Joaquin Rodorigo Prelude y ritornello (1979)
コンサートの準備で毎日忙しくしていました。
今回はホワキン・ロドリーゴの以来、作曲されたスペイン現代チェンバロ音楽を弾きます。
スペインにはヘノベバ・ガルベスという名チェンバロ奏者がいます。先生は現代音楽にも深い関心を持って演奏をしていました。
現代チェンバロの世界はやはり演奏家あってのもので、その演奏に影響された作曲家が音楽を紡ぎ出します。
6月23日の現代スペインチェンバロコンサートでは
まず、ホワキン・ロドリゴ氏の ”Prelude et Ritornello" です。
1979年に作曲された。現在, 出版はEdiciones Joaquin Rodrigo.
初演は1985 年 10 月 18 日。 「II スペイン音楽週間 - 秋のフェスティバル 1985」において、マドリードのJuan de Villanueva, Museo del Prado(プラド美術館)でヘノベバ・ガルベス氏により行われた。(Ediciones Joaquin Rodrigo)
曲のプログラムノートは出版社のデータにはありません。
楽譜の中から拾いますと
これは表紙裏のガルベス氏の解説です。演奏上の注意点です。
8’、8’、4’、16’を持った現代の(モダン)チェンバロを対象とした作品であること、もしこれらの機能を持っていない楽器の場合は楽器に合わせて調整する必要である。(ヘノベバ・ガルベス)
おそらく曲中に書かれたレジスターはヘノベバ・ガルベス氏によるものでしょう。
プレリュードは前奏曲。リトルネッロはバロック時代のころに用いられた形式の一つで主題が何度も繰り返され、エピソードを交えながら構成されています。ロンド形式のような形です。
ガルベス氏が書き記すように、この曲ではモダンチェンバロのレジスターが書き込まれています。わずかですが、効果的に16フィートも使われています。が、今回はヒストリカルで演奏しますので、ご指示通り、ヒストリカルに合わせてレジスターを考えました。
「アランフェス協奏曲」で有名なホワキン・ロドリーゴ氏ですが、プロフィールを簡単に。
JOAQUÍN RODRIGO VIDRE
ホワキン・ロドリーゴ社のホームページによれば
初代 アランフェス庭園侯爵
1901年11月22日 バレンシアのサグント生まれ
1999年7月6日 マドリッド死去
です。
1902年生まれという記述もありますが、1901年が正解でしょう。
生誕90周年を迎えた1991年12月、フアン・カルロス1世によりアランフェス侯爵の称号を授与されました。
他に主な受賞歴は
1960 年代はフランス政府による芸術文化オフィシエ勲章。1963 年にはレジオンドヌール勲章シュヴァリエ勲章、最高位の勲章であるコマンドール勲章が授与されました。 1998年のデ・レトル。アストゥリアス王子芸術賞。
1927年頃、パリのエコール・ノルマル音楽学校に入学し、そこでマヌエル・デ・ファリャに出逢う。大きな支えとなった。
ところでファリャの "チェンバロ協奏曲“(1926)はワンダ・ランドフスカのために作曲されました。ランドフスカは1939年に第2次世界大戦の影響でアメリカに移住するまではパリで活動していました。ロドリゴは1936年にドイツに移るまではパリにいたのでランドフスカの演奏も聞いたことでしょう。
しかしその時にはチェンバロの為には作曲していません。
ファリャのクラヴサン協奏曲に関して興味深いエピソードは
初演は1926年の11月5日にバルセロナでランドフスカのチェンバロ独奏、パブロ・カザルスの指揮で行なわれたが、反響は今一つであった。翌年1927年にパリで再演されることになったが、ランドフスカはファリャの厳しい音楽手法に馴染むことができなかったためか、スケジュールの都合を理由にして出演を断った。そこでファリャは、指揮者ギュスタヴ・リヨンの勧めもあり、自らチェンバロの奏法を習得し、パリ公演では独奏を担当して成功を収めた。(wiki)
ということで、クラヴサン協奏曲を仕上げたばかりのファリャからロドリゴはチェンバロを知っていたのではないかと思われます。
1979年、スペインのチェンバロ奏者ヘノベバ・ガルベス氏のために作曲されたのがこの曲です。
ヘノベバ・ガルベス(1929~2021)
マドリード音楽院、コンプルテンセ(Complutense)大学に学ぶ。
ラファエル・プヤナに師事する。
彼女はマドリードの高等音楽院で学び、卒業後マドリードのコンプルテンセ大学でロマンス文献学の学位を取得しました。音楽学をイベリア音楽を専門としラファエル・プヤーナに師事。
録音は多く残されていて、ラファエル・プヤーナとのDUOもある。Johann Sebastian Bach 、 Johann Christian Bach 、 Wilhelm Friedemann Bachの2台のチェンバロのためのコンチェルトなど収録されている。
ラファエル・プヤーナ(1931~2013)コロンビア、ボゴタ生まれのチェンバロ奏者。
1947年、16歳で渡米し、ボストンのニューイングランド音楽院を学ぶ。チェンバロをワンダ・ランドフスカに、作曲をナディア・ブーランジェに師事。
門下にクリストファー・ホグウッドらがいる。
またオリジナルチェンバロの収集家でレプルカを製作にも貢献した。
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