見出し画像

ストレス予防のバニリン から始まって香り諸々。

バニリンとは?
 バニリンとは、その名前から思い浮かぶそのまま場ビラの香りの主要な成分です。ラテン語読みして「ワニリン」と呼ばれることもあります。
皆さんもバニラの香りを嗅ぐと、シュークリームやバニラアイスクリームなどのスイーツを思い浮かべて食べたくなる方が多いのではないでしょうか?

バニラはラン科のバニラ属植物から得られるもので、長細いさや(種子鞘)には香りはありませんが、それを発酵させることで独特な甘い香りに変化します。この鞘の中に小さな種子があり、このバニラビーンズと呼ばれるつぶつぶ(というより、てんてん)からバニラエッセンスや精製したバニリンが採取されます。産地としてはマダガスカルが有名です。数年前マダガスカルに出張に行った方から、一握りほどのバニラの束をもらいました。鞘の真ん中に切り込みを入れ、ナイフの背でしごいてこの粒をこそぎ落とします。この時の香りはなんとも言えずこの作業は大好きですが、とても小さなつぶつぶは手や道具に張り付いてしまうので、上手に菓子材料の中に混ぜ込むのは至難の技です。この甘い独特な香りの需要は年々高まり価格が高騰しているため、なおさら無駄なく使いたいのです。
このようにバニラの香気のもとであるバニリンは、バニラビーンズをそのままお菓子に混ぜ込むことでバニラの香りの強いクッキーやシュークリームになります。その他にはこの鞘をアルコールに漬け込んだバニラエッセンスとしても製菓に使用されます。

今まで食用として多く使用されていましたが、20年ほど前からこの香りを香料として香水やコスメティックとして利用されることが増えてきました。
それと同時にこの香りがもたらすリラックスについても実感する人が増え、バニラの主要成分としてのバニリンについての研究もされるようになりました。
数十年前にアロマのセミナーで、「NICUに入院中の赤ちゃんがバニリンを嗅ぐと快適な表情が出る」という言葉を聞き、赤ちゃんを扱うカーティーとしてはぜひとも利用しなくては!と新商品開発に勤しんだのを覚えています。育児中の方はお気づきだと思いますが、赤ちゃんが快適な状態にあるとき、「ほーっ」という口をすぼめた表情を良くします。この表情が「バニリン」を嗅ぐとよく出るというのです。

いろいろと試行錯誤の結果、こうしてアクエリエル京都で常時人気の「べべスプレー」が誕生しました。
この「べべスプレー」は、私の強い味方です。なぜならお教室が始まる前に、お部屋や自分の胸元にシュシュっと一吹きしておくと、甘いけれど爽やかなバニラの香りに包まれます。この香りは私自身のリラックスを深めてくれて、より良いパフォーマンスが期待できます。何より、私が落ち着くからか、泣いている赤ちゃんを抱くと泣き止むことが多く、「先生、すごい〜!」とママたちから信頼を得るきっかけを作ってくれます。バニリン効果!最高です。

最近の研究で明らかになったのは、
マウスでの実験で、ストレスを受けたときに嗅覚からの刺激で認知・心理的な不安行動が減少したことが報告されています。*1
この嗅覚刺激に使用されたのがバニリン、リモネン、グリーンな香り(青葉アルコールとも呼ばれ、ほとんどの緑の葉に含まれると言われています *2)ということです。
まさに!アクエリエル京都の「べべスプレー」に含まれている精油:バニラ・オレンジスイート・マンダリン・プチグレンのブレンドです!!

ここ数十年来海外では「Shinrin-yoku:森林浴」が注目されています。森林浴の香気成分はまさにこのグリーンな香りです。
グリーンな香りの代表格精油といえばプチグレンですが、プチグレン精油にはアンスラニル酸ジメチルという成分が含まれます。これは強い抗不安作用が期待され、加えて主成分である酢酸リナリル、リナロールが加わることでリラックスを目的とした精神的作用を期待して使用されます。
植物から採油される精油の組成はとても複雑で単一の成分から成るのではないので、数種類の精油をブレンドすることで大変多くの芳香成分の複合体ができあがるのが特徴です。これにより香りを調整しながら主な不調の改善を試みます。これには精神的作用以外の効果も期待されることが多くあり、ある研究では草木類から抽出した混合油分を使用し、美白効果も期待できることを示唆しています。*3
なんとも夢のある将来性を期待できる研究で、この研究はJAXA関連のページにも記載されています。*4 宇宙に出かけると皮膚への紫外線の影響のみならず色々なダメージを受けると考えられるので、大変重要な研究ですね。グリーンの香り成分を皮膚塗布することで、香りも嗅覚からもちろん入ってきます。皮膚塗布と脳・肺への作用が期待できます。宇宙飛行士によると宇宙ステーションの香りは、「火薬と表面をあぶったステーキのような匂い」という人もいれば、「まるで魔女がちょうどそこにいたかのように、硫黄のような匂い」とか果てはラズベリーやラム酒という人もいるようです。この匂いのもとは「ギ酸エチル」だそうで、宇宙の匂いは多環芳香族炭化水素がベースになっているため、臭いと思われる匂いはこちらのようです。宇宙のどの部分を嗅ぐかによって香りも異なるらしいので、できるなら甘い香りが良いなぁと想像しています。ちなみに月の匂いは、使用後の火薬の匂いだそうです。*5

バニリンから月の香りまで芳香の話をしてきましたが、私が今まで嗅いだなかで好きな独特の香りを挙げるとしたら、何を差し置いても「生まれて2日目くらいの赤ちゃんの息の香り」です。ミルクをごくごくと飲む前の赤ちゃんの息には、甘いエステルの香りがするのです!
赤ちゃんを産んでまだ数日の方は、ぜひともクンクンと赤ちゃんの口元に鼻を持っていって香ってみてください。
ちなみに羊水の香りもあり、こちらは海水をずーっと温めてまろやかになったような香りです。

以前知り合いになった方で、博物館に勤めていて発掘現場の香りからその場所が何に使われていたかを考察する仕事をしている人がいました。そんな仕事があるのも知りませんでしたが、その方の嗅覚は並外れていて、昔使われていた台所の焼けた木炭の匂いだったり、食べ物として落ちているかけらからの香りだったり、ありとあらゆる匂いからその場の使用目的と位置を特定できるらしいのです。
その方に「今まで嗅いだ中で一番嫌な香りは?」と尋ねたところ、「人が怒ったときの香り」と即答されました。そんな匂いって想像つきます?
実は「電気がショートした匂い」だそうです。私もぎゅっと怒ったときには、体にピリピリした感じが走ることがありましたが、まさにその時、電気が走っていたのかも、と思っています。

今はできるだけバニラの香りに囲まれて、ほんわか過ごしたいです。







*1: https://academic.oup.com/braincomms/article/6/6/fcae390/7876424

*2:

*3: file:///Users/michikocarty/Downloads/AN00063799-20230220-0039.pdf

*4: https://repository.exst.jaxa.jp/dspace/handle/a-is/1242200

*5: https://gigazine.net/news/20211106-smell-of-space/

いいなと思ったら応援しよう!