〜資本主義をハックする〜真に豊かで生きるに値する社会を創る新規事業とは?
michinaru株式会社で学生インターンをしている若林です。
「変化を起こす挑戦者を創る」というミッションの元、新しい事業を生み出す人や組織づくりについて日々勉強をしています。
今週は『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す :山口 周 著』を読みました。
山口 周 さんのことを大ヒットセラーとなった「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 」 で知っている方も多いのではないでしょうか?
『ビジネスの未来』では、限界を迎えつつある資本主義のシステムをどのように捉え、これからのビジネスをどのように行えばいいのか。ということについて鋭い視点で書かれています。
今回の記事では本書を踏まえ、「真に豊かで生きるに値する社会を創る新規事業とは?」という問いに対して
1.資本主義を成り立たせている価値観とは
2.現代社会に求められる価値観とは
3.資本主義をハックする新規事業とは
の3つのトピックで答えていきたいと思います。
1.資本主義を成り立たせている価値観とは
著者の山口氏は本書の冒頭で、「ビジネスはその歴史的使命を終えつつある。」と述べています。
私たちは過去200年にわたって「経済とテクノロジーの力によって物質的貧困を社会からなくす」というミッションを達成するためにビジネスを行ってきました。
つまり、古代以来、私たち人類は常に「生存を脅かされることのない物質的社会基盤の整備」を目標に掲げ活動をしてきました。そして現在はそれがやっと達成された、言うなれば「祝祭の高原」と表現される状況であると山口氏は述べています。
実際に1800年と2019年を比べてみると、多くの国で平均寿命は倍以上に伸長し、一人当たりのGDPは10〜数十倍に上昇しました。
このような、ミッションを掲げ活動をしてきた過去200年間で重要だとされてきた価値観は何でしょうか?
それは、「どれだけのモノを作り出すことができるのか」という事です。
国の発展を図る上で一般的に利用される指標にGDPがあります。
これは、ものすごく簡単に言ってしまえば「どれだけのモノを作り出したのか?」という指標です。
確かに、「物質的貧困を社会からなくすこと」を目標とした過去200年間において、GDPといった指標が大きな意味を持ったことは理解できます。
しかし、物質的貧困を社会から無くす事に成功した地域において、ビジネスの成功をGDPで測る事は可能なのでしょうか?
モノを生み出す必要がないのですから、GDPで測るのは困難だということがわかりますよね。
モノが足りている地域において、無理やりGDPを増やそうとした時に行われる、最も効率の良い方法は、今あるモノを壊して新しいモノを生み出す事です。
とても嫌な話ではあるのですが、大規模な災害や戦争の後にはGDPが増大します。しかし、我々はそれが非倫理的であり、誰の幸せも生み出していないことを知っています。
だから「物質的貧困を社会からなくすこと」に成功した私たちは「どれだけのモノを作り出すことが出来るのか」といった、経済成長のみを重視した価値観で生きてしまうと「空虚感」を覚えてしまうのです。
では、どのような価値観を持って活動をすることが現代社会に求められているのか。
次の章で紹介していこうと思います。
2.現代社会に求められる価値観とは
経済成長に幸せを感じることに限界を迎えた現代社会では、どのような価値観が求められるでしょうか?
