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Webの文章はなぜ字下げしないのか?デザインの観点から考えてみた

Webの文章って字下げしないことが多いですよね!
字下げとは、段落の頭に1文字分の空白を入れて文章を下げることです。

質問「Webの文章はなぜ字下げしないのか?

答え「デザインの法則に反するからです」

そもそも「日本語ではなぜ字下げするのか」について述べてから、「デザインの法則に反する」の意味を解説します。

最後に、新聞社のニュースサイトが字下げする傾向にある理由についても新聞記者さんに聞いた内容をもとに紹介しましょう。

■ この記事を書いている人
Webコンサルタントで、大学の非常勤講師。
大学ではWebライティングの講義を受け持っています。


1. 字下げする理由は読みやすさのためではない?

1. 字下げは昭和初期に普及した

字下げっていつから始まったのでしょうか?
小学校の国語の教科書で使われるようになったのは、明治36年と言われています。

では、一般に普及したのはいつでしょう?
字下げの歴史は浅く、一般に普及したのは昭和初期と言われています。
まだ1世紀も経っていません。

昭和9年刊行、谷崎潤一郎の『文章読本』を確認すると、まだ字下げはありません。
※以下は1996年発売ですが、昭和9年初版も字下げされていません。

縦書きなのに、字下げがなくても全く違和感なし!
ぜひ実際に手に取ってチェックしてみてください。

2. 日本人にとって字下げは必須ではない

日本人は字下げがなくても文章を読むことができます。
縦書きでもOKです。

最近、美術館で段落がなく文章がひたすら続いていく巻物を見ました。
もし段落が全くなかったとしても、日本人は意味を理解できます。
(「段落」については次回詳しく書きますので、話を字下げに戻します)

3. 字下げは印刷会社の都合で生まれた

字下げは読者のために誕生したものではなく、印刷が始まったころに印刷会社の都合で生まれ、世の中に普及していったと言われています。

一般的に言われている次のセリフ。

「読者が読みやすいように字下げする」

そんな理由で字下げしているわけではありません。
「読みやすいように字下げするようになった」は後付けの理由です。
(私の考えです)

4. 字下げは文章の書き方のルール

字下げは文章を書く上でのルールです。

私は元々言語学の分野の人間なので、言葉が好きで、作文、論文など紙媒体の書き方をかっこいいと思っています。

決して字下げ文化を否定しているわけではありません!

紙媒体の文章では字下げすることが一般的ですよね。
では、なぜWebページでは字下げしないのか、理由を紹介していきましょう!

2. Webの文章は字下げしない

Webの文章は、Webデザインの一部です。

  • 人は読む前に見ている

  • Webの文章は左揃えが最も見やすい

  • ぴったり左に合わせるように書くとよい

一文字分の空白がある箇所があると、レイアウトがくずれて見えます。
左揃えになっていないと視線移動が一定にならないため、ユーザーに負担がかかります。

例文1:「字下げあり」

 小学1年生のころ、親のすすめで近くのスイミングスクールに通うことになりました。そこで出会った若い女性の先生がとても明るい性格の方で、全く泳げない私に丁寧に泳ぎ方を教えてくれました。その先生に会うことが楽しみで毎日通っているうちにメキメキ上達し、県大会に出られるまでに。

即興で作った例文(字下げあり)

例文2:「字下げなし」

小学1年生のころ、親のすすめで近くのスイミングスクールに通うことになりました。そこで出会った若い女性の先生がとても明るい性格の方で、全く泳げない私に丁寧に泳ぎ方を教えてくれました。その先生に会うことが楽しみで毎日通っているうちにメキメキ上達し、県大会に出られるまでに。

即興で作った例文(字下げなし)

※2つ目の文章「字下げなし」は、字下げなしだけでなく、Webの文章の書き方に(全体的に)書き直したいところですが、このままで。

字下げ部分だけに注目してください。

字下げなしのほうが左側にそろっていて見やすいですね。

これは、デザインの4大原則の一つである「整列」。
整列させることによって、見た目を整え、視認性を高めます

▼参考文献 :ノンデザイナーズ・デザインブック

【補足】
「Webでも字下げされているほうが読みやすい」人がいます。
なぜかについて後述しますね。

3. メールの文章も字下げしない

いまでは中学2年生の国語の教科書にメールの書き方が出てきます。
手紙の書き方とともに紹介されています。

例文を見ると、手紙はもちろん字下げされており、メールは字下げされていません。

例文の一部を紹介しましょう。

上坂市近代文学館 御中

突然のご連絡,失礼いたします。
上坂中学校2年A組の田村と申します。

私たちは今,総合的な学習の時間の中で,
郷土ゆかりの作家・◯◯◯◯について調べています。
(略)

