありました。
その訳には複雑な事情も絡み合っているのですが、突き詰めると「好きで続けている」か「周りからの期待に応えたるために続けている」か、このどちらかであるように感じました。


周りからの期待に応えるために続けることは、相当しんどいです。
私は何も、人より特別秀でている才能はありません。ただ、両親の仕事の都合でドイツに4年ほど住んでいました。それだけで周りからは、「ドイツ語喋れるんだ!」「すごい!ドイツ語何か喋って」と言われたものですが、正直そんなにペラペラ話すことはできませんでした。

周りからの勝手な期待に応えられない状態は、幼心に非常に辛かったことを覚えています。できない自分を責めたくなる気持ち。この点は、元・天才たちの心情と、程度は違えど共感できる部分がありました。

私の場合、この勝手な期待に対して「じゃあ喋れるようになれば誰も文句は言わないだろ」と開き直り、ドイツ地域についても研究できる学部へ進学しました。

学生生活を通してドイツ語をしっかり習得。簡単な通訳のアルバイトができるレベルまで喋れるようになりました。
ただ、喋れるようになったら喋れるようになったで「みかちゃんは将来、海外に関わる仕事につくんだろうね~」と言われるようになりました。就職活動のときも、「みかちゃんはきっと、グローバルに活躍するね」と。

もうこれ以上、周りが求める自分になろうとするのはうんざりだ、と心底思いました。

自分の語学力を将来に生かすつもりは全くなかったので、「いや、グローバルには活躍しない」と返していました。「もったいな~」と言われても知りません。ドイツや海外に関わることは、別に仕事にしてまで続けたいことではないのです。


周りからの期待に応えることで成長すること、身につくものもありました。そうやって、時には流れに身を委ねたり、誰かの意見に乗っかったりすることも社会で生きていくためには必要です。が、結局は自分の人生なんだから生きたいように生きたいですね。
大学時代の自分を思い出した1冊でした。


◆◇◆


自分がリクエストして市に買ってもらった『ゴールデンタイムの消費期限』。たくさんの人に読んでもらって、くたびれた本の仲間入りをしてほしいな、と思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!



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