「椿姫」
新国立劇場にて、観て参りました。
映画でもよくある事ですが、主人公にどっぷり自分を投影してしまうので、かなり疲れてしまう私です。
全三幕ですが、まさにジェットコースタームービー。出会い、幸せな時間、引き裂かれる二人、病死。
天に召されてしまうヒロインは多いです。(自害するバタフライだけは、何度観ても、号泣してしまいます。) 劇場では迷惑にならないよう、泣きすぎないように努力致しますが。
約三時間、長いといえば長いですが、人生の所要部分を凝縮したことを思えば、納得です。
今回の演出は、セットも最低限、シンプル。グランドピアノが、時に宴のテーブル、時に舞台、時に部屋の机、そしてベッドとなります。
エンディングであれっと思ったことが。
死の間際も、ガンガン歌いまくるヒロインと、戻ってきたアルフレードとのシーン。確か、しっかりと抱擁しながら、歌い合うシーンですが、今回はヴィオレッタとアルフレードの間にベールのようなカーテンが。召使いやドクターも彼女のそばには行きません。カーテン越しで伺うのみなのです。
肺結核というものが、感染る病である、ということを意識していたのでしょうか。または、長いデュエットということから、感染症対策をしたのでしょうか。
プログラムを購入しなかったので、実は何か意図が解説されていたのかもしれませんね。
死にゆく際の演出は、とても胸が熱くなりましたよ。天に召されるヒロインと、地上の人々が少しずつ少しずつ、距離とっていく・・・・。
オペラではベッドで、息を引き取ることも多いですが、今回は力強く、照明も赤く、人生を全うしたヴィオレッタを描いていましたね。
いやー、それにしても聴く方もそうですが、演じた中村恵理さんも、人生を走り切った感。カーテンコールの時も、まるで天上に逝った魂が、戻ってくるまで時間がかかった印象でした。
一つだけ、ちょっと残念だったことが。
初めの最も有名なアリアの最後、Esに上げなかった点。( Esはミのフラット。ピアノで言うと3点ミなのでハイトーンです。) 中村さんは確かリリコソプラノでいらっしゃるから、その判断だったのでしょう。
大変力強いヴィオレッタ。素晴らしかったです。