甲斐睦朗ほか、『国語2』(文部科学省検定済教科書 中学校国語科用)、光村図書出版、2022年2月、P115

実は、2年前(2022年)中学の国語の先生から、教科書のメールの文章を指しながら「(Webの文章って)これに似ています」と言われました。

とっさに「いえ、だいぶ違います」と否定してしまったことを後悔しています。

いま思えば、似ていると言われるのが普通かもしれないな。
私は字下げしない点はWeb記事もメールも同じだと思います。

4. 新聞社のニュースサイトが字下げする傾向にあるのはなぜ?

ほとんどの新聞社のオンライン版は字下げされていますよね。
私はこれまで大手新聞社3社の記者さんたちからこんな質問をいただきました。

記者さん「なぜWebでは字下げしないんですか?

Webには段落という概念がないという観点から説明させていただいたと記憶しています。

※次回、段落という概念がない代わりにどんな概念があり、どういった書き方をするのか、詳しく説明しますね!

新聞記者さんによると、新聞社のニュースサイトが字下げされているのは、「Webの文章の書き方を知らない」から

アナログであり、最もIT化が遅れている分野とおっしゃっていました。

5. Webでも字下げしたほうが読みやすい人もいる

1. ごく少数の人にとっては字下げしたほうが読みやすい

ディスプレイを通して読むWebの文章の場合でも、紙媒体のように字下げしたほうが読みやすいと感じる人がいます。

理由は、紙に書かれた文章を読むように読んでいるからです。

人種問わず、紙媒体で読むときとWebページを読むときの視線の動きには大きな違いがあることが世界規模の研究によってわかっています。

ただ、ごく少数の人は紙媒体を読むように読んでいることもわかっています。

2. 事例

文章のプロには「字下げなし」が理解されないことが多いです。
例えば書籍の編集者を挙げてみましょう。

彼らは、紙媒体の文章の読み方に慣れています。
読むスピードが早く、尋常じゃない量の文章を読むことが平気です。

一般の人と異なり、紙を読むときと同じ読み方をする傾向にあります。

以下は、紙でもWeb上でも字下げすることが普通であるとおっしゃる元編集者の方からいただいた貴重なご意見です。

紙であろうとWeb上であろうと改行時の1字下げや1行空きの目的はただ一つでして、読者が読みやすいかどうかです。

元編集者の方のお言葉

上記の「読者が読みやすいかどうか」は、ご自身が読みやすいかどうかです。

1字下げにしないと当方の考えは読者には伝わらないと思います。

元編集者の方のお言葉

上記の「当方の考えは読者には伝わらないと思います」というのは、読者サイドの意見ではありません。

一般の人と異なる読み方をするプロの方に、一般の人の読み方を伝えても理解されません。

「一般の人の読み方って何なの?」
「どんな読み方をしているの?」
詳しくは次回、段落についての記事で説明しますね!

6. 多くの人が読みやすく感じるように書こう

世の中の大多数のユーザーが読みやすいと感じる形式で書くと伝わりやすいです。

今回は「字下げしない」について触れました。

多くの人が読みやすいと感じるように書かないと、ストレスを与えてしまい文章を読んでもらえず、もったいないです。

ただ、「多くの人が読みやすく感じるように書くこと」は、人によっては大変なこと。

知り合いというか友人(60代・カメラマン)は何度も私に質問してくれるのですが、Web記事もFacebookもいまだに字下げします。

長年の習慣を変えることは難しいですよね。

私も慣れないことをするのは難しいので、変えられないという気持ちがわかります。

※本記事はWeb記事の書き方について述べています。
※SNSは対象外です。

7. まとめ

Webの文章って、どうして字下げしないの?」について解説しました。

答え:デザインの原則に反するから
ぴったり左揃えが一番視認性が高く読みやすいです。

次回は、Webにおける「段落」の考え方&Webの書き方のルールについて紹介します!

[2024/3/24追記]
今回の続きとなる記事を公開しました。

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片桐光知子
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