「決められた解き方」からの脱却 〜これからの時代に必要な学力を考える〜
「どうしてこの答案がまちがっているの?」
SNSを見ていたら、このような投稿によく出くわします。子どもたちの答案を写真に撮って投稿し、その採点結果に疑問を投げかける保護者の方々の投稿です。
「合っているのに、なぜ丸をもらえないの?」
大抵はこの投稿をきっかけに賛否両論の論争が繰り広げられることになります。今やSNSの風物詩といってもいいかもしれません。
■「決められた解き方」にこだわる学校教育
たとえば、こんな算数の問題があります。
300円の50%はいくらでしょう。
この問題に対して、子どもが
300÷2
という式を立てた場合、多くの場合 ×(バツ)がつけられます。
なぜでしょうか。
それは学校で習った「割合の公式」を使っていないからです。
50÷100=0.5
300×0.5=150
このように解かなければいけないということのようです。
ですが、よくよく考えてみますと、300÷2と解いた子どもの方が、むし
ろ割合の概念をきちんと理解しているのではないかと思えてきます。50%
が半分であることを理解しているからこそ、300円を2で割るという発想
になるのです。
■子どもたちの創造性を阻む現状
この問題は氷山の一角に過ぎません。学校のテストでは、このように「決
められた解き方」を強要する場面が数多く見られます。
なぜ、このようなことが起こるのでしょう。
それは、テストで良い点数を取るためには、「習った通りの解き方」で解
かなければならないという暗黙のルールが存在するからです。
■AIに奪われないための学力とは
このように子どもの柔軟な発想を否定する教育に対して、最近、強い違和感
を覚えるのです。特に、AIの進化が目覚ましい現代において、この違和感は
ますます強くなってきています。
AIがこれから社会にどんどん入り込み、人の仕事を奪うという話も聞きま
す。決められた手順通りに処理していくことなど、むしろAIの得意分野で
す。それなのに、なぜいまだに学校では「習った通りの解き方」にこだわ
るのでしょうか。
■これからの時代に求められる力とは
実は、現在の教育現場で重視されている「決められた解き方を覚えて再現す
る力」は、まさにAIが最も得意とする分野なのです。つまり、学校で力を入
れて育てている能力は、近い将来、AIに完全に取って代わられる可能性が高
いのです。
これからの時代に必要なのは、AIには真似できない「創造性」や「柔軟な思考」
なのではないでしょうか。決められた方法だけでなく、自分なりの解き方や
考え方を評価する教育が求められているように思うのです。
「決められた通りに解く」ことばかりを重視する教育で、はたして子どもた
ちは未来を生き抜いていけるのだろうか、大いに疑問に思うところです。
■新しい時代の教育に向けて
もちろん基本的な解法を学ぶことは大切です。ですが、それ以上に自分で考
えて工夫する力を育てることの方が、これからの時代には重要だろうと思います。
たとえば、先ほどの「300円の50%」の問題。公式を使った解き方も教
えつつ、「なぜそうなるのか」を考えさせ、「他にどんな解き方があるか」
を話し合う。そして、それぞれの解き方の良さを認め合う。このような授業
であれば、子どもたちの創造性や思考力は確実に育つはずです。
テストの採点基準も変える必要があるでしょう。答えが合っていて、その過
程に明確な論理性があれば、解き方が教科書と違っていても正解とする。そ
のような評価の仕方に変えていく必要があるのです。
テストでよい点数を取ることよりも、自分の頭で考え、創意工夫できる力
を育てる教育へと、大きく舵を切る時期に来ているのかもしれません。そ
れが、AIと共存していく時代を生き抜くための、最も確実な道なのではな
いでしょうか。