#4 Rechard Farnaby Nobodyes Gigge「誰のためでもないジーグ」

この作品の収蔵されている曲集についてまず説明します。「フィッツウィリアム・ヴァージナルブック」はルネッサンス末期から初期バロック時代のイギリスの鍵盤楽曲のまとまった一次資料として大変重要なものです。時代はエリザベス1世からジェームズ1世のころ(1562〜1612)。収蔵曲は298曲(297曲)です。
写譜者はフランシス・トレギアン。彼はアマチュアの演奏家であった。カトリック信仰を理由に投獄された時に自分のために編纂したとされる。その後、ヨハネ・ペプシュの物になり、1762年ペプシュ・ライブラリーの売却の際一緒に売られ、ヴィスコンティ・フィッツウィリアムが所有することとなる。その後は1816年にケンブリッジ大学図書館に収蔵されている。
作品年代は1610〜1625頃。
初出版は1899年、ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社。献呈はQueene Victoriaである。
初版の1巻によると「To Queene Victoria Empress of India」とある。これは初代インド皇帝になったVictoria(1819〜1901)の事で、プライドコプフの初版の第1巻には、決まり文句の、皇帝より許可を得て敬意を表し捧げます。献身的な下僕 編集者たちといった言葉が書かれています。作品の作曲年代からすればエリザベス一世(1533〜1603)の時代ですが、エリザベス一世がこの本を所有した事実はないということはわかっている。
もともとトレギアンは自分のために集めて写譜したのだから誰に献呈するつもりもなかったわけです。長い時間をかけて初めて1899年に出版されたので当時の皇帝に献呈というわけです。

作曲者リチャード・ファーナビー(1594〜? )は父ジャイルズ・ファーナビー(1560〜1640)と共にフィッツウィリアムバージナルブックに曲が収められています。全4曲でその中の「Nobodyes Gigge」はリュートヴァージョンも有ります。(Nobodyes Jigg)
家族で1600年頃リンカーン近くのAisthorpeに引っ越します。当時、リンカーンシャーの主要な地主の1人で政治家だった、ニコラス・サンダーソン(1562〜1631)の子供たちの音楽教育の仕事のためでした。1614年にはロンドンに戻っています。
父ジャイルズはフィッツウィリアムヴァージナルブックに52曲、他マドリガル、カンツォネッタ、詩篇などがある。
親子揃ってとても洒落た曲をたくさん残していて、モダンチェンバロでも十分面白いかと、レジスターを、工夫しつつ弾いていきます。

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