救われないなら (詩)
なやましい一瞬の肉感的な惨虐な感覚が
私のからだに沁み亙った
室生犀星
かつて愛した女の元に来て
おのれの犯した罪の在り処を知ることだ
ずっとかすかにつらい世で
愛しさだけが澄み切っている
ロマンスは平等なのだ
天も地もない、共鳴の地平線である
くつくつと笑いが漏れるのは
若さの浪費を已めることのない
私自身の弱さゆえか 否か ?
天は采配を振るう
運命の只中におのれの道を築くことだ
社会に犯される毎日を罪を犯してやり過ごす
谷間から空の世界を抱きしめる
凶暴になる必要はない
罪びとに優しくする
それきりで彩色の渦巻きに浸れる
酔い心地は冷めてきた
忘れていた日常にぜえぜえ息を吐いて生きることだ
ずっとかすかにつらいと君は言った
かつて愛した女よ
肝を据えて未踏の風土を全世界に威風堂々開いてやることだ
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