オシドリ夫婦のカモの話
そのカモは
フォアグラになる運命の種で、
知り合いの知り合いからもたらされた。
「飼えなくなった人がいるんだけれど、
この家なら
なんでも飼ってくれるよね?」
なぜそんな横暴を許したのかというと、
その当時わたしたち一家は
信州の山奥の村で
牛 山羊 ニワトリ チャボ カモ
ウサギ ハムスター 金魚 カメ
(表記の漢字とカタカナはしっくりくるほうで)
と一緒に暮らしていたからだ。
一組のつがいのカモ。
最初は、
オシドリ夫婦というくらいだから
カモも夫婦仲が良いのかな?
くらいの認識しかなかった。
飼ってみると、
噂に違わず
あきれるほどの
仲良しカップルだった。
しかし、
ただの仲良しではない。
姫と下僕みたいな関係。
もしかしたらうちのコたち、
あの夫婦だけかもしれないが
にゃんこスターみたいな感じ(古いですけど)
のカップルだったのだ。
どんな風ににゃんこスターなのか?
カモちゃん(メス)は、
夏は涼しい木陰
冬は暖かい日向で
自由気ままに
過ごしている。
一方、
夫のカモ君は
ちょくちょくこちらの様子を見に来て
カモちゃんに知らせに走る。
戦場の物見だ。
こちらの動向を探りに来て、
「カモちゃ〜ん❣️
おかーさんがごはん持って来てたよー」
知らせに走る。
知らせを聞いて、どれどれ、
カモ姫ちゃんはやって来て
ガッガッ!とひとりで召し上がる。
カモ姫ちゃんの食事が終わると、
しもべカモ君が残りもので食事をする。
カモ姫は、自分の食事が終わると
行ってしまうので、
大急ぎでかき込んだカモ君は
走って姫の元へ戻る。
水浴びの水をプールに入れてやると
「カモちゃ〜ん❣️
プール出て来てたよー」
物見のカモ君が知らせに走り、
あらためて
二羽でやってくると、
まずカモちゃんが気持ちよさそうに
バッシャバッシャと水浴び。
カモ君は、
カモちゃんが満足したのを見届けてから
ご自身はちょちょっと足を洗い、
すでに悠然と立ち去ったカモちゃんの後を
慌てて追いかける。
こんな毎日である。
大変微笑ましく、
ちょっと羨ましくて
妬ましいような、
いや別にわたしだって
カモと付き合いたいわけではないが、
あのくらい大事にされてみたいな、とか
モヤモヤもしながら見ていた。
🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆🦆
だが、
平和な日々は
そう長くは続かなかった。
ある日突然
カモ君は虹の橋を渡ってしまった。
ひとりぼっちになったカモちゃん!
これからどうするんだろう?
あれだけいつも一緒だったから
カモちゃん
寂しくて病んでしまわないか‥?
心配だった。
愛するものを失う悲しみは
人であろうと動物であろうと‥
違いはなかったのかもしれないが
少なくとも
立ち直りの速さは
桁違いであった。
翌日からカモちゃんは
いじめられっこの
やはりひとりぼっちだったメンドリちゃんと
当然のように
ペアになっていた。
そして今度は下僕でなく
どうやら対等の親友の雰囲気。
なんとなく心のざわつきもなくなって、
女子は強し!
カモちゃんは強し!
持つべきものは
女友達よね!
とか、
関係ないことを考えるわたしだった。