それは、「人間性に根ざした衝動」によって生まれる価値観です。
例えば「歌い、踊りたい」「草原を疾走したい」「木漏れ日を全身に浴びたい」「困難にある弱者に手を差し伸べたい」といったような衝動であると山口氏は述べています。
これらの欲求は、人間性そのもの=ヒューマニティに根ざすものでその衝動こそが人間を人間たらしめているのです。
こういった欲求は経済合理性を考えた上では意味を持ちません。そして、生命を維持する上で「実生活で必要なものか」と問われれば「否」という事になります。
しかし、このような「人生を生きるに値するもの」に変えてくれる欲求が現代社会には強く求められているのです。
「辛い仕事だけど給料を得るためには仕方がない」といった職業観を持った人を減らし、仕事そのものに対して喜びを得られるような職業観が当たり前になる社会を創り出す必要があります。
そうすることで、誰もが「真に豊かで生きるに値する社会」を創り出すことができるのです。
3.資本主義をハックする新規事業とは
最後の章では、前の2つのトピックを踏まえ、経済合理性のみを重視した古い資本主義の価値観から抜け出し、「真に豊かで生きるに値する社会を創る新規事業」はどのように生み出されるのかについて、書いていきます。
「真に豊かで生きるに値する社会を創る新規事業」を生み出すキーワードとして、山口氏は
「Business as Art」
という言葉を用いています。
山口氏はアーティストが作品を生み出す行為を、「どうしても過信できない問題を彼らなりのやり方で提起し、場合によっては解決しようとしている」と定義した上で、ビジネスが行なっていることは本質的にこれと同じだと述べています。
アート作品を生み出すようにビジネスを生み出すべきだと。
経済合理性のみによって生まれたビジネス、つまり、「儲かりそうだ」という目論見からスタートしているビジネスは、ほとんどやり尽くされてしまっています。それらのビジネスのおかげで私たちは物質的貧困がない社会を達成する事ができました。
だからこそ、これからの私たちは経済合理性の外側にある、「衝動で駆動するソーシャルイノベーション」を生み出す必要があるのです。
「これを放っておいてはいけない」「これをやらずには生きられない」という強い衝動によって、イノベーションを実現させていくことが人類を次のステージへと進めてくれるビジネスになります。
そして、もう一つ重要なのが「文化的価値を生み出す」ビジネスです。先程から述べているように、過去のビジネスが「文明的豊かさ」を生み出し物質的貧困を無くすことに成功しました。
では、次に求められる価値は何かというと「文化的価値」だというアイデアが浮上してきます。そして、文化的な価値というのは、有限でなく「消費されない価値」ということも重要です。
古くに作られた絵画や茶碗が今も高い値段で売り買いされていますよね。
文明化の終了した世界では、これ以上の過剰な文明化が富を生み出すことはありません。
一方で「文化的価値の創出」については、無限の価値を生み出すことがこれからも可能です。
そのため、価値創出は「文明的な豊かさ」から「文化的な豊かさ」へシフトすることが求められるのです。
以上をまとめると、「経済とテクノロジーの力によって物質的貧困を社会からなくす」というミッションが達成された現代社会においては
1.「衝動で駆動するソーシャルイノベーション」から生まれるビジネス
2.「文化的価値を生み出す」ビジネス
が求められてます。
この視点を持ちアイデアを考えることで「真に豊かで生きるに値する社会を創り出す新規事業」が生まれるのです。
『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを取り戻す :山口 周 著』を読んでみて
最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回の記事では、「真に豊かで生きるに値する社会を創る新規事業とは?」と問いのもと
1.資本主義を成り立たせている価値観とは
2.現代社会に求められる価値観とは
3.資本主義をハックする新規事業とは
の3つのトピックで本書の考えを紹介させていただきました。
この本を読んでいると自分の思考がいかに、資本主義のシステムの上で構築された偏ったものであるかに気付かされます。
人間としての喜びが、経済合理性によって生まれる価値観の犠牲となることに慣れてしまっています。
10年前に比べると、今の働き方や生活というものは良くなっていると思います。
しかし、誰しもが幸せだと感じる事の出来る世界にはなっていません。
精神病や自殺、争いといったものが全てなくなるまで、私たちにするべき事はまだまだたくさんあるのだと思います。
これらの問題を「仕方ないものだろ」「そういうものだろ」と受け入れるのではなく、「何かおかしい」「理不尽だ」と問い続けて、活動をしていきいきたいですね。
この記事が、読者の皆様にとって「真に豊かで生きるに値する社会を創る新規事業」を考えるきっかけになっていたら嬉しいです。
michinaruのHP https://michinaru.co.jp/
michinaru公式Twitter https://twitter.com/michinaru0430
michinaruメルマガ https://sv4.mgzn.jp/sys/reg.php?cid=Q206709