埼玉の台湾
九州北部を500キロほど走ってから10日ほど。
疲労は抜けていくが、自転車モードの体が都市生活モードに戻っていくのがもったいない気がしてくる。
まだ6月だというのに気温は30度に少しずつ近づいている。来月になれば、とても外を自転車で走ろうなんて気にならないだろう。
朝4時30分。
窓から、朝の光が差し込んでくる。
ここが岐路だ。
朝の光に反応した体を、そのまま素直にベッドから起こすのだ。
5時。出発。
半袖、短パンのウェアではまだ少し肌寒い。ただ耐えられないほどではない。今日は暑くなりそうだ。
車のほとんど走っていない環七を北上。
早朝なら、都内も気持ちがいいのか。発見だ。
荒川沿いまでの道をスマホでチェック。
地図の脇に『東京大仏』なる文字情報。
長いこと東京で暮らしているが、一度も拝んだことがない。
せっかくなら行ってみるかと、少し遠回りして、住宅街を抜けたところにある『乗蓮寺』に到着するも開門は朝9時から。
神社仏閣は、どこでも24時間出入り自由だと思っていた。
仕方ない。
本来の道に戻り、スタートから小一時間ほどで荒川沿いの土手に出た。
これが荒川サイクリングロードなのか、正確にはわからないが、信号のない舗装路は本当に気持ちがいい。
時折、ガチ目のサイクリストさんとすれ違うが、平日ゆえほとんど無人。
ここからはずっと快適な川沿いの道。
荒川が二股になる16号を越えるあたりだけ工事のために迂回したが、入間川に入ってもサイクリングロードが続く。
多少虫がうざいが、爽快。
ぬおーーーーー!
ひっさびさの全速力。全力でペダルを漕ぐ。
30キロ近く快適なサイクリングを楽しんでたどり着いたのが、ここだ。
田畑を走り抜け、田舎道を走っていると突如現れる場違いな景観。
台湾の道教のお宮だそうだ。
台湾の一流の宮大工を呼び寄せ、15年かけて建立したという。
そもそも私の自転車旅行の原点は台湾の環島だ。
台湾ではお寺をいくつも訪れた。
ちょうど旧正月の時期だったから、お金の代わりに変な紙っ切れを猛スピードで大量に焚き上げる豪快な参拝を何度も見た。
ネットでこのお寺を見つけ、懐かしいなと思い、せっかくなら自転車で訪れるべきだろう、台湾の参拝体験ができるらしいし、台湾のフードなんかもあるらしいし、ということで片道50キロ走ってきたわけだ。
が、拝観は10時からだった。
仕方ない。
30度に達した夏の日差しを浴びながら、昼にここまで来るのは暑くて嫌だなーと思った。