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16 どちらさまでしょう?(名前)
菅寿美(『ボヘミアの森と川 そして魚たちとぼく』訳者)
チェコ人の名前にはバリエーションが少ないが、それをカバーするかのように、愛称が豊富である。日本のニックネームのように、その人の特徴からあだ名を創作するのではなく(もちろんそういう呼び名を持つ人もいるが)、名前そのものに愛称のバリエーションがある。“太郎”が太郎くん、太郎ちゃん、たろちゃん、たあちゃん、たっちゃん、になるのに近いのかもしれない。
前回ご紹介した、2019年に最も人気のあった(親と子の)名前ベストスリーの代表的な愛称を下記に挙げる。
愛称には、語尾にチェクやイーク、ィエク(男性名)、カ、チカ、イカ(女性名)がよくつくので、慣れてくると、何となくどんな愛称になるか察しがつくようになる。
しかし、中にはびっくりするような変化を遂げるものもあり、油断はできない。例えば、ヤンの一般的な愛称はホンザである。これでは別人である。ぺパ、ペピーク、ぺパン、ペピン、これらはみなヨゼフの愛称であるが、推測不可能だ。「私の名前はナニンカです」と言われて、「ふむふむ、アナさんですね」とわかる日本人はごく稀だろう。
蛇足であるが、正式名称にチェコのいわゆる愛称をつけられている人が時折いる。例えば、トランプ大統領の娘のイヴァンカさん、この名前はもともとイヴァナの愛称である。したがって“イヴァンカ・トランプ”は“イヴァナちゃん・トランプ“と聞こえるのだとか。チェコ人である彼女の母がイヴァナさんなので、小イヴァナというニュアンスで名づけられたのだろうか?ただし、チェコ本国にも、イヴァンカという名を正式名称として持つ人が3000人以上いらっしゃるようだ。
最後に、本編に出てくる登場人物の名前について、まとめておく。本編に登場する名前を太字で、その公式名称あるいは愛称を細字で記した。
* ダナはダニエラ、ボフダナの愛称のひとつでもある。
チェコ国内における「イヴァンカ」さん分布
https://www.kdejsme.cz/jmeno/Ivanka/hustota/